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山と道スタッフの推し道具

大仏研究所スタッフ編2024②:稲見玲雄・渡部隆宏

みんな大好き山道具! 製品開発リサーチャー渡部とバックオフィスチーム稲見の「推し」は?
写真/文:三田正明
協力/李生美
2024.12.06
山と道スタッフの推し道具

大仏研究所スタッフ編2024②:稲見玲雄・渡部隆宏

みんな大好き山道具! 製品開発リサーチャー渡部とバックオフィスチーム稲見の「推し」は?
写真/文:三田正明
協力/李生美
2024.12.06

みんな大好き山道具! というわけで「スタッフの推し道具」2024のラストとなる鎌倉の大仏研究所スタッフ編後半は、製品開発リサーチャーの渡部隆宏と、バックオフィスチームの稲見玲雄が登場。

山と道の製品開発の中枢に関わりつつプライベートでもハードコアな山行を好む渡部と、大仏スタッフでも有数のギアマニアの稲見とあって、一体どんな「推し」が飛び出すのか⁉︎ 今回も編集長三田が根掘り葉掘り聞いてみた。

【連載を読む】

稲見玲雄(バックオフィス)

稲見玲雄 山と道入社1年ながらバックオフィスチームのリーダーを務める。プライベートではハイキング、クライミング、沢登り、トレイルランニングと様々な山遊びにのめり込みつつ、現在は山梨県に在住しリモートワーク+週2日の鎌倉出勤。

ーーでは玲雄くん、山と道の中での役割を教えてください。

役割はバックオフィスチームの何て言うんすかね……リーダーです(笑)。

ーー会社を支える縁の下の力持ちみたいな存在ですね。

そうですね。力になれているか分かりませんが、下から支えられるように頑張ってはいます!

ーーいつもお世話になっています(笑)。

いえいえとんでもないです(笑)。

ーーというわけで、ひとつめの「推し」を教えてください。

テラノバのレーサーコンペティション1です。今は若干リニューアルされて、レーサーコンパクト1っていう名前になっています。

稲見の推し道具① Terra Nova|Laser Competition 1

ーーこれは名品の誉れも高い、結構以前からあるテントですよね。

意外とテン場では見かけないので人と被らないとこもいいし、防風性も高いので気に入ってます。

ーーこれは本当はダブルウォールだけど、それをフライだけで使ってるんですよね?

そうです。軽量なダブルウォールテントを探して買ったんですけど、フライのみで使えるってわかったんで、そこからはもうずっとフライのみでフロアレスのドームテントのようにして使っています。

同じイギリスの老舗テントブランド、ヒルバーグの名品アクトをさらに軽量化したようなデザイン。

ーーテラノバのレーサーシリーズは出た当初は確か世界最軽量ダブルウォールテントみたいな触れ込みだったよね。あの伝説の『山より道具』(2010年前後に大きな影響力を持っていたUL系ブログ)で紹介されてたな。これのさらに前身モデルだと思うけど。

当時はそうですね。1kg切ってて。

ーーなのに結構広い。

フロアレスにするとひとり用にしては広いですね。

インナーを外して更に広々とした室内。

ーーじゃあ玲雄君はもう基本これ?

ソロのときはこれが多いですね。

ーーフレーム入っているとやっぱ安心感ある?

そうですね。けっこう雨風が強いときも、ずっとこの子は守ってくれましたね。

ーー何故かフロアレスのドームテントってまったくないよね。隠れた需要が結構あると思うんだけどな。特に雪山なんてフロアレスだったらブーツのまま入れたり、水作るのも雪を確保しやすくてめっちゃいいのにって思うけど。

なので、雪山でもフロアレスでガンガン使ってますね。自立形のフロアレスって意外とないですよね。これは半自立ですけど、でもちょうどいいバランスで、設営も簡単です。

テントの短辺はポールで立ち上がり、換気口にもなる。

ーーじゃあもう年間通じてフル稼働?

いちばん出番が多いです。もう壊れるまで使おうと思ってます。今は販売していないけどたまにネットオークションで見かけるので、あったら在庫を確保しよかと(笑)。

ーー今のレーサーコンパクト1はどういうモデルになってるの?

ほとんど同じ形だけど、ちょっと重くなってますね。堅牢性を高めたり、居住性を高めたりして重くなっちゃってるんじゃないかな。

ーーまあ、モデファイするごとにお客さんからのフィードバック受けて軽かった道具がちょっとづつ重くなっていくのはあるあるだよね。山と道製品も例外でない(笑)。で、お次は?

ハイパーライトマウンテンギアのスタッフサックピロー。これは使ってる人が多いと思いますけど。

稲見の推し道具② Hyperlight Mountain Gear|Stuff Sack Pillow

ーーこれは枕としても使えるスタッフサックだよね。

そうです。防水性の高いDCF素材なんですけど、内側にフリースが貼られてて、ピローにするときはひっくり返して、使わない荷物とか服とかを入れて枕にするっていう。

ーー自分は山では普通のスタッフサックを枕代わりしているけど、やっぱりこれはいいの?

これを買うまでは自分もずっと適当に余った服をスタッフサックに入れて枕代わりにしてたんですけど、この子に入れることで枕としての形状が安定するし、あとこの接触面が心地良いので、快適ですね。テントの中で着る、濡らしたくない就寝具とかを普段入れておいて、テント着いたら裏返して、枕にするみたいな。

本体は防水性の高いDCF製。

裏表をひっくり返すと内側に貼られたフリース面が出てくる。

ーー山用の枕も空気入れるタイプとか、いろいろあるよね。

これは一人二役でスタッフサックにも枕にもなるから、それで多少軽量化を図れてるかなと。

ーー確かに着替え用の袋はこれいいかもな。

でも、やっぱりしっかりした枕じゃないと寝れないっていうハイカーも多いみたいで、そういう人はちゃんと専用のピローを買って使ってるっていう声は聞きますけど。でも何でもいい人だったら多分これで十分。

ーーではお次は?

はい。5050(フィフティフィフティ)ワークショップのマイクロライトです。これ、こんなに小さいけど、ハンディライトとしてもランタンとしても使えるんですよ。

稲見の推し道具③ 5050 Workshop|Microlight

ーー5050ワークショップは日本のブランド? 

そうです。これを買ったのは山道具屋なんですけど、ブランドとしてはキャンプ系ですね。山に予備のヘッドライト持っていっても使わないシーンが多いから、何かに置き換えられないかなと思ってこれに辿り着きました。これは磁石が入ってるんで、クルマのボディとかにも付けられるし、クリップもあるんで、帽子のツバに付ければヘッドライトにもなる。なので、普段からずっとポケットに入れています。

クリップで帽子のツバ等にも装着可能。

ーーなるほど。これならもしもの時はヘッドライトとしても使えるしランタンにもなるしね。

自転車に乗るときにライトを忘れても、これを帽子につければお巡りさんに捕まりません(笑)。

ーーキーホルダーとしても使えるくらいなサイズ感だし。

重さは20gちょっとかな。明るさも最大で350ルーメンあるから、意外と明るいです。もしもの時でも、ちゃんと使える。

ランタン使用時は昼光色も選べ、最大70ルーメン。

ーーサブライト&ランタンとして確かにこれはちょうどいいかもしれない。かゆいところに手が届く感じだね。

ランタンは必要ないって人も多いじゃないですか。でも、あればあったで夜楽しくなるから、これくらいがちょうどいいなって。

ーーいいっすね。最後はこのポンチョですか?

これはポンチョにもタープにもなるタープポンチョです。イクイノックスのテラピンタープポンチョという製品なんですけど。

稲見の推し道具④ Equinox|Terapin Tarp Poncho

ーータープポンチョは、10年代にはULの代表アイテムのひとつだったな〜。

そうですね。ちょっと濡れて冷えたらやばい時期とか、これ1枚あるとかなり安心できます。ザックごと覆えるし、ちょっと蒸れるけどそのぶんしっかり保温してくれる。

ーー思ったより保温性が高い?

高いです。11月末の信越トレイルを歩いた時に、僕はその時はこれを持ってなかったんですけど、一緒に歩いた相方がこのポンチョを持っていました。強い雨風がビュービュー吹く中、ずっと雨に打たれながら歩いていたんですけど、レインウェアが少しづつ染みてきて、徐々に体温も奪われていったんです。一方、相方は山と道のUL All-weather Jacket着て、その上にこのポンチョを重ねて着ていたんですけど、全く濡れてなかった上に「全然寒くない」って言いながら元気よく歩いていて、それでこの道具いいなぁと思ってすぐに買いました。ちょっと小さいけどタープとしても活用できるのも、遊び道具として好きなポイントですね。

タープにもなるぶん、レインポンチョとしては大ぶりで、バックパックの上から羽織っても余裕なサイズ感。

ーーやっぱりタープよりポンチョとして使うことが多い?

多いですね。タープとしては、例えばワンデイのハイキングでちょっと日差しが強いときに、これをタープにして日陰を作って休むとかやってる方が多いかな。でも僕は、奥秩父縦走を、このポンチョタープでやりたいなぁと思っています。テントは持って行かずに。この時期(11月)とか、ちょうどいいかなと思ってます。

ーーシートゥーサミットにもタープポンチョあるけど、あれに比べるとどうなんだろう。

こっちのほうがちょっと小さいです。シートゥーサミットは長辺がこれより40cmくらい長いんで。

ーーじゃあ、あっちはタープがメインで。こっちはどっちかっていうとポンチョがメインって感じなのかな。

ポンチョだけど最低限のタープにもなりますよ、的な感じですね。でも、なんと言ってもバックパックの上から羽織れるっていうのがいいですね。もう絶対濡れないよっていう安心感。サコッシュにアクセスするときもポンチョの中なら濡れることないし。あと、スナップボタンが付いていて、同じポンチョタープがあれば連結できるんですよ。この道具。

ーーへ〜。

周囲にはスナップボタンやループが付いており様々な使い方が可能。

それを1回友達と試して、連結してその下でふたりで寝たこともあります。拡張性もあって面白い道具です。

ーーシチュエーション的にはどんなときに持っていくことが多いの?

夏は場所によりますけど結構蒸れるので、春とか秋とか、冬の低山とかがメインです。

ーー寒い時期にいいんだ。

保温効果が高いので。

ーーポンチョに関しては保温性の観点で見たことなかったけど、そういう使い道もあるんだね。

なので、自分にはバランスがちょうどいいです。サイズ感と重量(235g)と、ポンチョだけでなくタープとしてもギリ使えるっていう。

わずか235gで、収納サイズも非常にコンパクト。

ーーこのぐらいだったらお守り代わりに持っていくのも全然いいね。

ワンデイのハイキングでも全然負担にならないので、いいかなと思います。

ーー玲雄君、ありがとうございました!

渡部隆宏(リサーチャー)

渡部隆宏 山と道在籍8年目。開発チームのリサーチャーとして、コンセプト開発や素材のリサーチ、調査やテストなどを担う。プライベートではトレイルランニングに傾倒し、国内外の多くのレースに参加する他、個人でもチャレンジングな山行を多く行う山と道きっての「変態」。

ーー渡部さんは山と道ではどんな役割ですか?

リサーチャーというポジションですけれど、具体的にやっているのは製品開発のための素材の情報を集めたり、検査したり分析したり、製品のプロトタイプをテストしたり、そもそもその製品を取り巻くマーケットとか競合品とか、いろんなものを比較検討したり、あとはデータ解析とかもろもろですね。そんなお仕事をしています。

ーー製品開発においてはかなり全方位的にやってる感じですよね。

ですね。初期のプロトタイプを試すのは、今は(代表の)夏目さんと私でやることが多いです。

ーーまさに製品開発の屋台骨を支えるような存在というか。実際に山と道でもいちばんモノに対してマニアックというか、突っ込んで付き合ってる方だと思います。プライベートの山行スタイルもいちばんの変態というか(笑)。かなり挑戦的なハイキングとか旅をされてて、山と道JOURNALにも渡部さんのトレイルログを何本も掲載しているので、ぜひ読んでほしいですね。

最近はあまりそういう旅はできてないんですけど。またJOURNALに載せられるような旅ができればいいなとは思ってます(笑)。

ーーそんな渡部さんですが、1個目は何でしょう?

はい。オンヨネのメリノPPソックスです。でも、これにもう1枚ソックスを重ねたり、防水ソックスを重ねたりして履いてるので、ソックスユニットの一部って感じなんですが。

渡部の推し道具① ONYONE|メリノPPソックス 5本指【薄手】

ーーつまり重ね履き前提で使っているってこと?

はい。これ軽くて、”PP”ってポリプロピレンってことなんですけど、ポリプロピレンが保水しなくてウールも入ってるので臭いもしないし、耐久性も結構あります。インナーで使っているからかもしれないんですけど、結構ガンガン履いてるわりに、ウールは剥離してる可能性もあるんですけどポリプロピレンのおかげか結構長持ちしてて。長いハイキングで二重で履くときのインナーとして使っているんですけど、大体長いハイクの人って足の保護のためにガーニーグーとか塗るんですよ。

ーー潤滑クリームをね。

ええ。でも、この二重システムにしてから塗らなくてもマメができなくなりました。

ーーなんでですか?

マメって、たぶん靴の中で足の皮に摩擦が生じてできるんですけど、二重にすると足の代わりに外側と内側のソックスの間で摩擦が起きてくれて、マメができないんですよ。

メリノPPのソックスシリーズにはロングや他にもショート、中厚手や薄手、5本指タイプや通常タイプなど、様々なモデルがある。

なのでクリームって、ソックス脱いで塗ってみたいなのも面倒くさいんですけど、ノートラブルで40時間とか行動しても大丈夫なんですよ。

ーー40時間行動し続ける人もあまりいないと思うけど(笑)。これは1枚でも履きますか?

あんまりない。夏でも2枚ですね。

ーーこれってインナー用ではないですよね?

多分そんな明言はしてないと思います。薄手で5本指でっていうのを探すと、これかインジンジか、ファイントラックのやつか、そのぐらいしか見つからなくて。インジンジはウール入りだけどちょっと丈が長くて、インナーだけどアンクル丈のソックスより出ちゃうサイズ感で、僕にはあんまり塩梅も良くなかったので、これがいちばんインナー用としてもいいかなという感じで、愛用してます。

ーーソックスでポリプロピレンって、珍しくないですか?

珍しいと思います。軽いし、保温性も高いし、保水もしない素材なんですけど。

白い部分がポリプロピレン、グレーの部分がメリノウールと思われる。

ーー(オンヨネのサイトを見ながら)「水を含まない繊維ポリプロピレンと呼吸する繊維メリノウールを始め複数の繊維を独自開発の構造で組み合わせ、それぞれの機能が持つ性能を引き上げながらデメリットを解消する」だって。

だから2枚重ねにすると、外側に履いたソックスはびしょびしょになるんですけど、中は結構ドライなんですよ。ドライマックスっていう内側だけ疎水になってるソックスがありますけど、あれを重ね履きでやってる感じですね。

ーーじゃあ夏でも2枚ですか?

ロングのときはシューズもデカめにして、もう最初から2枚でいきますね。サンダルとかでない限り、どうせシューズを履いてれば足は暑くなるので、これを2枚履いても吸湿してくれるし通気もいいので問題ないです。

ーーこのメリノPPと防水ソックスを組み合わせるときもあるんですよね?

あります。天気が悪くなるって分かってるときは、ゴアテックスのシューズだと水が1回入ると乾かないので、防水ソックスの方が断然快適ですね。

ーー断然ってほど快適か〜。

渡部がよくやる組み合わせ。メリノPPソックスの上にウールのソックス(中)を重ねたり防水ソックス(右)を重ねたり。

知り合いにも教えたら、2日間の雨のトレイルレースでも、この防水ソックスで快適だったみたいです。防水ソックスって、調べても代表製品があんまり出てこなくて、これもAmazonで適当に買ったやつなんですけど、ただ、このデックスシェルは、業界の中でも大手なのかなっていう感じで。これまで水が入ってきたことはないですね。

ーーじゃあ渡部さんは基本的にメリノPPは欠かせないと。

そうですね。プラスほにゃららって感じで、これで足の対策にしてるっていうところですね。

ーーなるほどいきなり良い情報! で、2個目はどれにしましょう。

2個目は、ちょっとこれも珍しいと思います。ピップのプロフィッツの手首用なんですけど。

渡部の推し道具② ピップ|ProFits 手首用

ーーこれはサポーターですか?

ベルクロで止めるタイプの包帯というか、バンテージですね。私、むかし格闘技やってて、手首とかを痛めたときに、これを応急処置グッズ的に使ってたんですけど、山だと大体三角巾とかがレスキューセットに入ってたりするんですが、意外とあれって使いこなすのが難しいなと思って。

こちらはプロフィッツの手首用。他にもヒザ用や足首用などもあり。

ーー(プロフィッツのサイトを見ながら)サポーターの他にも加圧タイプやコンプレッションウェアとかテーピングまで、いろんなシリーズがあるんですね。

そうです。テーピング1本のものがいちばん汎用性があるかなと思っていて。実際に去年、高尾から人と長く歩くハイキングをやってて、草戸山の手前あたりで岩に擦って脛を切っちゃったんですよ。10センチぐらいの傷ができて、絆創膏とか手ぬぐいだと止まらないぐらいの血で。そのときは多分これじゃないと止血できなかったと思うんです。これ、締めるとめっちゃ強いんですよ。

ーーへ〜。

絞めるとかなりのフィット感でサポートしてくれる。

それで締めて血を止めて、そのまま山を下りたところの病院に行って、9針縫ってもらってまた仲間に復帰できたぐらい、そのぐらいちゃんと行動させてくれたっていう。あとザックのショルダーに付けてたボトルホルダーが壊れて外れちゃったときも、これで根っこを止めたりとか、意外といろいろ使える。

ーーテープとしても使えるんですね。

なので1個あると汎用性が高くて、去年の脛を切った事件以来、救急セットに必ず入れてます。これは持ってて良かったと思って入れてる道具ですね。何かあったときにダクトテープと手ぬぐいとかだけで何とかできる人も少ないのかなと思っていて。足をひねっちゃったときも1個あると安心だなと思ってます。

ーーさすがハードコアなセレクト! じゃあ、お次は何でしょうか?

ファーストエイドグッズばっかりになっちゃうんですけど、これは絆創膏の一種で、ハイドロコロイドっていう傷口を乾燥させないで、濡らしたままにして直すタイプの絆創膏で、ニチバンのハイコロールという製品です。

渡部の推し道具③ ニチバン|ハイコロール HCR50

ーーグジュグジュな状態を保ちながら治す、みたいな?

そうです。バンドエイドが出してるキズパワーパッドもそれで、傷を覆って濡らしたまま治すのは、「湿潤療法」っていうんですけど、湿潤療法用の素材がハイドロコロイドだという理解です。私、怪我がすごく多いんですよ。今年の夏も数え切れないぐらい転んで、膝とか肘とかいつも擦り傷があるんですけど、やっぱりキズパワーパッドが治りも早いし綺麗だし痛みもないので、怪我するたびに買ってたんですけど、まあまあ高いですし、結構不経済だなと思って。何かいい代替品ないかなと思っていたら、これを見つけたんです。

ーーじゃあキズパワーパッドがロールになってるみたいな感じなんだ。

キズパワーパッドと同様のテープが50mm x 5mのロール状になっている!

そうです。キズパワーパットロールですね(笑)。50mm × 5mで3,000円くらいだけど、キズパワーパッドだと多分、ジャンボサイズを10枚ぐらいしか買えない。それでもう、めちゃめちゃ経済的だなと思って。あと、この広さがやっぱり必要なんですよね。肘とか膝って大体幅10cmとかで擦り傷ができるので、キズパワーパッドのジャンボサイズでも1回で2枚使ったりするんですよ。これだとカットして貼ればいいので無駄が出ないし、大きい傷にも対応できる。これも山グッズに入るのかどうか分からないんですけど、私の山行には欠かせない道具ですね。一応「未滅菌品ですので傷口には直接貼らないでください」という注意があるんですが、自分は自己責任で使ってます。

台紙を剥がすキズパワーパッドと同じハイドロコロイドの面が出てくる。

ーー渡部さんみたいに傷だらけになる人にはおすすめですね。これは渡部さん自身が見つけたんですが?

そうです。薬局でキズパワーパッドだけで会計5,000円とかになって、さすがに高いなと思って。これだったらワンシーズンはもちます。

ーーさすがのリサーチ能力(笑)。

いえいえ。これはいい探し物をしたと思います。

ーーで、3つ目は何になりますか?

次は普通の山道具を紹介します。ヘッデンですね。ペツルのナオRLです。

渡部の推し道具③ PETZL|NAO RL

私は夜の行動が結構多くて、なんなら走るときもあるので、やっぱりライトが暗いと危険なのもあるけど、眠くなるんですよ。ボヤッとした光って。

ーーなるほど。眠気を誘うというか。

光量が豊富だと目も覚めるし、夜間行動にいいので。これ最大で1500ルーメンあるんですけど、普通のヘッデンなら600ルーメンでもかなり明るい方です。1500ルーメンで使ってると電池そんなにもたないですけど、これはセンサーが搭載されてて、物が近くにあると自動で光量を低く調節してくれるので、バッテリー消費の無駄が少ないんですよ。

ーーへぇ〜。しかもこの手のハイパワーのライトにしては、ずいぶん軽そうですね。

軽いです。バッテリーが80gぐらいで、本体は確か70g台じゃないですかね。合わせて145gしかない。

ーーこのベルトの構造もすごいですね。

シンプルだけどすごくフィットするし、キャップの上からでも、素の頭に被っても違和感がないんですよ。走ってもずれないし。

フィット感が高く、かつミニマム・デザインのベルト。

ーー普通この手のハイパワーなライトだと軽さよりもフィット感とか堅牢さを意識してそうだけど、それでも切り詰めてる感じがあっていいですね。

他社さんのモデルも、特にトレランの世界で定番と言われてるライトがいくつかあるんですけど、自分にとってはバッテリーとライトの重量バランスが悪く感じたり、公称ほどバッテリーがもたなかったり、意外とそんなにみんなが勧めるほどでもないな、と思うのが多いんです。でもナオRLはフィット感もいいし、光量を調整してくれるから公称よりバッテリーがもつ感じなんですよね。私はバッテリーの交換なしで42時間ぐらいのレースをいけたから、多分20時間以上は使えてるんですよ。予備バッテリーも持って行きましたけど。

ーー20時間はすごいですね。42時間のレースもすごいけど(笑)。

光を絞れば全然いけますね。充電もUSB-Cでできるので楽ですし、これは結構名品だなと。

ーー点灯させると後ろがバックライトとして赤く光るんですね。

いわゆる後ろに対する警告灯です。だからすごくいろいろ考えられてるし、1,500ルーメンの時とかもすごいっすよ。ZZガンダムみたいにおでこからビームが出る感じで、もう切り裂くような光ですね。

ーーすごいな。

ペツルのライトはどれもいいと思うんですけど、これは本当にいい買い物しました。正に推し道具ですね。小さいライトを予備で持って行くぐらいなら、これと予備バッテリー持っていったほうがいいくらい。結局これが良すぎて、これしか使わないことが多いんですよ。あとはぺツルのライトって大体スタッフサックが白くて、ライトに被せるとランタンみたいになるんですけど、これも何気に便利で。

付属のスタッフサックが白いので被せるとランタンのように使える。

ーー気が利いてる。さすがペツルって感じですね。この10年ぐらいって、LEDライトとバッテリーの進化が凄まじいものがあったと思うけど、それがそろそろ高止まりしてきたって感じなのかな。

結局バッテリーの進化次第っていう気はしますね。ペツルの欠点って、バッテリーが専用なんですよ。他社さんは汎用性のあるバッテリーだったりするんですけど。でもやっぱり専用設計だからこういうことができるのかなっていう気はしますね。すごく考え抜かれてる名品だと思います。

ーーで、最後はこちらですか。

そうですね。いわゆるチェーンスパイクで、ブラックダイアモンドのディスタンススパイク・トラクションディバイスです。

渡部の推し道具④ Black Diamond|Distance Spike Traction Device

ーーチェーンスパイクにも今はこんなに軽いのあるんだ。自分は昔ながらのゴムのアッパーのチェーンスパイクでずっと止まってるんで結構びっくり。

片足300gぐらいあるやつですね。これは作りはデカめですけど、重さは片足120gくらいです。私、雪山ってほぼ行かないんですけど、残雪期とか、ゴールデンウィークでも高山だと氷が残ってたりするので、何かしらスパイクを持って行くんですけど、いろいろ試した中でこれがいちばんずれないんですよ。シューズの先っぽをそのままこのファブリックで覆うような構造になっていて、そこと後ろのゴムで両方固定するので。

フィット感に優れるソフトシェル製アッパーと堅牢なステンレス製のスパイク。

なので、ダウンヒルを走ってもほぼずれない。他のチェーンスパイクは周囲が全部ゴムで着脱が大変だったりするけど、これはかかとのストラップを引っ張るだけでめちゃめちゃ簡単に脱げるわりに外れにくいので、すごく機能的だなと思ってて。これより軽いのもいっぱいあるし、ブラックダイヤモンドにももっと軽量で簡素なのもあるんですけど、結局そういうのって途中で脱げちゃったりしてイライラすることが多いので。もうこれ1択になりました。やっぱり実用性で考えるとこっちだなって。

かかとのウェビングループを引っ張ることで簡単に脱着できる。

ーーほんと、こういうニッチなアイテムも日進月歩してますね〜。

そうですね。あと、以前ヴァーゴがチタンのスパイクを出してて、あれは軽かったんですけど、やっぱりチタンってそんなに強くないと思うんですよね。やっぱステンレス刃の方がガシガシ歩けるかなっていう気はします。自分は行くのが厳冬期じゃないんで、そうなると結構岩と氷のミックスだったりするので、ステンレス刃の方が安心ですね。

ーーいや、渡部さんらしいさすがのセレクションでございました。ありがとうございました!

三田 正明

三田 正明

フォトグラファーとしてカルチャー誌や音楽誌で活動する傍、旅に傾倒。 多くの国を放浪するなかで自然の雄大さに惹かれ、自然と触れ合う方法として山に登り始める。 気がつけばアウトドア誌で仕事をするようになり、ライター仕事も増え、現在では本業がわからない状態に。 アウトドア・ライターとしてはULハイキングをライフワークとして追い続けている。 取材活動のなかで出会った山と道・夏目彰氏と何度も山に行ったり、インタビュー取材を行ったり、酒を酌み交わしたりするうちに、いつの間にかこのようなポジションに。 山と道JOURNALSを通じて日本のハイキング・カルチャーの発展に微力ながら貢献したいと考えている。

連載「山と道スタッフの推し道具」