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パーテックスと新バックパック生地を共同開発

山と道は、英国発祥の高機能ファブリックブランド「パーテックス」との協力関係のもと、定期的な開発会議を通じてより軽く強いオリジナル生地の開発に取り組んできました。この度、パーテックスの長年の知見を生かし、山と道が求める軽量かつ強靭なバックパック生地を共同開発しました。多くのアウトドアウェアの生地を手がけるパーテックスにとっても、バックパック生地の開発は世界で初めての挑戦となります。この生地は2025年春夏から販売するバックパック「ONE」「MINI」「MINI2」の3モデルに採用します。

MINI2
3/31販売予定
Black, Classic Blue, Mustard, Slate Khaki

MINI
5月販売予定
Black, Classic Blue, Gray, Mustard, TS White

ONE
6月販売予定
Black, Classic Blue, Mustard, Gray, TS White

生地の特徴

  • 重量あたりの引裂強度において、ナイロン100%ながらスーパー繊維と言われるUHPE100%の生地に次ぐレベルで、UHPEリップストップなどの高強度生地を上回る強度を実現。
  • 高強度な210デニールとより軽量な70デニールの生地を適材適所で用い、耐水圧が求められ汚れやすい底面には完全防水素材のECOPAK®を採用。
  • 異なる生地を同じ染工場で製造し色味を統一。ボディとポケットを同色仕上げ。

パーテックスについて

1979年に英国で誕生した高機能素材ブランドで、現在は日本のMNインターファッションが展開。極細の繊維を高密度に織り上げた軽量な生地は、防風性・撥水性・透湿性などの機能を高次元で備えている。また、機能性だけでなく、サステナビリティに配慮したユーザー起点のものづくりも評価され、ダウンウェアの表地やスリーピングバッグ、ウインドシェル、レインウェアなど、世界中のアウトドアブランドで採用されている。

制作ノート

深い物作りを求めて

夏目彰(山と道)

より濃密な物作りのコミュニケーションを求め、パーテックスにバックパック用生地の開発を依頼することにしました。

パーテックスとの出会い

僕が山にハマる頃には、パーテックスはアウトドア向けの軽量で機能性に優れた生地を開発するブランドとしてすでに有名でした。直接の出会いは、山と道創業時にパーテックスの展示会へ訪れたときです。本来、生地メーカーの展示会は予約制ですが、何も知らなかった僕たちは予約も取らずに、妻とふたりでいきなり訪れました。

突然現れた僕たちに、パーテックスのスタッフは一瞬戸惑いながらも、興味を持って話を聞いてくれました。特に担当の高さんは「予約なしで展示会に飛び込んでくる人は初めてだった」と驚きながらも、僕たちの話を面白がって熱心に対応してくれました。この時のことを、高さんは今でも楽しげに話してくれます。

右がパーテックス担当者の高さん 左・中央 山と道プロダクトスタッフの廣野と中川(工場見学中の写真)

最初は既存のパーテックス生地を採用して製品を作っていましたが、転機となったのはDW 5-Pocket Pantsの生地開発を依頼したときです。タスランナイロンには伸縮性がなく、汗をかいたときに肌に張り付きやすいという欠点がありました。それを解決するため、新たに山と道専用の生地を開発してもらいました。その後も、軽量性や機能性に特化した生地を独自に依頼し、今では山と道製品に使われるパーテックス生地のほぼすべてが、山と道専用に開発されたものになっています。

長年の関係性を築いたことで、現在では月に一度の開発会議を実施し、パーテックスの生地開発チームとともに、意見交換やテスト情報の共有を行いながら、さらなる生地開発に取り組んでいます。

バックパック生地の開発依頼

ある年のパーテックスの展示会で、クロージング用の軽量生地を見ていたときのこと。パーテックスが作る軽量で高強度な機能性素材の奥深さに改めて驚くとともに、「もしパーテックスがバックパック用の生地を作ったら、どんな製品が生まれるのだろう?」と、ひとつの閃きが生まれました。

パーテックスにとってもバックパック生地の開発は世界初の試み

長年の関係性から、パーテックスは山と道を信頼し、バックパック用の生地の開発がスタートしました。パーテックスにとってもバックパック生地の開発は世界初であり、従来のシールドやカンタムなどのラインナップにはない、新たな挑戦となりました。

生地開発を進める中で、特に印象的だったのは、「一般的に強度に優れるとされるナイロン66ではなく、あえてしなやかで柔軟性のあるナイロン6を選択した」という点です。また、すべてのパーテックス生地を同じ工場で染色することで、異素材の組み合わせでも色に統一感を持たせることが可能になりました。出来上がった生地は、単に機能性が高いだけでなく、質感や色味にもこだわった、これまでにない仕上がりになりました。

このパーテックスと山と道の共同開発プロジェクトを通じて、これからも面白い物作りを進めていく予定です。

素材

代表的なバックパック生地の強度・重量の比較

バックパック生地には、強度と軽量性の両立が求められます。共同開発プロジェクトでは、ナイロン6の特性を活かし、従来のバックパック用ナイロン生地よりも強度の高い軽量生地を開発しました。しなやかで衝撃を逃がしやすい特性を持ちながらも、適切な織り構造とコーティング技術を組み合わせることで、長期的な耐久性を向上させています。

引裂強度と生地重量
重量あたりの生地強度【kg/(g・㎡)】

バックパックに用いられる代表的な素材と試作生地の比較。重さに対する強度を比較するため、生地重量1gあたりの引裂強度順に並べています。この度開発したパーテックスの新しい生地は、ナイロン100%でありながらUHPE(超高分子量ポリエチレン)を100%用いた生地に次ぐ強度を誇ります。

ナイロン6の採用とその特性

パーテックスは創業以来、ナイロン6を主に扱ってきた歴史があり、アウトドアウェアの製品もナイロン6を中心に展開してきました。一方で、用途に応じてナイロン66を使用することもあり、両素材の特性を理解した上で最適な設計を行っています。

一般的に、ナイロン66の糸は高強度で耐摩耗性に優れる一方、硬く破断しやすい特性があります。対してナイロン6は柔軟性があり、負荷がかかった際に糸がわずかに伸びて衝撃を逃がすことができます。今回の開発ではナイロン6のしなやかさを活かしながら、軽量かつ強度の高い生地を設計しました。

織り構造の工夫と強度のバランス

ナイロン6の糸の柔軟性を活かし、生地の織り方にも工夫を加えました。

高密度に織ることで強度は向上しますが、過度な密度は生地を硬くし、破断しやすくなる可能性があります。そこで、適度に密度を抑えた「甘い織り構造」を採用し、力が加わった際に受け流せるように設計しました。

また、タテ糸とヨコ糸に同じデニールのナイロン6糸を使用することで、縦横どちらの方向にも均一な強度を確保しています。この設計により、局所的な負荷がかかった際にも生地全体で力を分散できる構造になっています。

強度と耐水圧・汚れのトレードオフ

耐水圧を向上させるためには、織りの高密度化や厚いコーティングが必要ですが、これらは生地の柔軟性や強度に影響を与えます。210デニールのPertex® 21RS-PCの開発では引裂強度を向上させつつ、軽量性とのバランスを図った適度な織り密度を探求しました。

その結果、強度・軽量性を高いレベルで両立することができましたが、絶対的な耐水圧は高くなく、加えて凹凸の大きい「甘い織り構造」のため、織目の隙間に汚れが入り込みやすくなっています。

そこで、耐水圧が求められ、かつ汚れの付着しやすいバックパックの底面には、ECOPAK®を採用することでこの課題をクリアしました。

長期耐久性を追求したポリカーボネートコーティング

一般的なバックパック用ナイロン生地には、防水性と耐久性を高めるためにPU(ポリウレタン)コーティングが施されます。しかし、PUコーティングは湿気や紫外線の影響を受けやすく、経年劣化によるベタつきや剥離が課題となります。

そこで、開発した生地には、耐久性の高いポリカーボネートコーティング を採用しました。ポリカーボネートは自動車のシートや建築用パネル、工業用防護シールドなどに使用される素材で、紫外線や湿気に強く、長期間の使用でも劣化しにくい特性を持ちます。

このコーティング技術は、長期間の使用を想定したバックパックに適している一方で、加工の難しさやコストの高さから一般的なPUコーティングよりも採用例が少ないという課題もあります

パーテックスの挑戦

パーテックスはこれまでアウトドアウェア向けの軽量生地を主に開発してきましたが、バックパック用生地の開発は初めての挑戦でした。210デニールの太い糸を使用した経験もこれまでは少なく、緊張感を持ちながら今回の開発を進めていきました。試行錯誤を重ねながら織り構造やコーティングの設計を見直し、最適なバランスを探ることで、新たなバックパック用生地を完成させました。

今後も、パーテックスと山と道はより長く使える高品質なバックパック用生地の開発を進めていきます。

Pertex®︎07RS-PC
素材
70デニールナイロン
コーティング
ポリカーボネートコーティング、C6 DWR(耐久性撥水)
生地重量
86g/㎡
引裂強度(JIS L1096A)
たて8kg よこ7kg
切れ目のある試験片を引張り、引き裂かれるまでの荷重値
引張強度(JIS L1096A)
たて88kg よこ58kg
試験片を一定の速度で引張り、破断した最大値
耐水圧(JIS L1092A)
2740mm
試験片にかかる水圧を一定割合で増加させ、漏水を3箇所認めた時点の圧力
Pertex®21RS-PC
素材
210デニールナイロン
コーティング
ポリカーボネートコーティング、C6 DWR(耐久性撥水)
生地重量
137g/㎡
引裂強度(JIS L1096A)
たて11kg よこ10kg
切れ目のある試験片を引張り、引き裂かれるまでの荷重値
引張強度(JIS L1096A)
たて122kg よこ98kg
試験片を一定の速度で引張り、破断した最大値
耐水圧(JIS L1092A)
1460mm
試験片にかかる水圧を一定割合で増加させ、漏水を3箇所認めた時点の圧力