山と道の物作り
生産体制の見直しについて

はじめに

はじめに

これまで山と道は、日本国内の縫製工場を拠点に物作りを行ってきました。国内工場を選んだ理由は、トラブルが発生した際に迅速に対応できるためです。2011年に素人からスタートした山と道が良い物作りを継続するためには、現場を確認しやすく、すぐに対応できる国内工場が最適だと考えていたからです。

しかし、山と道が成長する中で、生産数や生産体制の面で国内生産だけでは限界を感じることも多くなりました。国内の工場はいま様々な問題に直面しています。高齢化、人材の確保、設備投資、効率性の課題など、事業の継続が難しく、廃業する工場があとを絶たないとも聞いています。

一方、海外では、若いスタッフが多く、新しい設備投資も行われている大規模な工場が多く存在し、生産効率もクオリティも高い工場があると聞いています。これからも最高の物作りを目指していくためには、国内だけにこだわるのではなく、海外からも学ぶ必要があると感じました。

そこで、山と道は25年から一部の製品を海外で生産することを決定しました。具体的には、パーテックスを有する繊維商社MNインターファッション株式会社との協業をさらに進めていくことにしました。まずはじめにバックパックの背面をベトナムの工場で生産します。また、タスランナイロンを使った5-Pockets Shorts/PantsなどやAll-weather Alpha Jacketは、バングラデシュの工場にお願いすることにしました。これらの工場は、日本および世界の名だたるブランドの製品を手掛けている信頼性の高い工場です。

このような海外との取り組みを通じて、私たちはさらなる物作りを学びたいと考えています。今後効率的に海外生産を増やしていくというだけの話ではありません。自分たちの物作りを成長させていくための学びを深め、日本での物作りをもっと活性化、さらに進化させていきたいと考えています。

そこで、鎌倉に新しく縫製工場を新設するプロジェクトをスタートします。この工場には、現状稼働している山と道大仏研究所のオフィス機能や企画開発機能、食堂を統合する予定です。

通常、工場は地代の安い地方や郊外に作られることが多いと思いますが、今回のプロジェクトでは、鎌倉の私たちの物作りの中心にこの工場を形にしていきたいと考えています。このプロジェクトを通じて、山と道が考える物作り、コミュニケーション、コミュニティをアップデートしていきます。このプロジェクトは改めて、みなさまにお伝えしていきます(気持ち的にも大きなトライです!)。

このプロジェクトの最初の一歩として、技術、生産効率の向上を目指し、兵庫県豊岡に縫製研修工場を設立中です。ここで得たノウハウを基に、新工場での理想的な生産体制を構築していきます。

これからも山と道は、最高の物作りを目指していくことをお約束します。私たちの新たな挑戦を、どうか温かく見守っていただければ幸いです。

山と道 代表 夏目彰

プロダクトチームの海外視察

プロダクトチームの海外視察

海外生産をはじめるにあたり、プロダクトチームを中心とした山と道スタッフとMNインターファッション株式会社担当者と共に現地工場に視察にいきました。今回の取り組みから、私たちが何を感じ、何を学んでいこうとしているのか、今回視察した一部のスタッフの感想を記します。

ホーチミン・ベトナム工場

ベトナムでは数多くのアウトドアブランドのバックパックを製造してきた工場にお世話になることになりました。まずはバックパックの背面を制作することからスタートします。

工場はとても清潔でゴミも落ちていませんでした。

若いスタッフが多かったのが印象的でした。

赤い制服は検査スタッフさん。数多くの検査スタッフが各工程で厳密に検査を行っていることに驚きました。

女性スタッフにまじって、男性スタッフが多く働いていることも印象的でした。

工場はとても清潔でゴミも落ちていませんでした。

若いスタッフが多かったのが印象的でした。

赤い制服は検査スタッフさん。数多くの検査スタッフが各工程で厳密に検査を行っていることに驚きました。

女性スタッフにまじって、男性スタッフが多く働いていることも印象的でした。

夏目由美子(山と道の創立メンバー・バックパック開発担当)

仕事柄、研究のために他社のバックパックを手に取ることも多いのですが、多くがベトナム製で、その高品質な縫製技術に興味を持っていました。

ご縁があり、ベトナムの縫製工場を視察することになったわけですが、工場の規模や品質管理の徹底、効率的な生産現場を見学し、生産工程の至る所に独自の工夫があり、高品質な製品を作り出していることに刺激を受け、とても勉強になりました。

4月のホーチミンはとても暑かったですが、広々とした開放的な空間で居心地が良かったことも印象深いです。

どの国であれ、信頼できる生産背景を持つ工場と協力して物作りをすることが大切だと再認識しました。

中川爵宏(生産管理担当)

ベトナムでバックパックの生産をしている友人から話は聞いていましたが、ベトナムと言っても工場によって全く違うのだと改めて感じました。どこでやるか、ではなく誰がやるか。今回の工場で特に感銘を受けたのは検品体制の徹底でした。生地の検反から始まり、縫製時の中間検品、完成後の検品、加えて第三者的に独立した部署での抜き取り検品、人海戦術と言えば簡単ですが、その管理体制は徹底されていました。

高度経済成長後の日本から中国へ、そして東南アジアや開拓中のインドへ、その次はアフリカに行くのか? そこから先に行くところはあるのか? ある意味では行く末を感じたということもありますが、機械化が進む業界である事も聞いている中で、山と道はどのような物作りをしていくのか。

ぼんやりとした答えが見えたような気にもなったけど、取り組み始めた自社工場への道では、これから紆余曲折を繰り返してどんな景色を見ることになるのだろうか?

訪れたことのない山域への計画を立てながら想像を膨らます時のように、少しの緊張感と新しい何かが生まれそうなワクワク感が止まらないことだけは確かです。

ダッカ・バングラデシュ工場

スタッフが1,500人以上働いている日系の工場。著名なアウトドアブランドや百貨店向けのクロージング製品を主に作っています。滞在中に色々とお話を伺う中で、工場創業者様の物作りへの強いこだわりを感じました。

量産生地に問題がないか、検反機を二人がかりでチェック。検反機の回る速度もゆっくりで、確実に問題箇所を探しだせるようにしている。

サンプル縫製室。仕様書を翻訳して、問題がないようにサンプル縫製をおこなう。

レインジャケットなどのシームテープの耐水圧に問題がないか、一日中、量産製品から抜き取り検査を行う。

メジャーの精度が間違っていないかを測る物差し。メジャーも使っていけば伸びたりもする。誤差1mmを超えたメジャーは使わない。

ミシンの動きはスピーディにきびきびとしている。

量産生地に問題がないか、検反機を二人がかりでチェック。検反機の回る速度もゆっくりで、確実に問題箇所を探しだせるようにしている。

サンプル縫製室。仕様書を翻訳して、問題がないようにサンプル縫製をおこなう。

レインジャケットなどのシームテープの耐水圧に問題がないか、一日中、量産製品から抜き取り検査を行う。

メジャーの精度が間違っていないかを測る物差し。メジャーも使っていけば伸びたりもする。誤差1mmを超えたメジャーは使わない。

ミシンの動きはスピーディにきびきびとしている。

廣野博友(パターン担当)

サンプル縫製チームには、日本で技術研修を受けたスタッフも多く、様々なブランドのサンプルを担当していました。アトリエと呼べるその空間には、一つ一つ丁寧に物作りに取り組み、楽しみながらも真剣に向き合う人たちがいました。技術的な側面だけでなく、「感性」の部分を擦り合わせていくのはとても重要で、国内でも伝わりにくい「感性」という曖昧なものが、海外ではどう伝わるのか不安もありましたが、生産に向けて数回のサンプル作成を経て、自分たちがやりたいことと実際にできることの擦り合わせができたと感じています。「どこで何をやるのが最高か」なんて答えはないと思っているので、海外視察で感じた空気感や熱量を、山と道に関わる人たちに伝えていきたいと思っています。

夏目彰(代表・全体監督)

バングラデシュに対するイメージは決して良くありませんでした。特に2013年のラナ・プラザ崩落事故は、欧米の大手ブランド製品を縫製していたビルが崩壊し、少なくとも1,127人が死亡するというファッション史上最悪の事故でした。しかし、視察で初めて訪れたバングラデシュは驚きでした。首都ダッカでは観光客がほとんどおらず、地元の人々はとてもフレンドリーで、押し売りもなく、幸せな雰囲気が漂っていました。工場も非常に素晴らしく、MNの担当者や工場のスタッフも非常に印象的でした。物作りの姿勢や管理、人々の人柄に触れ、この場所が好きになりました。そして、バングラデシュの工場もベトナムの工場も、それぞれを見てきて、大事なのは人なんだと改めて感じました。