#10 マイガールと鎌倉のトレイルで女子会ピクニッキング
#10 マイガールと鎌倉のトレイルで女子会ピクニッキング
鎌倉の山と道社員食堂で毎日独創的なお昼ご飯を作るスタッフの寒川奏。イラストレーターとしても活動する彼女がとにかくおいしいものを、気持ちの良い場所で、大好きな人と食べること……つまりピクニックをすることについて綴るこの連載。今回は日常生活で悶々と抱えた気持ちを発散すべく、大好きな女友達と一緒に鎌倉へピクニッキングに向かいます。
トレイルも料理も1週間前に勢いで決めるという、いつも以上のバタバタっぷりを発揮しますが、気心の知れた女友達とのピクニッキングはどんな形になろうと最高なのです。たわいのない話で笑い、お互いの悩みを分かち合い、おいしい料理を一緒に食べることで、寒川はだんだんと癒されていきます。最近なんだかうまくいかないな〜という人も、肩の力を抜いて、気張らないふたりのピクニッキングをどうぞ楽しんでください。
ピクニッキングとは?
まずはピクニッキングが何かをご紹介。
ピクニッキングとはピクニックとハイキングを掛け合わせた造語である。なぜ私がいまピクニッキングマスターを目指しているかは第1回を読んでもらいたいが、ピクニッキングとは、以下のようなものだと私は考えている。
つまり、誰かの家でやる持ち寄りパーティを屋外で、ハイキングを絡めてやるのがピクニッキング?
これはあくまでも私の定義であって、もっと違ってもいいと思う。読者の皆様にも自分のピクニッキングを見つけて欲しい。
女友達に会いたい
私は女友達に飢えていた。家と職場を往復する日常で、外部との接触といえば山と道スタッフか近所の業務スーパーのレジの方たちくらい。落ち着いた幸せな日常。わかってるけど、たまにはやいのやいの言いながらどデカい声で「わかる! ウケる!」とか言いたい。
きっとそんな私の欲望に応えてくれるに違いないと連絡したのは、鎌倉のいい女「バナナさん」こと、いずみさわあやさん。山と道スタッフたちはもちろん、鎌倉のいろんな人たちと仲良し。トレイルランニングやハイキングも精力的に楽しんでいる気のいい素敵な人。社内イベントで話して以来意気投合し、今や「あやちゃん」「奏ちゃん」と下の名前で呼び合うほどに仲良しなのだ。
寒川「あやちゃん(バナナさん、以下あやちゃん)ヤッホー! 私と鎌倉ピクニッキングに行かない⁉︎」
あやちゃん「えっ! 行く行くー、やったー!」
いい女たちは忙しい
誘ったはいいが、あやちゃんも私もなかなか慌ただしい毎日を過ごしていた。どんなコースにするか、ご飯は何にするかなどの話がまともにできないまま、当日1週間前になってしまった。
寒川「あやちゃん、今度のピクニッキングなんだけど、ルートはあやちゃんのおすすめでもいいかな? あと何が食べたい?」
あやちゃんは鎌倉トレイルの玄人で、地図はもちろんのこと、トイレや広場などの情報もばっちり頭に入っている。頼らない手はない。
あやちゃん「おっ! じゃあちょうどいいところがたくさんあるから考えとくね。私はこの間釣りに行った時にゲットした鯖で作ったコンフィ持っていくよ。」
寒川「コンフィ…⁉︎ おしゃれすぎる…。じゃあ私はそれで鯖サンドができるように用意していくね。あとおやつも作っていくよ。」
寒川、あやちゃん「楽しみだねーー‼︎」
さすが外遊びに慣れているだけあって、決まるのがとてつもなく早かった。
女子会ピクニッキングスタート!
当日は鎌倉駅集合。平日ながらさすが観光地の鎌倉は激混み。急いで駅を離れスタート地点の寿福寺へ。お寺を巡る修学旅行生たちに紛れてピクニッキングスタート!
今回のコース。ランチの時間も含めて約3時間の予定。疲れたらすぐ電車に乗れちゃうのもグッド!
あやちゃん。挨拶もほどほどに急いで駅を出る。
寿福寺の隅からトレイルに入るコース。
墓地の間にトレイルの入り口。
歩いていると、たくさんの子どもたちとすれ違った。幼稚園児、小学生、中学生、なんならお年寄りや海外の人もたくさんで、老若男女とはこの事といったような顔ぶれ。鎌倉のトレイルは気軽に誰でも楽しめるトレイルなんだな。そんな老若男女をスイスイと抜かしていく私たち。というかあやちゃん。
寒川「あやちゃん登り強い! さすがトレイルランナー!」
あやちゃん「いや私、登りは弱い方だよ! 今週末は伊賀のレースに出るんだけど久々すぎて不安しかないよ。」
小学生「やだマジで汚い、歩きづらい、どこ捕まればいいの⁉︎」
我々「うふふ」
寒川「この登りの速さなら大丈夫だよ。ていうか伊賀まで行くだけで偉いからもう優勝です。ちなみに何kmのレース?」
あやちゃん「50km。」
寒川「車移動の距離じゃん、すご〜。そういう時の下着とかどうしてるの? 私たち汗っかきはすぐ臭くならない?」
あやちゃん「山とかランで女性が抱える問題のひとつよね。やっぱりメリノウールの下着かな。Tバックとかも試してみたけど、うーんて感じ。」
寒川「わかる。私はゴールドウインのメリノウールのブラジャーを使ってるけど、臭わなくて良かったよ。パンツは素材よりも軽くてすぐ乾くやつを選ぶようにしてる。毎日洗えばいいからね。」
あやちゃん「でもなかなかコレ!っていうベストなのには出会えないよね〜。」
女性ならではの話ができて嬉しい。男性の下着の話は「裏面と前後面全部使えば4日は新しい面を使える」など非現実的で全然参考にならないのだ。ていうかそれ臭いだろう。
源氏山の源頼朝像が見えてきた。どうやらこの源頼朝像広場が、どこかの小学校のオリエンテーションのランチ会場になっているようだ。今まで我々の背後を無気力に歩いていたポッチャリボーイたちが「昼飯、昼飯ィ〜‼︎」とすごい勢いで走り追い抜いていく。やはり頑張っている日中に摂る「昼食」は心身にとって、とても大事なんだ。山と道社員食堂でランチを作っている私は、重要な役割を担っているのかもしれないと思った。
あやちゃん「私もお腹が空いてきた! 早くご飯を食べたい! ここから北鎌倉の方に下りて六国見山に向かうよ。」
寒川「了解! スラスラと行く場所が出てきてすごいなあ。あやちゃんはどうやってここまで鎌倉トレイルに詳しくなったの?」
あやちゃん「最初はランニンググループで人に連れて行ってもらったりしてたんだけど、それだと全然地図が頭で繋がらなくて。だから鎌倉トレイルの全体的な構造を理解するようにして、やっと地図が繋がって頭に入ったの。鎌倉って攻め入られないように山に囲まれた構造になってるのね。だから全部のトレイルがいっぽんに繋がってないの。どこのトレイルに入ってもどこかでトレイルの外に出るようにできてるから、より頭のなかで地図を繋げるの難しかったな。」
寒川「なるほど。地理が苦手な私は詳しくなるまでの道が長そう。」
あやちゃん「人を連れて行ったりすると、より理解が深まるよ。」
友達がいない私には連れて行く人もいないので、ひたすら散歩しようと思った。
お待ちかねのランチタイム
六国見山に到着。山頂は地味で、木札が地面に置かれているだけ。少し歩いた先の展望台のあたりがひらけていて、ピクニック向きなのでそちらへ向かう。
地味だ…。
一応記念撮影。
今日のピクニックスポット。なんてダサいポーズ。
寒川「いや〜、ちょうどいい! 1時間ちょいのハイキングはランチへのいい空腹スパイスになったよ。」
あやちゃん「食べよ食べよ〜! 私は鯖のコンフィを作ってきました。」
左上:あやちゃん作の鯖のコンフィ、左下:寒川作の行動食にもデザートにもなるバナナケーキ 右:寒川作の厚焼き卵を挟んだ自家製パンと、にんじんのラペ
寒川「おいしそうすぎる。あやちゃんが鯖のコンフィを持ってくるって言ってたから、鯖サンドにできるようにいろいろ持ってきたよ! 自家製パンに八丁味噌と柚子とにんじんのラペ、山椒風味の厚焼き卵を挟んできたので、ここに鯖が加わればもう、完璧です!」
自家製サワードウブレッドをカリカリめに焼き、そこに具材を挟んで持ってくると、うまい具合にパンが具材の水分を吸ってしっとりするのだ。
あやちゃん「感動的だよ、やばい。大きすぎてそれぞれの素材で分けて食べるという選択肢しかなくなったけど、おいしすぎる。」
素材ひとつひとつがおいしいのだ!
なんという断面。とんでもなくおいしい爆弾を我々は作り出してしまったようだ。
口いっぱいにおいしいものが! 幸せすぎる。
寒川「サンドされていたという過去はあるから、もうこれはサンドイッチだよ。このコンフィ、おいしすぎる。このオイルだけでパスタとかフォカッチャとか、ピザとか作ったら本当においしいと思う。可能性を固めた油だね。」
あやちゃん「コンフィは初めて作ってみたんだ、おいしくできて嬉しい! しかも実はこの鯖、私が釣りました。」
寒川「えっすご。初コンフィでこのハイクオリティなことも、まさかの自分で釣った魚だったことも全部すごぉ。」
あやちゃん「漁船乗って船釣りしたんだ〜! 自分で釣るの楽しいからおすすめ!」
寒川「私、不器用で魚触るのも苦手なんだけど、釣り好きなんだよね。」
あやちゃん「それは好きなのかな…?」
人間いろいろあるね
寒川「あやちゃんとこういう時間が持てて本当に嬉しい。なんかお互い人間関係のゴタゴタとか、ちょっと疲れてたじゃない?」
あやちゃん「私も今日が本当に楽しみだったの! 最近やっと元気になってきたよ。」
定期的に女子会をする私たちはお互いの悩みや幸せをシェアする。前回の女子会で我々はそれぞれモヤモヤしていた。
食後にお湯を飲みながらしっぽり話す。
あやちゃん「もう全部気持ちが離れていったというか、ある意味どうでもよくなったんだよね。いろんな気持ちを乗り越えて、いちばん大事なのは自分であることに気づいたよ。」
寒川「わかる。いい意味でどうでも良くなったよね。人は人、自分は自分。大事なのは自分と愛する人たち。それ以外はどうでもよくて、勝手にやってって感じ。」
あやちゃん「この感覚を得るまで時間かかった〜! だから今はスッキリしてて、気持ちいい。」
寒川「私たちはお互い、自分のスピードで自由になれたんだね。自分を認めて、褒めて、愛してたらもうそこに私たちを苦しめるものは何もないんだぜ。」
あやちゃん「だぜ!」
毎日よく頑張って生きてて偉いぞ私たち!
愛らしくて優しくて素晴らしい人間性を持つ我々は人間関係でモヤついたり、ぶつかられることが多い。でもそれはもっと素敵に成長できちゃう出来事として捉えていくしかないのだ。
あやちゃん「おっと、そろそろ行かなきゃいけない時間だ。私このあと横浜まで行ってテントの試し張りしなきゃいけないんだ。」
寒川「なんだその予定。雨も降りそうだし帰ろう!」
帰路、ピクニック部結成?
あやちゃん「鎌倉トレイルはすぐ街にも下りれるから、コーヒー屋さんがある道で帰ろう!」
寒川「なんという気軽さ。このアクセスの良さだからトレイルに人がたくさんいるんだね。」
作ってきたバナナケーキとコーヒーで最高の締め! あやちゃん、最高の時間をありがとう!
寒川「そういえばあやちゃんはピクニックとかする人? 最初にすべき質問を帰り道でさせていただきます。」
あやちゃん「都内に住んでる時はめちゃくちゃやってたよ。なんならピクニック部さえやってたよ。部長だったよ。」
寒川「私は今日ピクニック部の部長とピクニックしてたのか! 光栄です! 何作って持っていってたの?」
あやちゃん「よく作ってたのはキッシュかな。キッシュって特別感があるわりに作るのがとっても簡単なの。パイシートを敷いて、卵液を入れて、焼くだけ! 中身もいろんなアレンジができるし、よく作ってたよ。」
寒川「いいこと聞いた。私も今度作ってみる! だからまた私とピクニッキングに行きましょう、部長!」
あやちゃん「また結成しちゃうか〜!」
気張らないピクニッキング
今回はまた新しいピクニッキングができた気がする。なんとも愛おしい時間になった。気張らない、気を使わないピクニッキング。これでいいのだ、わざわざどこか遠くに行っておいしいものを作って食べるのも楽しいけれど、大切な人と一緒だったらどこでもなんでもおいしくて楽しいのだ。
もし、私のピクニッキングを読んでくれている読者のなかで「どこの山で? 何食べよう?」という計画づくりがプレッシャーになってなかなか腰が上がらない人がいるならば、ぜひ今回のピクニッキングを参考にしてほしい。
いちばん大事なのは誰と行くかだと思う。誰と行くかでご飯の味は変わってくるし、ハイキングの楽しさも変わってくる。どこでもなんでもいいんだよ。大切な人と過ごす時間がいちばん大切なのさ。だからピクニッキングをダシにして、気になるあの子を、大切なあの人を誘ってみてくれよな。きっと最高な時間になるぜ。
今回もピクニッキングプレイリストを作ったので、気になるあの子とのピクニッキングでぜひかけてみてほしい。そして「なんでこの曲にしたのかね」なんて話で盛り上がって仲良くなれることを心から願っています!
次回は誰とどこで何を食べようかな? また次回のピクニッキングでお会いしましょう!
バナナケーキの作り方
今回は、行動食にもデザートにもお土産にもおすすめなバナナケーキの作り方をご紹介します。私自身も、おいしすぎていろんなアレンジをしながら毎週作っています。
◯ 材料(8×18.5×5.5のパウンド型ひとつ分)
・卵(M)1コ
・きび糖50g
・ココナッツオイル30g
・バナナ(熟したもの)正味200g(約2本)
・薄力粉50g
・全粒粉50g
・ベーキングパウダー小さじ1
・お好きなドライフルーツ(お好みで)
・お好きなナッツ(お好みで)
・チョコレート 好きな量
・キャラメルクッキー(お好きなクッキーでも○)
・塩 3つまみ
最後に表面にふる塩は思っているよりも少し多めがおすすめです。ぜひ作ってみてくださいね!