山と道HLCのイベントやプログラムに行くと、あっちにもこっちにもいるんですよね、ちょっと気になる雰囲気のハイカーさんが。話を聞いたら何か出てくるんじゃないかと、山と道HLCディレクターの豊嶋秀樹が各地を歩いてローカルハイカーにインタビュー。ついでに、地元の山や酒の情報も教えてもらいます!
第1回を投稿してからいきなりお久しぶりになっちゃいましたが、第2回は、なぜかまたHLC東北より。初めて会ったときは、モジャモジャのアゴ髭に短パン、ルナサンダルという、「ザ・いまどきのトレイルランナー」って感じだったあだっちゃん。久しぶりに会うと、なんだかスッキリ好青年。でも、今日も変わらず缶ビール両手に赤い顔してフ〜ラフラ〜。
本名:安達隆太(アダチリュウタ)
出会った場所:HLC東北
ではまず、ご出身から。
出身は大阪府で、大学進学を機に上京しました。14、15年東京で過ごしたのちに2018年5月から岩手県の紫波町に地域おこし協力隊として移住してきました。36歳です。
東京で学生していたときは何やっていたの?
大学生活は大学院まで行ったので長いあいだ満喫させてもらいました。専攻は西洋史でした。遊びまわってばかりだったんですがけど(笑)。文学部に行って考古学をやりたかったんですが、教育学部で歴史の勉強をすることを選びました。
歴史好きだったとは、意外!
高校のときは、『マスターキートン』になりたかった〜。歴史を勉強して海外の遺跡をあっちこっちとまわりたいなって思ったんですけど、東京の楽しさに流されているうちにずいぶん時間がたっちゃいました。とは言え、休みの日には遺跡巡りをしていたし、歴史関係の仕事に就きたいって気持ちはあったので、大学院に入り直したんです。世界遺産のマネジメント研究なんかをやる学部世界遺産専攻ってのがあって、世界遺産のマネジメント研究なんかをやります。そこで、僕が研究対象にしたのが、南米6カ国にまたがるロングトレイルであるインカ・トレイルだったんです。
インカ・トレイル! すごい、行ってみたい。
ロングトレイルって言っても、まだ古道の遺構が残っているような状態で、世界遺産に登録されたしこれから整備して行こうっていうタイミングでした。ペルーのワラスっていう町に滞在して、地元のコミュニティでインカトレイルを活用してツアーを組んでいたり、保存して活用していこうっていうマネジメントに関わらせてもらって、研究対象にしていたんですが…。語学の壁にやられて、大学院は修了せずにやめてしまいましたね。
大学院生時代。インカ・トレイルのクスコ近郊の聖なる谷ピサックにて。写真提供:安達隆太
それで、岩手へ来ることになったきっかけは?
日本に帰ってしばらくして、ハイキングやトレイルランにハマり始めて、アウトドアに絡む仕事がしたいなって思うようになってました。Run boys! Run girls!に入り浸るようになったり、トレイルフードのメーカーの方が仲良くしてくれてイベントを手伝わせてもらったり。2017年のOMMのレースのとき、山と道HLCのアンバサダーをされているknottyの上野裕樹さんを紹介してもらうと、「ちょうど僕らの地元でトレランがらみの地域おこし協力隊を募集していますよ」って話になったんです。
引き寄せの法則っ!
「アダチいいじゃん、行けば?」「岩手っすか!」って感じで盛り上がりはしたんですが、岩手はハードル高いなって思ったんですよ。でも、調べてみると、ホントにトレランの大会を運営する業務ってなっているし、これはいい経験になりそうだなって気になったんです。まぁ、転職したかったし、独身だし、行くなら今かなって思い、そっからほぼ何も考えずに応募して、無事採用されたという流れでしたね。
UTMB(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)TDS2018。123km完走‼︎ 写真提供:安達隆太
トレランの大会はどんな感じ?
ラ・フランス温泉館っていう地元の温泉があるんですが、そこにもっと人を呼ぼうっていうのがはじまりだったようです。東根山の麓にあるんですが、そこでトレイルランニング大会を役場が主導してやるってことになって、地域おこし協力隊を採用して継続的に開催していきましょうっていう話です。紫波あづまねトレイルっていうのが現在のレースの正式名称。距離は13キロで、標高差が800です。
ちなみに、地域おこし協力隊として役場で仕事しているときはスーツ着てたりするの?
いや、このままです。ヒゲもモジャモジャのまま(笑)
移住してみてどう?
めっちゃいいっす。紫波町は、盛岡と花巻のちょうどあいだにある人口33,000人くらいの町です。生活は不自由なく、コンパクトにすべて町の中で完結します。山も近いし、飲み屋にも歩いて行けるし。2、3ヶ月に1回くらいイベントに行ったり、レースへ出たりで東京へ行きますが、それくらいの頻度がちょうどいいなって思います。たまに都会的な要素も刺激になるし。夜景とかすげーって。
雑誌RUN+TRAILに掲載された、地域おこし協力隊としてトレランを通じて町おこしに取り組むあだっちゃん。
そうそう、畑の話を聞きたいです。
畑は、友達とハイキングに行ったときに「コロナ禍で大きな山には行けないし、暇つぶしにうちの実家に使ってない畑あるけどやらない?」って聞かれて、「いいっすね、おもしろそうっすね」って返事したんです。下山したその足で畑を見に行くと想像より荒れていて、これは大変だなって思いながら「やる?」「やりましょう!」て。翌日から草刈って、抜根しはじめると、なんか自分らで遊び場をつくっているって気がして、その作業自体が楽しいんです。でも、クワなんて持ったことなかったんで、全身筋肉痛なうえ、腰も痛くて大変でした。
何を植えてるの?
サトイモ、ズッキーニ、ツルムラサキとか、とりあえず友達が調達してきた苗を植えました。畑で作業していると友達や知り合いが前を通りがかったりとか、わざわざ遊びに来てくれたりとかするんです。
畑コミュニティ? おもしろいね!
ゆくゆくは、野菜を植えている隣にテント張れるようにしたり、畑が遊びのフィールドになればいいなって話してます。1年じゃできないですけど、3年くらいかけて。いや5年ですかね!
まずは形から。つなぎや鍬や鋤など装備一新。
さぁ、これから収穫祭⁉︎ 写真提供:安達隆太
あだっちゃんと初めて会ったのは、山と道HLCのイベントをknottyのある紫波町のオガールで開催したときのこと。冒頭にもふれたように、そのときのあだっちゃんは缶ビールを両手に、いや、パンツのポケットにも入っていたような気がするが、とにかく、赤い顔していい感じにできあがっていて、イベントのあいだずっとニコニコしていたのが印象的でした。その日のイベントは、山と道HLCの歴史で伝説的な酔いどれナイトへ、というのはまた別の機会に。
あだっちゃんは、この春に地域おこし協力隊の任期を終了しました。以前、その後はどうするのとたずねたら、「紫波に残って林業にたずさわってみたいなぁ」と言っていました。実際、あだっちゃんは、紫波の森林組合の現場作業班の正規スタッフとして採用され、紫波の山で毎日汗だくになって修行中だといういことです。
グリーンシーズンは毎日汗だくに。「山と道の5-Poket Pantsは丈夫で助かっています(笑)」 写真提供:安達隆太
「紫波あづまねトレイル」は、岩手県出身のトレイルランナー・西城克俊さんのNPOが主催することになり、あだっちゃんはその現地スタッフとして大会の運営に関わっています。コロナ禍ではあるけれど、状況に合わせて実現しようとがんばっているということです。
個人的に気になる畑のその後は、林業が始まってあまり行けていないが継続中ということです。去年は、甘南蛮、なす、きゅうり、トマト、コリンキー、二十日大根などを収穫できたとのこと。採れた野菜は、友達の飲食店で使ってもらったり、町内の商店街の朝市で販売したり、まわりにおすそ分けしたり、ということで順調そうです。
東北には、2泊や3泊で歩けるハイキング向きの山も多いし、下山してからの温泉や日本酒も大充実。特に春は、まだら模様に山肌に残る雪と新緑のコントラストが美しく、僕もスキーをはいて毎年行っています。最近では、東北を代表するロングトレイル、みちのく潮風トレイルも人気がありますね。もちろん、HLC東北のプログラムへの参加もお待ちしています。山と道HLCのアンバサダー上野さんのknottyや、knottyのある複合施設オガールもとても素敵なところですよ。あだっちゃんが赤い顔してフラフラしているかも(笑)。
最後に、ハイキングについて聞くと、歴史へのパッションは冷めてはおらず、日本にある古道をいろいろと歩いてみようと思っていると話してくれました。
あだっちゃん、僕は、インカ・トレイル歩いてみたくなりました。また詳しく話を聞かせてください。
では、またすぐに!
【付録】
あだっちゃんの岩手県紫波町ローカルガイド
「山と酒」
まずは山!
おすすめローカルマウンテンはやっぱり東根山です。盛岡からも30分くらいと、アクセスが良い。麓に「ラ・フランス温泉館」があるんで、下山後はひと風呂浴びてさっぱりして帰れる。トレイルは、結構な急勾配で歩いても走っても良いトレーニングになります。山菜シーズンだとみんなビニール袋持っていくんですよ。家からほんとにすぐなので、サクッと朝から登って午後は畑作業してという、アクティビティのはしごみたいな感じで楽しめます。
そして、酒!
安くて、おいしくて、家からも近いサンセットですね! おまかせで作ってもらったり、フライドポテトや唐揚げもウマい。こっちに引っ越して来てすぐの何もわからないときに最初に来たお店なんです。店主も僕と同い年で、意気投合して通ってました。
もう1軒!
さっきのサンセットで知り合った(高橋)大輔さんの店、純米ニトロです! 最初に会ったときは大輔さんがまだ店を始める前で、一緒に飲んで仲良くさせてもらううちに、店の場所が決まって開店準備のときにはお手伝いしたり。魚もうまいし、岩手の郷土料理「そばかっけ」も! ターンテーブルがあってレコードかけてグルーヴ感もバッチリです!
東根山下山後に!
東根山の麓にうどん屋さん、たかのはしがあるんですけど、東京から友達が来て東根山を走った後に、「安くておいしいうどん屋ありますよ」って連れて行ったらだいたいみんなハマってくれるんですよ!
あだっちゃん手書きの紫波ローカルガイドマップ(スマートフォンで表示が小さい場合はピンチアウトで拡大してください)