Hiker's Classics

#3 服部賢治(ムーンライトギア)

文/写真提供:服部賢治
2018.06.14
Hiker's Classics

#3 服部賢治(ムーンライトギア)

文/写真提供:服部賢治
2018.06.14

誰にでもある、思い出の道具やどうしても捨てられない道具、ずっと使い続けている道具。

この『HIKERS’ CLASSICS』は、山と道がいつも刺激を受けているハイカーやランナー、アスリートの方々に、それぞれの「クラシック(古典・名作)」と呼べる山道具を語っていただくリレー連載です。

第3回目となる今回の寄稿者は、東京岩本町にあるムーンライトギアで店長を務める服部賢治さん。その豊富な商品知識はムーンライトギアを訪れた方ならご存知のはずですが、服部さん自身もマウンテン・ランニングやクライミング、バックカントリートリップやバイクパッキングなど、ジャンル横断的にアクティブに遊ぶ、正に現代のアウトドアマンです。

NOTE

ムーンライトギアの服部と申します。今回、この『Hikers’ Classics』のご依頼をいただき、大先輩の方々を前にして自分が書くのは気が引けるのですが、自分らしい山での遊び方や精神的な部分をお伝えできたらと思い、お引き受けしました。どうぞお手柔らかにお付き合いいただければ幸いです。

「荷物が軽い = 自然とより密接に付き合え、より深い経験を積める」

山歩きを始めた頃から、軽量化は僕の永遠のテーマだ。物心つく頃から親の趣味に付き合わされ、山歩きをしていた。先日、自分の結婚式用のムービー作りで小さい頃の写真を見返していると、山歩きかスキーかサッカーの写真しかなく、親には週末ごとにどこかに連れ出されていた。

その頃から山は好きだったし、テントで寝るのも好きだったけれど、重い荷物を背負うことに対する嫌悪感は今もよく覚えている。僕は他の小学生に比べて体が小さく、60Lのフレームザックを背負っているとよく「カバンが歩いているみたい」と言われた。子供ながらにどうやったら荷物を軽くできるかということはその当時からずっと考えていた。

だが、小学生の自分がウルトラライト・ハイキング(UL)なんて知るわけもなく、基本的に親に山道具を借りていた自分にとっては「選択」と「改造」という2点がとても重要だった。フレームザックからフレームや雨蓋やタグを取り除いて軽量化してみたり、今でいう「MYOG」や「セルフリペア」の精神を実践していた。自分の身体や山行スタイルに合った道具を自分で作ったり改造するという精神はとても大事だと僕は思っている。作ったものには愛着が湧くし、ものを大事にするという精神が生まれるからだ。

小学生の頃、琵琶湖を自転車で一周する旅に出た。その際。少しでも荷物を軽くしたい(ママチャリのカゴに全ての荷物を入れたい)と思い、親に借りてツエルトを使ってみた。もちろん、当時のものなのでまだまだ重く、1kgはあったと思うけれど。その旅の後半、天気の良く夜にマットと寝袋だけで星空を見ながら寝て、朝日を見たとき、なんとも言えない感動に襲われた。今でも琵琶湖の向こうに見えたその朝日をよく覚えている。よりシンプルな野営をすることにより、自然をより身近に体感できたのではないかと思う。

そして大学生になり、サッカー部のトレーニングで裏の山を走ったのをきっかけにマウンテン・ランニングにハマった。なんて自由で身軽なんだと衝撃を受けた。色々調べるうち、兵庫県の芦屋にヤバいショップがあると知った。スカイハイ・マウンテンワークスの北野拓也さんとの出会いだった。北野さんはじめとしたスカイハイのランニングチーム(Mt. Rokko Hardcore)の方々との交流を通じてより軽く、より早く、より自由に山を駆け巡ることに目覚めていった。

そして今、ULギアはアルパインクライミング、バックカントリースキー、沢登り、バイクパッキング、マウンテンランニング(ファストパッキング)など様々なアクティビティの垣根を越えたクロスオーバーを生んでいる。それは「ライト&ファースト」という理念を生み、使う人の技術によってはより自由に、より安全に山で遊ぶことを可能にする。自らの経験値をもとに自然のなかで遊ぶことを通じて、「自分とは何者か」を探求すること。軽量でシンプルなギアは、その手助けになってくれる。

Kenji Hattori's CLASSICS

Six Moon Designs / Wild Oasis

初めて購入したフロアレスシェルター。
それまではファイントラックのツェルト1などを使用することが多かったが、より解放的に気持ちよく寝たいという願望があり購入した。
390gと軽いのも魅力だが、ネットが下についているので、低山など虫が多い場所でも侵入しにくく、雨の跳ね返りや粉雪も入ってこないので、フロアレスシェルター+αの使用ができる。
ポールの高さをあげより解放的に張ったり、稜線沿いでは低めに張り機密性を高めたりと様々な環境に応じて使用できるのことも特徴。
個人的にはULを知るきっかけとなり、より自然に近い距離で解放的に寝る入口となってくれたアイテムだ。

OMM / Classic 32

かれこれ7~8年前に購入。これこそクラシック。シンプルな背負い心地ながら40年前から細かなアップデートを繰り返し、長年変わらず愛され続けている製品である。
昨年で40周年を迎えたOMMは”ORIGINAL MOUNTAIN MARATHON”というその名の通り、このクラシック32も山岳ナビゲーション・レースのために作られている。
短い背面長は高い位置に荷重がかかるようにできており、背中の厚いパッド、しっかりと固定できる腰ベルトは斜面を軽やかに駆け下りる際にもブレずに背負える。
また意外と知られていないのが、アックスを取り付けれたり、ロープを取り付けられたりと山岳的なアプローチでも使える点。自分もよく沢登りやよりスピーディーに抜けるクライミングやスクランブリングで使用している。

Patagonia / R1 hoody

当時、スティーブ・ハウスが着ている写真がとても印象的で購入したのがR1フーディ。
とても柔らかく、一度着たら病みつきになる着心地で、凹凸状のグリッド素材のポーラテック・パワーグリッドは汗抜けも良く、アクティブに動くマウンテン・ランニングや雪山ハイキング、山岳滑走には必ず着ていた名品。このグリッド状の構造はその後ポーラテック・アルファなど様々なインサレーションやフリース素材に用いられていて、たまに着るとフード周りのフィット感やサムホールの細かな作りなど、さすがだなと唸る。
何度も修理を行い着続けている名品である。

Rab / Alpine bivy

どんなに狭い場所でも広げればそこで寝れるビビィ泊は、中に入ってクッカーを触ったり、景色を眺めながら食事をしたり、夜空を見ながら眠ったり、いちばん自然とシンプルに関われる野営スタイルだ。
このラブのアルパイン・ビビィはeVentのため透湿性に優れ、蒸れにくいのが特徴で、冬でもフロアレスシェルターや雪洞との併用で大活躍してくれている。
ビビィ泊には抵抗を感じる方も多いかと思うが、一度やってみると思ったよりも快適だし、何よりもそのシンプルさに魅かれる方も多い。また体と壁の間が近く、機密性が高いため、意外と暖かい。

Sky High Mountain Works / Quilt 120

昔は「誰もが通る道」であるモンベルのダウンハガー#5を使用していたのだが、物心つく頃から使用していたものなのでさすがに買い変えたいと思い、購入したのがこのスカイハイ・マウンテンワークスのキルト120。
寝袋は寝た時に背中部分のインサレーションが潰れてデッドウェイトになってしまうというという問題があることはみなさんご存知だと思う。キルトはその潰れてしまう寝袋の背中部分を取り除いてしまったような形状をしており、背面にバンジーコードを通すことで機密性を上げ、冷気の侵入やコールドスッポットを最小限に留めている。体型の細い自分にとっては理にかなったデザインであり、細身の男性や女性の方でも使用できる。
マットとキルト120をバンジーコードで固定し、その上からビビィサックで全体を覆うとより機密性を高め、薄手のインナーダウンでも5度前後の気温であればしっかりと寝ることができる。ただ、あくまでも組み合わせるアイテムの相性や個人の体感気温、汗の量でも違ってくるので、ぜひ日頃から実験した上で慣れておく必要がある。

EVERNEW / 400FD+Trail Designs / Sidewinder Ti-Tri Bundle

このクッカー&カルデラコーンはアルファ米やリフィルなどの必要最低限の食事で済ませる際に使用するシステム。
下からの吸気と排気を行い、チムニー効果が起こることでより効率的にお湯を沸かすことができ、五徳の安定が良いので、岩場やザラ場でも安定して使用できる。
また、なんといってもチムニー効果の影響で固形燃料でもススが出にくく、何回お湯を沸かすか単純計算できるので持っていく燃料も決め打ちできるのが魅力。今は生産中止してしまったので手に入らないが、if you haveのTimnyが代替えできるのでそちらもおススメ。

Six Moon Designs / Wild Oasis

初めて購入したフロアレスシェルター。
それまではファイントラックのツェルト1などを使用することが多かったが、より解放的に気持ちよく寝たいという願望があり購入した。
390gと軽いのも魅力だが、ネットが下についているので、低山など虫が多い場所でも侵入しにくく、雨の跳ね返りや粉雪も入ってこないので、フロアレスシェルター+αの使用ができる。
ポールの高さをあげより解放的に張ったり、稜線沿いでは低めに張り機密性を高めたりと様々な環境に応じて使用できるのことも特徴。
個人的にはULを知るきっかけとなり、より自然に近い距離で解放的に寝る入口となってくれたアイテムだ。

OMM / Classic 32

かれこれ7~8年前に購入。これこそクラシック。シンプルな背負い心地ながら40年前から細かなアップデートを繰り返し、長年変わらず愛され続けている製品である。
昨年で40周年を迎えたOMMは”ORIGINAL MOUNTAIN MARATHON”というその名の通り、このクラシック32も山岳ナビゲーション・レースのために作られている。
短い背面長は高い位置に荷重がかかるようにできており、背中の厚いパッド、しっかりと固定できる腰ベルトは斜面を軽やかに駆け下りる際にもブレずに背負える。
また意外と知られていないのが、アックスを取り付けれたり、ロープを取り付けられたりと山岳的なアプローチでも使える点。自分もよく沢登りやよりスピーディーに抜けるクライミングやスクランブリングで使用している。

Patagonia / R1 hoody

当時、スティーブ・ハウスが着ている写真がとても印象的で購入したのがR1フーディ。
とても柔らかく、一度着たら病みつきになる着心地で、凹凸状のグリッド素材のポーラテック・パワーグリッドは汗抜けも良く、アクティブに動くマウンテン・ランニングや雪山ハイキング、山岳滑走には必ず着ていた名品。このグリッド状の構造はその後ポーラテック・アルファなど様々なインサレーションやフリース素材に用いられていて、たまに着るとフード周りのフィット感やサムホールの細かな作りなど、さすがだなと唸る。
何度も修理を行い着続けている名品である。

Rab / Alpine bivy

どんなに狭い場所でも広げればそこで寝れるビビィ泊は、中に入ってクッカーを触ったり、景色を眺めながら食事をしたり、夜空を見ながら眠ったり、いちばん自然とシンプルに関われる野営スタイルだ。
このラブのアルパイン・ビビィはeVentのため透湿性に優れ、蒸れにくいのが特徴で、冬でもフロアレスシェルターや雪洞との併用で大活躍してくれている。
ビビィ泊には抵抗を感じる方も多いかと思うが、一度やってみると思ったよりも快適だし、何よりもそのシンプルさに魅かれる方も多い。また体と壁の間が近く、機密性が高いため、意外と暖かい。

Sky High Mountain Works / Quilt 120

昔は「誰もが通る道」であるモンベルのダウンハガー#5を使用していたのだが、物心つく頃から使用していたものなのでさすがに買い変えたいと思い、購入したのがこのスカイハイ・マウンテンワークスのキルト120。
寝袋は寝た時に背中部分のインサレーションが潰れてデッドウェイトになってしまうというという問題があることはみなさんご存知だと思う。キルトはその潰れてしまう寝袋の背中部分を取り除いてしまったような形状をしており、背面にバンジーコードを通すことで機密性を上げ、冷気の侵入やコールドスッポットを最小限に留めている。体型の細い自分にとっては理にかなったデザインであり、細身の男性や女性の方でも使用できる。
マットとキルト120をバンジーコードで固定し、その上からビビィサックで全体を覆うとより機密性を高め、薄手のインナーダウンでも5度前後の気温であればしっかりと寝ることができる。ただ、あくまでも組み合わせるアイテムの相性や個人の体感気温、汗の量でも違ってくるので、ぜひ日頃から実験した上で慣れておく必要がある。

EVERNEW / 400FD+Trail Designs / Sidewinder Ti-Tri Bundle

このクッカー&カルデラコーンはアルファ米やリフィルなどの必要最低限の食事で済ませる際に使用するシステム。
下からの吸気と排気を行い、チムニー効果が起こることでより効率的にお湯を沸かすことができ、五徳の安定が良いので、岩場やザラ場でも安定して使用できる。
また、なんといってもチムニー効果の影響で固形燃料でもススが出にくく、何回お湯を沸かすか単純計算できるので持っていく燃料も決め打ちできるのが魅力。今は生産中止してしまったので手に入らないが、if you haveのTimnyが代替えできるのでそちらもおススメ。

服部 賢治

服部 賢治

Nomadics,inc / Moonlightgear 店長 大阪府箕面生まれ。プライベートではマウンテンランニング、バックカントリースノーボード、サーフィン、クライミングなどジャンルを問わず自然の中で過ごす遊びや旅が広がるように伝えていきたいと活動中。