この『TAIWAN HIKERS HANDBOOK』でこれまでお伝えしてきた通り、外国人にとって台湾高所登山の最大の関門はパーミッション取得に他なりません。
そこで山と道では台湾現地のガイド会社『米亞桑(ミアサン)』や台北の山と道ショップ『samplusu』と協力してパーミッション取得代行サービスを開始し、『TAIWAN HIKERS HANDBOOK#3』ではそのサービス及びモデルルートの紹介と申し込みフォームの公開をいたしました。
ともあれ、ハイカーはセルフエイドが基本。今回は代行サービスに頼らずご自身でパーミッション取得にトライしたい方や理解を深めたい方のため、外国人には複雑かつ難解に思える制度の概要や手続き、具体的な申請手順について詳しくご説明します。
【TAIWAN HIKERS HANDBOOK#1】台湾ハイキングの概要
【TAIWAN HIKERS HANDBOOK#2】 代表的な山とルート
【TAIWAN HIKERS HANDBOOK 番外編】 山と道ラボ渡部の玉山登頂記
【TAIWAN HIKERS HANDBOOK#3】 パーミッション取得代行サービスの案内
パーミッションの概要
原則として、台湾で標高3000m以上の山(台湾では「高山」と呼ぶ)に登るには、山を管轄する公的機関にパーミッションを申請をしなければなりません。
台湾の登山パーミッションは自然保護エリアに入るための「入域許可証」(国家公園に申請)とエリア内の山に登るための「入山許可証」(県=管轄警察署に申請)の大きくふたつに分かれていますが、実際のパーミッション制度はもう少し複雑で、以下のような構造になっています。
- 上図はあくまで「基本ルール」となり、国家公園に含まれているのに入域許可が不要な山や、標高3000m以上なのに入山許可証がいらない山(たとえば石門山や合歡主峰など)、逆に3000m未満で入山許可証が要る山など、例外も多くあります。ただ、それらをすべて網羅するとかえってわかりにくくなりますので、基本的なルールは上図の通りと考えていただければと思います。
- 入域パーミッションは国家公園だけではなく、「林務局」という日本の林野庁のような組織に申請を出さなければならないエリアもあります(上図緑)。ただし、この林務局への入域許可を外国人が申請することはできないため本編では深掘りせず、末尾の「Q&A」で少し触れるにとどめたいと思います。
- 入山申請も2種類あり、3000m以上の高山は要事前申請の「甲種」、それ以外は「乙種」となります。本編で扱う入山申請とは「甲種」をさします。「乙種」を用意する必要はありません。
そして一般的な日本人のハイカーが台湾で実際にどこかの高山に登ろうとした場合、パーミッションを取得するためには以下のような条件をクリアしなければなりません。
- 登山ルートを完全に把握する
- 山小屋や宿営地の空き日程を調べておく
- 緊急連絡先となってくれる現地在住者を確保する
- 山ごとに異なる、管轄国家公園・警察への申請を適切に行う
- ときに発生する英語または中国語でのやりとりをクリアする
この状況を日本にたとえてみましょう。
例えば八ヶ岳に入る場合、事前に宿営地や山小屋の空き状況を完全に調べた上、入山日・下山日もすべて決めて八ヶ岳中信高原国定公園に入園と宿の予約を申請し、続いて山梨県の北杜警察署にも入山申請を出す、というプロセスを(しばしば外国語で)行うということになります。
八ヶ岳のとあるエリアだけは山梨ではなく長野県の茅野警察署の管轄になっているかもしれません。その場合は茅野警察にも申請が必要となります。
このようなパーミッション制度は言うまでもなく外国人にとっては難易度が高く、台湾のハイカーにとってすら煩雑と思われているようです。
しかし、外国人が個人で申請を取得することも決して不可能ではありません。国家公園も警察署もパーミッション受領のためのウェブサイトを開設しており、日本からオンラインで申請ができるようになっています(サイトができる前は郵送でのやりとりとなり、非常に大変だったとか)。
入域許可証の申請方法
まずは台湾最高峰・玉山を擁する玉山国家公園、雪山を擁する雪覇国家公園、南湖大山や奇萊連峰を擁する太魯閣国家公園の入域に必要な入域許可証の取得方法を解説して行きます。
台湾で標高3000m以上の高山がある国家公園は上記の3つのみであり、それぞれ別の組織ですが、申請窓口となるサイトは共通化されており、申請方法もほぼ同じとなっています(以降詳述します)。
なお、百岳と国家公園の関係は以下の地図をご参照ください。
【左上のボタンでエリアとエリア内の山リストが表示されます】
初めに希望の登山ルートを以下のマニュアルで確認しててください。こちらは台北のsamplusと台北のガイド会社米亞桑(ミアサン)が公開情報をもとに制作・日本語化したもので、国家公園内のすべてのルートについてルートや申請期間、諸注意などを記してあります。
確認が済みルートが確定したら、以下の「国家公園共通申請ページ」から、玉山・太魯閣・雪覇の各国家公園へのリンクを開きます。
台湾国家公園入園入山線上申請服務網(台湾語・繁体字)
※台湾語とは中国本土で使われている「普通話(北京語)」とほぼ同じものですが、用いる漢字が本土で用いられている簡体字ではなく、繁体字となります(そう、同じ漢字といっても日本の漢字、簡体字、繁体字と3種類あるのです!)。繁体字は台湾や香港、マカオで使われており、簡体字よりも日本の漢字に近いので意味も類推しやすいと思います。
いきなり台湾語のサイトはハードルが高いと思われるかもしれません。そこで、まずは日本語化が進んでいてわかりやすい玉山国家公園のサイトをベースに説明を進めます。
台湾国立公園入園オンライン申請ページ(日本語ページ・玉山のみ)
玉山国家公園(日本語サイト)のパーミッション取得まで
玉山主峰の山頂直下にある山小屋、排雲山莊の空き日程を確認します。外国人の場合は24名(床)分の優先枠があり、カレンダーの「先行申請」から空き状況を確認できます。申請可能なスケジュールは、入園予定日の35日前から4ヵ月前までです。
宿の空き日程が確認できたらいよいよ申請手続きを行います。
「オンライン入園申請」から「国立公園規則に従います」をチェックし、「排雲山荘の先行申請」を選択します。
当初、タブは「登山プラン」が選ばれています。各入力欄に記入していきます。
日本語なのでそれほど迷う部分はないと思いますが、少しコツが要るのは「Schedule/ルート計画」の部分でしょうか。登山口から経由地、宿泊地までを省略なく、細かく入力する必要があります。
具体的な「Schedule/ルート計画」の入力については、以下の図をご覧ください。たとえば図のA岳、B岳、C岳を全部めぐる際、オンライン申請の画面では以下のように入力しなければなりません。
1日目:登山口A →宿泊地A
2日目:宿泊地A →分岐A→A岳→分岐A→宿泊地A
3日目:宿泊地A →分岐A→分岐B→B岳→分岐B→宿泊地B
4日目:宿泊地B →C岳→宿泊地B→分岐B→分岐A→宿泊地A→登山口
ルールとしては、その日の終わりは必ず宿泊可能地でなければならないことになっています([宿泊地部分の日程を閉じる]ボタンを押してその日の日程をクローズします)。そして、ルート上のすべての経路を省略せず、順番に入力(リストから選択)する必要があります。
むろん、このような入力は、分岐や宿泊地などすべてのチェックポイントを網羅した登山地図がないとほぼ不可能です。Googleマップで登山口や山の位置を特定できても、こうした細かいチェックポイント名までは載っていないことがあります。
そのため、申請にあたっては事前に登山地図を入手しておく必要があります。TAIWAN HIKERS HANDBOOKの#1でも紹介した通り、上河出版社の登山地図がiOSアプリで提供されていますので、必要に応じてそちらを参照するとよいでしょう。紙の地図を日本で入手することは、現時点では困難です。
少し意味がわかりにくいのは「Lecture/登山前講習」でしょうか。こちらは「高い山の危険性などについて知っておいてください」との確認項目です。特に当局にチェックされることはありませんので「オンライン講習」(登山前に動画で注意事項などを確認しておきますという意味)を選んでおけばよいでしょう。
タブから「登山プラン」「申請者」「リーダー」「隊員」「留守」と入力を進めます。ソロ登山の場合は申請者=リーダー=隊員となります。
外国人の場合はパスポート画像のアップロードも必要となります。
「留守」は原則として台湾在住の知人・協力者の連絡先を入力することとなっており、外国人にとってパーミッション申請最大の難関となっています。「Same as Applicant」というオプションがあり、申請者本人のデータを入れても申請自体は可能ですが、許諾されるかどうかは不透明です(※)。
※実のところ、玉山国家公園と太魯閣国家公園については「Same as Applicant」にチェックした状態であってもパーミッションが降りるようです。ただし、後述する警察署への入山届が降りない可能性があります。現状、雪霸国家公園および森林局管轄の山は「Same as Applicant」での申請は却下されてしまうようです。玉山と太魯閣については(2019年4月現在)申請が通るようですが、やはり在台湾人の連絡先を入力した方が確実です。
記入が終了し、送信を押すと次のようなメッセージが表示され、申請番号が発行されます。申請番号は許可の進捗確認や変更・キャンセル、メールでの問い合わせなどに必要となります。
抽選や審査を経て問題なければ数日の後に入園許可書のオンラインでの確認とPDFのダウンロードができるようになり、台湾の警察にオンラインでの入山申請が可能となります。
追記
「排雲山莊」のパーミッションは少し特殊
ここで例示した「玉山国家公園の排雲山莊利用者」のパーミッションは少し特殊で、宿泊料(施設使用料)を支払わなければ入園許可証が発行されないということになっています。外国人は、入山日に塔塔加登山ゲートの管理事務所で直接現金を納付することで入園許可証を入手することができます。
この場合はオンラインでの入山申請はできませんので、管理事務所で発行された紙の入園許可証をもって管理事務所の隣にある派出所に行き、入山許可証を入手します。
管理事務所が開く前、夜間や早朝から登りたい場合には、海外送金するなどして事前に入園許可証・入山許可証を入手しておく必要があります(この場合はもちろん入山許可証もオンライン申請可能です)。
なお、一部の山の入山申請は国家公園の申請システムとリンクしており、国家公園の入園許可証確認画面に「立即申請入山證」(すぐに入山証を申請する)というボタンが表示されることがあります。その場合はボタンを押せば警察への入山申請が完了するので便利です。後日、入園申請をしたアドレスに入山許可証が送られてきます。
玉山国家公園の日本語化されていないルート
日本語版の玉山国家公園申請サイトでは「玉山ルート / 2天(塔塔加 – 玉山ルート – 塔塔加)」しか選択できないようになっています。リストに表示される山は玉山主峰、前峰、北峰、西峰のみで、玉山東峰や玉山南峰、南二段線の大水窟山や達芬尖山といった園内のその他の山は申請できません(2019年4月現在)。
そういった玉山主峰、前峰、北峰、西峰以外の山に行きたい場合は、台湾語(繁体字)サイトから申請する必要があります。言語を切り替えるとすべてのルート/山が選択できるようになります。
(台湾語フォームの入力方法については次の「太魯閣国家公園・雪覇国家公園」で詳述します)
台湾語での申請は漢字文化の日本人にとって意外に難しくありませんが、自信がないという場合には奥の手があります。まず、玉山国家公園にそれらの山を省いたルートを申請し、後に(日本語で)メールを送り、東峰・南峰などへのルート変更(ルート追加)を申し出るという方法です。3つの国家公園の中でも玉山の場合は中の人が日本語サポートに熱心なため、このようなやり方も可能です。
台湾の公園公園は公的機関とは思えないほど親切にサポートしてくれますので、わからないことがあれば遠慮なくメールを送って相談してみるのがいいでしょう。
台湾語(繁体字)の画面
太魯閣国家公園・雪覇国家公園(台湾語サイト)のパーミッション取得まで
玉山国家公園と違い、太魯閣国家公園、雪覇国家公園については日本語対応が部分的ですので、台湾語(繁体字)での申請がベースとなります。一応日本語表示への切り替えも可能ですが、ルートの地名が英語読みになるなどかえってわかりにくいため、本サイトでは台湾語の申請をおすすめします。
申請方法や入力項目は基本的には玉山と同じです。
国家公園サイトに加え、上掲のsamplus・ミアサンが日本語化したルート情報もご確認ください。
玉山国家公園の解説をご参照の上、「登山プラン」「申請者」「リーダー」「隊員」「留守」を入力していきます。
簡体字の入力欄はそれぞれ以下のような意味となります。玉山(日本語編)と重複すする部分もありますが、画面ごとにご説明します。
行程=「登山プラン」
・登山路線→ルートを選択します。
・主路線→ルートの大分類。
・次路線→ルートの小分類。
・登山總日數→入山日から下山日までの日数。
・入園日期→入山(園)期日。
・路線規劃→「Schedule/ルート計画」を入力します。 ・[完成今日路線]→宿泊地を選び、その日の行程を終了。2日間の日程であれば、2日目に登山ゲートに戻り[完成今日路線]を押してルートが完成します。
・[返回上個地點]→1つ戻る。
・[重新規劃]→ルートを最初から選びなおします。
・隊伍人數(含領隊)→登山パーティーの人数を記入します。
・宿營地預約→宿と予約日を入力します。
宿の情報は左の「宿營地排隊狀況查詢」から確認できます。
画面下部の「驗證碼」は画像認証の入力欄。右の枠内に出ている数字・アルファベットを入力します。
・[儲存草稿]→下書きの保存。
・[確認送出]→送信ボタン。
・[検査格式]→未入力欄などのチェック。
・[取消]→キャンセル。
申請人=「申請者」
「請確認領隊或隊員同意委託申請人代理蒐集當事人個人資料,並委託其上網向國家公園管理處提出入園申請,以免違反相關法令」のチェックボックスをオンにし、各入力欄に記入します。
・姓名→名前。
・聯絡地址→住所を記入します。現地での滞在先(ホテル)の住所が無難でしょう。
・手機→携帯電話の番号を記入します。日本の番号でも構いません(認証状況などがSMSで送られてくる場合があります)
・身分證號(或居留證)/ 護照號碼→台湾人か外国人かの区分と国籍を選択し、パスポート番号を入力します。
・生日→生年月日を入力します。
領隊=「リーダー」
グループのリーダーを記入します。「同申請人」を選ぶと申請人欄に入力した情報がコピーされます。入力欄は申請人と同様です。
隊員=「グループの隊員」
グループの登山者情報を入力します。入力欄は申請人と同様です。
留守人=「緊急連絡先」
在台湾の、緊急連絡先となる友人・家族・協力者などの情報を入力します。名前と携帯番号(手機)だけでOKです。
すべて入力が終われば[確認送出]を押して申請終了となります。
不明な点があれば左の「入園信箱」から問い合わせします。早めの回答を期待するなら英語で問い合わせした方がいいでしょう。
抽選や審査を経て問題なければ、数日の後に入園許可が発行されます。入園許可書はオンラインで確認・ダウンロードが可能です。
入園許可書が発行されれば、台湾の警察にオンラインでの「入山申請」が可能となります。
入山許可証の申請方法
続いて、標高3000m以上の高山に登る際に必要な入山許可証(要事前申請の「甲種」)の取得方法について解説していきます。
(なお、上記の玉山国家公園、太魯閣国家公園、雪覇国家公園の山に行く場合は入域申請を経たのちにこの入山申請を行う手順となりますが、国家公園以外の高山であれば入域申請を省いて直接この入山申請を行うことになります)
入山許可証は原則では3名以上での申請が必要とされていますが、実際には単独登山でも許可が下りています。3名以上というルールは形骸化しているか、外国人には別の規程があるものと思われます。
1000m以上の山については「乙種」という許可が必要となっているのですが、事前の申請も不要で、尋ねられた場合に身分証(外国人の場合はパスポート)を提示すればOKとのことです。「パーミッション」と名付けられてはいますが、気にする必要はないと思われます。
オンライン申請は以下のサイトから行います。
タブから「入山許可證申辦」を選択します。
個人情報の注意などを記したチェックボックス(「我同意並了解以上隱私…」)をオンにし、外国人を選択してパスポート番号を記入、「不使用自然人憑證」をクリックします。
画面が「入山申辦資料輸入」に移るので、必要事項を入力します。
「前往地點」の欄は入力に迷うかもしれません。[捜尋前往地點]ボタンを押すと別画面がポップアップし、山域のリストが表示されますので、そこから入山する山・エリアを選択します。
左の枠内一覧から山を選び、真ん中の[選取]ボタンで決定すると右の枠に表示されます。間違えた場合は右枠の不要な山・スポットを選び[移除]ボタンで削除します。
全て選択したら[確認]ボタンで元の入力画面に戻ります。
これだけでは山の名前しかわからないので、右側の[前往地點描述]という欄にルートの簡単な説明を入れます。
下の[登山路線圖]の欄には詳細なルートを記入します。上河文化出版の地図または地図アプリから該当の山域を参照するとよいでしょう。
下の画像は国家公園の申請ページですが、このようなかたちで[登山路線圖]を入力していきます。
「入山名冊」は同時に入山するメンバーのリスト。申請者本人と同じであっても(ソロ登山であっても)、「名冊自行輸入」から入力する必要があります。「緊急聯絡人」と同じ人を入力することはできません。
右上の「×」を押すとリストの入力が完了します。
「入山名冊」の入力画面
[送出申請]を押すと申請完了です。
以上で入域申請・入山申請がそろいました。入園許可証・入山許可証は登山口のゲートか山小屋でチェック・回収されます。早朝や夜間の場合には登山口のポストなどに投函します(ポストがない登山口もあります)。入園許可証・入山許可証はそれぞれ2部ずつ、計4枚準備していくのが安全でしょう。
パーミッション取得代行サービスのご案内
上記で解説してきた通り、台湾の高所登山のパーミッション取得は複雑で難解。そこで山と道では台湾現地のガイド会社『米亞桑(ミアサン)』と協力し、パーミッション取得代行サービスを行なっています。
煩雑な作業に挫けそうになったら、ぜひこちらのサービスもご検討ください。
パーミッションQ&A
パーミッション取得の概要・手続きについては上記の通りですが、ここではより細かな情報や、こんな場合どうする? といったTipsをご紹介します。
林務局が管理している山域は?
林務局の管理エリアは多くありませんが、風光明媚な人気の山が多くなっています。具体的な管轄エリアは、嘉明湖、奇萊南峰から南華山に向かうルート、北大武山、大霸尖山(九九山荘)です。
林務局への申請方法は?
林務局への申請には台湾の身分証番号が必要となるため、外国人が申請することはできません。そのため林務局管轄の山に行くためには、台湾在住の知人などに依頼するか、現地の登山ガイドなどに頼らざるを得ないのが現状です。そのような状況ですが、以下に(台湾の身分証番号をもっていると仮定して)申請手順を記します。
基本的には、山小屋の予約が林務局のシステムと結びついており、小屋の予約がないと入山証が発行されないという仕組みになっています。林務局は各地域ごとにわかれていますが、以下のサイトから包括的に情報を得ることができます。
以下に林務局管轄エリアの申請概略を記します。
嘉明湖・向陽山・三叉山
嘉明湖・向陽山・三叉山エリアに入る場合は「向陽山屋」「嘉明湖山屋」「向陽、嘉明湖營地」の予約が必要となります。奇萊南峰から南華山エリア
奇萊南峰と南華山を結ぶルート上にある「天池山莊」の予約が必要となります。北大武山エリア
ルート上唯一の山小屋、「檜谷山莊」の予約が必要となります。大霸尖山エリア
大霸尖山については「九九山荘」の予約が必要ですが、この山のパーミッションはイレギュラーで、雪覇国家公園の入園許可と申請が統合されています。そのため外国人でも英語・日本語サイトから申請が可能です。
雪覇国家公園のサイトから「九九山荘」を予約し、大霸尖山への入域申請を行うことができる
複数の国家公園をまたいでハイクするとしたら?
国家公園をまたいでハイクする場合は、それぞれの国家公園へと別個に申請する必要があります。
【Case1】たとえば、雪覇国家公園を8/1~8/5までハイクし、8/7から太魯閣国家公園に入る場合、雪覇国家公園に8/1~8/5の行程を申請し、太魯閣国家公園に8/7以降の行程を申請します。この場合、雪覇からの下山日程が早い分には問題ありませんが、遅れてしまうと8/7の太魯閣入園日程に間に合わなくなり、パーミッションが無効となる可能性がありますので要注意です。
【Case2】国家公園から国家公園外の山に縦走する場合、または国家公園からいったん出て再び戻るようなルートの場合には、それぞれ別の日程として申請します。たとえば、太魯閣国家公園内を8/1~8/5までハイクし、8/6~7に太魯閣の外の百岳を登り、8/8にまた太魯閣に戻る場合、太魯閣には8/1~8/5の行程と8/8以降の行程をそれぞれ別個に申請します。
山のグレードって何?
台湾の高山にはグレードが決められています。パーミッション申請の際にもグレードは関係するとされていますので、ここに参考として概要を記します。
グレードは無雪期4段階、積雪期2段階に区分されています。
無雪期
・A級:行程約1~3日ほどで、危険の少ない山。
・B級:行程4~5日ほど、縦走を要する山。もしくは行程約1~3日だが険しい山。
・C級:行程5日以上、縦走を要する険しい山。
・C+:C級の山の中でも更に険しく、ロッククライミングの技術を要する山。積雪期
・D級:積雪期の登山が可能な山。
・E級:積雪期に閉鎖される山(すなわち、この山については冬の登山ができません)。グレードとパーミッションの関連ですが、A~C級は単独(1人)での入山申請が可能です。C+級とD級については3人以上のチームを組むことが必要とされています。C級+についてはザイルとヘルメットが必携品となっており、入山時の検査項目となっています。D級も冬山装備が求められます。
また、B級以上の場合はパーミッション申請の際にA級の山に登った経験(要証明書)が求められるとのことです(※)。※表向きは以上のようなことなのですが、実際にはC級やC+級を含むルートのソロ登山申請でもパーミッションがおりたりしているようですので、外国人ハイカーにもこのルールが適用されているかどうかはわかりません。冬期登山の審査以外にはあまり関係がないという声もあります。かつては、玉山および太魯閣国家公園の場合はグレードの証明は不要で、雪覇国家公園の場合には証明が求められたようですが、2019年からは雪覇国家公園でも不要となったという情報もあります。
グレードについては急に厳格適用になる可能性もありえますので、一応目安としてご紹介しました。
TAIWAN HIKERS HANDBOOK【#2】でとりあげた山のグレードを見てみると、玉山群峰のうち主峰、前峰、西峰はA級、東峰と南峰は険しい岩稜の続くC+級となっています。
雪山と雪山東はA級ですが、雪山北峰はC+、聖稜線と呼ばれる縱走路自体はC+クラスと評価されています。南湖大山はB級ですが、縦走路にある南湖大山南峰はC級です。向陽山と三叉山、石門山含む合歡群峰、奇莱主山南峰および南華山はいずれもA級です。北一段線の中央尖山はC+級。北大武山はA級となっています。しかし、外国人にとっては現地までのアクセスやパーミッションの有無をふくめた総合的な難易度の方が重要と思われます。
ルートのグレードって何?
山のみならずルートについてもグレードがあり、一般健行步道、中級登山步道、高級登山步道の3つが定められています。
一般健行步道はハイキングコースで、危険が少なく交通アクセスも便利なルートをさします。中級登山步道はやや高度なルートで、いわゆる登山道に該当。高級登山步道は高山(標高3000m以上)の険しいルートをさし、登山者が十分な技術、経験と装備を持っていることが求められる…、と定義されています。
パーミッション申請に関係するわけではないようですので、あくまでルートの難易度を示す目安的なものと考えておけばいいかと思います。
以上、パーミッションの概要や申請手順について、なんとなくでもご理解いただけたかと思います。
山と道のパーミッション取得代行サービスをご活用いただくもよし、台湾に知人友人がいらっしゃる方は自力での申請にチャレンジするもよし、いずれの場合でも台湾の山は懐深く日本のハイカーを出迎えてくれるでしょう。
HAPPY TRAIL TAIWAN!
ご注意:
本稿はリサーチャーが日本で入手できる資料(書籍、WEBサイトなど)や台湾当局とのやりとりをもとに、2019年4月時点の情報としてまとめたものです。可能な限り事実確認を行い、また、台湾現地協力者の監修を受けて作成しましたが、すべての手段、申請を試したわけではありません。山域や申請内容によって例外事項も存在するものと思われます。事実と異なる内容が含まれる可能性がないとは言えませんので、実際の申請にあたっては現地当局、申請先への確認をお願いいたします。お気づきの点がございましたらご指摘いただければ幸甚です。