山と道スタッフの推し道具

大仏研究所スタッフ編2024①:三田正明・中村純貴

みんな大好き山道具! 編集長・三田とスタッフJKの「推し」は?
写真/文:三田正明
協力/李生美
2024.12.04
山と道スタッフの推し道具

大仏研究所スタッフ編2024①:三田正明・中村純貴

みんな大好き山道具! 編集長・三田とスタッフJKの「推し」は?
写真/文:三田正明
協力/李生美
2024.12.04

みんな大好き山道具! というわけで、前回の山と道HLCアンバサダーの「推し道具」に続き、今回は山と道本部である鎌倉の大仏研究所スタッフ編。

その前編となる今回は、この山と道JOURNAL編集長の三田正明と、YouTuberとしても活動するスタッフJKこと中村純貴が登場。かたや日本ULシーンの生き字引、かたやロングディスタンストレイル経験も豊富なUL系YouTuberのふたりとあって、どんな「推し」が飛び出すのやら。三田がJKに、JKが三田に、それぞれ根掘り葉掘り聞いてみた。

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中村純貴(海外コミュニケーション/YouTube担当)

中村純貴 山と道在籍7年で、様々な役職を担ったり、途中半年ほどCDTに挑戦するため休職しつつも、現在は主にYouTubeと海外コミュニケーション担当。CDTの他PCTも完歩したロングディスタンスハイカーであり、個人としてもYouTubeチャンネル『HIKER TIME』を運営中。渾名はJK。

ーーではJKこと中村君の山と道での役職を教えてください!

海外コミュニケーション担当で、山と道YouTuberとしても活動しております。

ーー最近、YouTube活動を頑張っておりますね。

はい。お陰さまで山と道チャンネルも最近、登録1万人を達成しました!

ーーぜひチャンネル登録と高評価をよろしくお願いします(笑)。ということで、早速「推し道具」を紹介してほしいんだけど、これは何でしょうか?

香港のオンスデザインっていう、僕がPCT(パシフィッククレストトレイル)歩いてた時の友人がやってるメーカーのワンパーソンシェルターです。

JKの推し道具① Ounce Design|1 Person Shelter

ーーPCTで会ったんだ。

PCTの同期で、めちゃくちゃウルトラライトなハイカーなんですけど、そんな彼が他に類を見ないテントを作ったってことで。去年、僕がCDT(コンチネンタルディバイドトレイル)を歩いている道中にプロトタイプが完成したんで、送ってもらって、ちょっと使わせてもらったんです。タイプとしてはワンポールテントになるんですけど、入口にジッパーがないんですよね。

どこにも入り口がない⁉︎ 独創的なデザイン。

ーーこれ、中に入るときはどうするの?

入口の面が実はバンジーコードでちょっと圧縮されてるんですけど、それをゆるめてくるくる巻いていくと、上にこうまとまる。で、もぞもぞして、中に入っていくみたいな感じ。

入口面にはバンジーコードが入っており、それを引くことで生地のたるみを防いでいる。

バンジーのコンプレッションを解き、ロールアップするとボトム部が開く構造。また、ロールアップせずに入り口面中央にポールを立てることでタープ的にも使うことができる。

ーーこの手のシェルターって欧米だと「タープテント」なんて呼ばれるけど、本当にタープとテントの中間って感じだね。

なんで、入口がちょっと狭いんで少々面倒くさく感じる人はいるかもしれないですけど、ジッパーのぶん削ってるっていうとこにウルトラライトな精神を感じてぐぐっときて。CDTの道中は2,500キロぐらいこれで歩いたんですけど、問題なく使えました。

ーーベンチレーターがないね。

そう、ベンチレーターは削られてますね。だから結露するときはしますね。

ーーでも、この思い切ったデザインはなかなかないね。

そうですよね。

ーーこれは何グラムぐらい?

165gですね。

ーーZパックスのヘキサミッドとかと並ぶような感じだ。

そうですね。Zパックスと同じぐらい。でも、多分こっちの方が広いですね。

ーーオンスデザインって一応ウェブサイトもあるんだけど、本当にめちゃくちゃ適当な感じの作りで(笑)。

そうなんすよ。

ーーあれも面白いなって思った。

彼はね、自分が遊べないと嫌なんで、基本的にお金ができたらまたアメリカ行ったり、日本来たりとかして、またお金なくなったらテント作って受注受けてみたいな、そんな感じでやってますね(笑)。

ーーこないだの香港でのポップアップの時にも来てくれてたけど、面白いキャラしてたよね。

そうっすね、ちょっと香港のハイカーの中でもいい意味で変態チックな感じで(笑)。

2024年の山と道morimoriポップアップイベントにて、右端がオンスデザインのシンクレア。その隣がラン/ハイクブランドblackhillのサ、中国版『GO OUT』編集長のケネス、HIKE EXITを運営するインフルエンサーのミルク。

ーーこれはどうやったら買えるの?

基本は彼にサイト経由で直接DMしてって感じみたいです。でも多分ひとりで作ってるので、時と場合によってはちょっと受注できないこともあったりとかすると思うんで。「欲しいんだよね〜」ぐらいな感じのテンションで、とりあえず連絡してみるのがいいと思います。喜ぶと思います。

ーー香港もね、面白そうなブランドがいっぱいあるしね。

増えてきてますよね。

ーー日本や韓国なんかのブランドとも違う独特な世界がある。

おっしゃる通りで、もっと注目してほしいですよね。

ーーでは次は?

はい。山道具ではないんですけど、アンカーのモバイルバッテリー、ナノパワーバンクです。

JKの推し道具② Anker |Nano Power Bank

ーーもはやバッテリーは山道具の必携装備みたいなもんだからね。

5年前くらいから充電器関連は国内外どこでもアンカーのバッテリーをよく見かけると思うんですけど、僕は1回ちょっと離れたんですよね。だけど最近、USB-Cが統一企画になってきていろいろ楽になったってのがあって、また舞い戻ってきたんですよ。今までスマホとかライトとか、ハイキング中に充電しないといけないものが、給電ジャックがマイクロUSBだったりライトニングだったりで、バラバラだったじゃないですか。

ーースマホ用とライト用とイヤホン用で3種類くらいケーブル持ってったりとかね。

で、間違ったケーブル持ってっちゃったりよくしてたんですけど、今はもうUSB-Cのケーブルが1本あれば事足りるなっていうことで、去年CDTへ行く前に、もう電子機器はUSB-Cに全て統一したんですよね。

ーーそこは楽な方がいいもんね。

めっちゃ楽になりました。その中でも最近使ってていいなと思った充電器がアンカーのこいつで、USB-Cの端子が付いてるから、ケーブルがなくても直接そのままバッと充電できる。

USB-Cの端子の他、入出力可能なジャックも付いている。

ライト等への充電もすっきり。

ーーそれはいい!

そう。思い立ったときにすぐ取り出して、ぱって充電できるっていう。このスピード感がすごく好きで、これだったらウエストポーチとかにも入れてても、そんなに重くないんですよね。

ーーこれは何mAなの?

5000mAなんで、日帰りとか、1泊2日ぐらいに良いサイズですね。

ーーじゃあ、1回はiPhoneフル充電できる感じね。USB-Cのジャックも付いてて、そこからもインプットとアウトプットできるんだ。

そうです。ケーブルがないから全体的にコンパクトに収まって、それがテントの中でも楽ですね。

ーーケーブルはなんだかんだ煩わしいもんね。

なんで日常生活も含めて使い勝手がいいなっていうアイテムで。電子機器系を全部USB-Cで充電できるようにしたんで、だいぶ楽になりました。

ーーでは次は?

はい。トランギアのケトル0.6Lです。僕、もうここ3〜4年ぐらいはずっとケトル使ってて。

JKの推し道具③ Trangia|Kettle 0.6L

ーーこれはどういう感じで使っているの?

僕、食事のスタイルがクッカーで調理することはあんまりなくて、基本的にはスモールツイストさんとかアルファ米みたいな、お湯を注いで戻す食事だけなんですね。で、その袋を再利用して、自分で野菜とか入れてラーメン作ったりするんです。なんで、自分のスタイル的にはもうお湯沸かすだけでいいなって。だったらやかんの方が注ぎやすいし、道具としてそれしかできない振り切った感じがなんか好きで。

ーー軽くはないけどね。

ちょっと重たいんですよね。130g。チタンのクッカーなら70gぐらいじゃないですか。だけど、お湯が沸くスピードはこっちの方が早く感じるんですよ。底面が広いし。

ーーそうかもね。

まあ、湯沸し道具としては使いやすいっていう。あと、みんなでハイキング行く時とか、コーヒー淹れる人いてたりするじゃないすか。そのときにケトルあると便利だったりして。なんで、なかなか手放せずにいてますね。

ーーこの赤いカラーはレギュラーで出てるやつ?

これは山形のアウトドアショップDECEMBERさん(現在はアウトドアメーカーDais Design & Fieldとなり、実店舗は土日のみ営業中)とコラボした赤に塗装されたモデルです。これ、アメリカに持っていったときは、みんなからめちゃめちゃチヤホヤされましたね。「その手があったか!」みたいな。

トランギアの定番ケトルだが、赤いカラーはDECEMBER別注のレア品。

ーーじゃあもう鍋はこれ1個でクッカーは持たないんだ。

持たないですね。あと、僕はハイパーライトマウンテンギアのリパックっていうコジーをこいつのケース代わりに使ってるんですけど、さっき言ったみたいにアルファ米の袋を再利用してラーメンとか作るときに、このコジーのおかげで最後までずっと温かい状態で食べられるんですよ。寒い時も裏面に手を入れるポケットが付いてて、ハンドウォーマーになりつつ、自分の体温もちゃんと使いつつ食べることができる。コジーは他社さんでもいろいろ出てるけど、これは使いやすさとか、早く戻せるとか、保温できるとか、いろんな面で理にかなっている。

ーーこれはいつもセットで使ってるの?

そうですね。この背面のポケットにアルファ米のパッケージも一緒に入れて使ってます。あと、僕このシステムで好きなんが、クッカーを洗わなくていいんすよ。中にお湯入れてちょっとゆすいで、まだ残ってるだしとかスープとか飲んじゃえばいいだけなんで。そういうところとかもいろいろ考えると、道具って1個づつ見るんじゃなくて、やっぱ組み合わせが大事だなって。なので、今はかなりこの使い勝手が来てますね。

ーークッカーやアルファ米袋を洗う/洗わないの話は、デリカシーの問題じゃないかと思うけど(笑)。では最後は?

このバッグです。テスコっていうイギリスのスーパーマーケットのエコバッグなんですけど。

JKの推し道具④ Tesco|Bag for Life

ーーこういうのはハイカー大好物アイテムだね(笑)。

これ、割と分厚くて、ちょっと大きいんですよ。取っ手が付いてるところも含めて、結構使い勝手がいい。テント場で荷物が散らばったりしてるのをこの中にまとめて一気に移動させたり、あとちょっと雨降ったりしても、プラスチックバッグ(ビニール袋)なんでMINI2のメッシュポケットに入れてレインカバーとして使ったり。

ーーこれは見つけた瞬間「うお!」みたいな?

ですね。「テスコプロテクション」と呼んで重宝してます。

ーーこれはイギリスのスーパーだとよくあるやつなの?

多分よくある形なんだと思います。

素材は厚手のリサイクルプラスティック製で意外と頑丈。

ーーこれは買うの?

買いますね。でも「10ペンスバッグ」とも呼ばれてるみたいで、日本円で15円ぐらい。でも中身も見えるし、ハイク中に温泉行ったりするときも便利だし、畳めばめっちゃちっちゃくなるし、スタッフサックはメーカーさんが売ってるものも良いのあると思うんすけど、僕はこれぐらいの金額で、これぐらい雑に使ってもいいものの方が好きで。

ーーまあ、それがUL魂だよね(笑)。(10ペンスバッグについてサイトで調べながら)「テスコはこれまでで売ってた使い捨ての5ペンスのバッグを廃止して、一生使える(Bag for life)10ペンスのバッグを発売した」だって。へ〜。こういう安くて使えるのって、正にULアイテムって感じ(笑)。

だからあんまりアウトドア用品で買うものよりも、何か他のところから持ってきて、「これ使えんじゃん」ってなる方が、やっぱり三田さんのチープハイクじゃないですけど、好きですね。

ーーだよね。さすがHIKER TIMEなJKセレクト、ありがとう!

三田正明(山と道JOURNAL編集長)

三田正明 山と道関わって9年目の山と道JOURNAL編集長。ライター/フォトグラファーとしても活動し、特に日本のUL史やガレージブランドについては造詣が深い。プライベートではハイキングはもちろん、自転車も大好き。

ーーはい、では役職とお名前を教えてください。

山と道JOURNAL編集長、三田でございます。他の人には自分がインタビューしてたけど、ここでは自分の「推し道具」を紹介させてもらうので、JKに逆に話を聞いてもらってます(笑)。

ーー根掘り葉掘り聞いていきたいと思います(笑)。

で、自分は毎年雑誌のPEAKSで1年に1回、日本のガレージブランドのその年のトピックを紹介する記事を作らせてもらっているので、今回はそんな国産のガレージブランドしばりで紹介していきたいと思います。じゃあひとつ目なんだけど、最近、『Photo & Market』ってイベントに出店した時に見つけた迷迭香(マンネンロウ)のデイリーコーチジャケット

三田の推し道具① 迷迭香|MJK-4B DAILY COACH JACKET 2024

ーー触り心地がなんかふわふわしていますね。

裏地にテイジンのアクティブインサレーション素材のオクタcpcpを使ってるんだよね。なんで、山と道で言ったらLight Alpha Vest/Jacketのコーチジャケット版みたいな感じかな。重さも280gでだいたい一緒だし。

ーー一瞬、Taslan Coach Jacketかと思いました。

コーチジャケットは山と道にもMerino Coach JacketとかTaslan Coach Jacketがあって、それもいいんだけど、オフィスでめっちゃかぶるじゃん? でもコーチジャケットは好きだからずっと探してて、これは見た瞬間、仕様が色々ちょうどいいと思って、ひと目ぼれして買った。

デザインはシンプルなコーチジャケット。

ーーここはポケットなんですか?

右脇に引き出し式のポケットが付いてるんだよね。迷迭香はパンツにも同じようなポケットが付いてて、ブランドのアイコン的な存在だと思うんだけど、デザイナーさんが庭仕事が好きなんで、そういうときに使いやすく考えられたらしい。このポケットが秀逸で、袋を中に入れて普通のポケットとしても使えるんだけど、結構なんでもガンガン入れられて、入れてもバランスが良い位置にあるのかそんなに物を入れてる感がなくて、バックパックとも干渉しない位置にあるから、なかなかの発明だと思う。

右脇の大容量ポケットは2気室になっていて、一方を外に出しても、両方を中に入れても使える。

ーーちょっと特殊なポケットですね。ギミックが面白い。

迷迭香って基本的にはアパレルブランドみたいなんだけど、機能性も重視してて何なら山でも快適だよ、みたいな。最近、こういうアパレルとアウトドアの中間を行くようなブランドが増えてるよね。そういう流れを象徴するアイテムとして紹介させてもらいました。

ーー袖にボタンがついてたり、細かいところが気が利いてる感じしますね。

シルエットも絶妙だし、やっぱどこかアパレル畑の人が作っているなって感じがあるよね。

ーーあと、フロントがスナップボタンだから、暑かったらお腹のところだけ開けたりとか、換気しやすそうなのもいいですね。

裏地は肌触りの良いオクタCPCP。表地は防風撥水加工を施したワッシャーナイロン。

メーカー非公認だが、右脇のポケットにパッカブルに収納できる。

まだ買ったばっかで、近所の緑地を散歩する時とか自転車に乗る時くらいしか着れていないんで、実際の使用感はそこまではわかんないけど、とりあえずは軽いし防風もするし通気もするし、なかなか良い感じ。Light Alpha Vest/Jacketより表地の防風性が高そうなんで、そのぶんちょっと暖かくて、ちょっと蒸れる感じかも。でも、こういうアパレル側からの所謂ハイカー的なシーンへのアプローチは、これからもいっぱい出てくるんじゃないかな。

ーー確かに。流れとしてはちょっと新しいですね。

やっぱり機能的で楽で気持ちいい服の方が良いもんね。

ーー他は何かありますか?

お次は、これは久々に感動したプロダクトなんだけど、一二(じゅうに)の包(パオ)Sackです。

三田の推し道具② 一二|包Sack

ーーこれは昔からあるやつですか?

最近出たみたい。一二は高知県ベースで山にも使える生活着を主に作っていて、一二の洋品店ってお店もやってるよね。今年、北海道のEZO(Enter Zone Outdoor)ってイベントに出店した時に一二も出てたんで見つけたんだけど、これは今はイベント出店とかだけで売ってるらしい。これはシルナイロンだけど、DCFのモデルもあった。

ーーこれは風呂敷みたいになっているんですか?

そうそう。風呂敷状になっていて、もうガバッと広げられる。

トップの巾着を解放すると…

ガバッと開く。

ーーうわー、これはいいですね!

そう、これはいいでしょう。前に『ウルトラライトパッキングのすすめ』でも書いたんだけど、俺はバックパックの中をスタッフサックで3層構造にして、いちばん下にダウンとか寝袋のスタッフサック、中断に着替えにスタッフサック、それでいちばん上は大きめのスタッフサックに食料とかクッカーとかバッテリー関係とかエマージェンシーとか、何でもかんでもとりあえず使いそうなものを全部入れるっていうスタイルなんだけど、前に使ってたZパックスのフードバッグがもういい加減ボロボロになったんで、なんかいいのないかなって探してたんだよね。

ーーこれはバックパックの中に入れても、柔軟に隙間埋めてくれるような感じもして、良さそうですね。

ガバッと開くから、食料とか探すのも楽。

ーーああいう袋って、一回ガサガサ中を見ないといけないですしね。これはテン場でも楽ですね。

開くと丸い1枚の布。

ワンアクションで素早く開けられる構造の開口部。

テン場で広げるたびに、「これはいいな〜」っていつも思ってる(笑)。サイズも大中小3種類あって、これはいちばん大きいやつ。長いヒモで肩からもかけられるし、見た目もかわいいし、もうひと目みて「俺が欲しかったのこれだ!」って思って、買わせてもらいました。一二はやっぱりオリジナリティがすごいと思う。彼らが作ってるアパレルもさ、彼らのライフスタイルとか売り方とか、全部が繋がってるなって感じでさ。

ーー確かに。

男女兼用でワンサイズしか出さないのとか、ほんと頭いいなってと思うもん。アパレルなんてさ、サイズ展開とかカラー展開したらほんとSKUがとんでもないことになって、地獄を見るわけじゃん? そこをデザインからワンサイズで誰でも着れるものを作って、それがちゃんと支持されているのはすごいと思う。で、余裕ができたぶんで夫婦で旅をしてたりして。

ーー素晴らしいですね。

まあ、そんなとこも含めて、これには結構久々感動したな。

ーー次はどれですか?

まあ、私が紹介するまでもない有名製品だと思いますけど、TMRインダストリーのWRクッカーです。

三田の推し道具③ TMR Industries|WR Cooker

ーーこれはとにかく沸騰速度が早いんですよね。

とにかく早い。

ーー底がジェットボイルと同じような機構になってる感じなんすよね。

アルミの削り出しによる驚愕の仕上げを誇る底面。熱を受け止める場所を多くすることで素早く沸騰する。

やっぱ沸くの速いし、軽いしさ、使ってるとちょっと他のを使う理由が見いだせなくなっちゃうね。早く沸くぶん燃料も節約できるし。

ーー山の生活の中でいうと、そこは大きな差になりますよね。

毎回沸かすたびに「もう沸いた」って思わせてくれるから、やっぱりそれは気持ちいい。でも、なぜか純正でフタがないんだよね。あと取手もついてないから、そのへんをどうするかっていう提案込みで今回は紹介したいなって。

ーーこれはどこのフタ使ってるんですか?

これエバニューのmulTiDishっていう、エバニューのクッカーのフタにもなるチタンの小皿。まあぴったりじゃないけど。

ダクトテープの取手を付けたmulTiDishをフタがわりに。

ーーまあまあ合ってる方じゃないすか? これぐらいの差やったら。

パチンとはまるくらいなら良かったんだけど、惜しい。でもmulTiDishにも取手がないから、こないだのHLCアンバサダー編の『推し道具』でHLC北関東の廻谷さんに教えてもらったアイデアをパクらせてもらって、ダクトテープで取手つけた。

ーーいや、素晴らしい。

このアイデアめちゃくちゃいいよね、流石めぐりんって感じで。

ーーこれは結構UL的ですね。

で、クッカーにもハンドルがないぶん何を使うかってことで、断熱材にシリコンバンドとかカーボンフェルトを巻くっていう手もあるけど、このカモフラージュテープを使ってみた。

ーーこれはシームシーリング材なんかも作ってるギアエイドのやつなんすね。

そう。ギアエイドのカモフォームテープというやつ。実はこれも瓦奇岳で紹介されてたアイデアの丸パクリなんだけど(笑)。これ、本当はライフルとかナイフとかを保護しつつカモフラージュ柄にするもので、粘着テープじゃなくてこれ自体でくっつく仕組みになってるから、貼ったり剥がしたり何度も使える。で、二〜三重にして巻くと意外と断熱性が高くて、お湯を沸かしたクッカーを持っても意外といける。

ーーそうっすね。TMRさんはハンドルも売ってますけど、でも直に持てる方が楽っちゃ楽ですよね。

自分はやっぱりものを増やしたくないから、ハンドルとかもできればない方がいいなっていうので。まあカーボンフェルトでもいいけど、こういうのもあるよっていう。

2〜3週巻くと十分な断熱性が。

ーーちょっとイカしますよね。

何に巻いてもかっこよくなりそうだよね。ほんとはカモフラ柄じゃないのもあったら嬉しいけど。

ーーこれちょっと僕の充電器に巻こうかな(笑)。

それもありだね。

と、思ってたら、取材後にエバニューのTi Mug pot 500のフタがパチンとはまるほどのシンデレラフィットであることを発見! このためにTi Mug pot 500を購入するほどではないけれど、両者を持っている人にはかなりおすすめの組み合わせ。これにて三田のWR Cooker完成!

ーーで、最後は?

はい。ペデストリのプアブランケットターボです。

山本の推し道具④ Pedestri |Poor Blanket Turbo

ペデストリはさっきも話に出た栃木の瓦奇岳と仲が良いブランドで、販売も瓦奇岳かイベント出店でしかやってない、インスタのアカウントしかない謎のブランドって感じなんだけど。

ーーこれは寝袋ではないっすよね?

寝袋じゃなくて化繊のブランケット。キルトよりもちょっとちっちゃい。で、周囲にスナップボタンがいっぱい付いてて、いろんな使い方ができる。

ーーちょっと掛け布団にしてもいいし。

スカートみたいに巻いてもいいし、肩からかけてポンチョみたいにもできる。

腰に巻いてスカート状に。

肩からかけてジッパーを閉めるとポンチョ風にも。

ーーこれはどういう場面で使います? 

これは比較的暖かい時期の低山ハイクとかバイクパッキングのときに寝袋代わりとして持ってくかな。

ーー夏に寝袋使うまでもないなみたいなときに、あったらいいですね。

ダウンジャケットの代わりにもなるしね。

ーー重さは200gぐらいですか?

200g切るぐらい。またここにジッパーが付いてて、閉めてバンジー引いたら、ちょっとフードっぽくできたり。

ーーほんまや。ちょっと昔の衣類を想像させますね。

確かに。そういうプリミティブさもありつつ、組み合わせ方によってはカニエ・ウエストが作った服みたいな未来感のある雰囲気になったりするんだよね。

未来的とも、てるてる坊主的とも言えなくもない。

ーーこんなふうに布1枚を服っぽくするのって、なんかいいですね。

このシンプルさとアイデアが面白いよね。これで同じようなサイズでアルファダイレクトとかDCF製のブランケットも作ってて、たぶん合わない人には全然合わないけど、ピタッとくる人にはめっちゃはまるかも、みたいなニッチなアイテム。

ーーでもこういうの好きな人いますからね。自分でいろいろ考えるのが好きな人とか、もうよくある道具に飽きてきちゃった人とか。

いるよね。今回、日本のガレージ系ブランドの道具に絞って紹介したけど、やっぱり独創的なものが多いよね。アメリカのブランドなんて、こんなのとか一二のスタッフサックみたいなのとか、絶対考えつかなそうじゃない?

ーーそうですね。あんまり細かいこと考えてない。やっぱり日本人特有の何かがあるんでしょうね、やっぱ。

改めてそう思うよ。香港や台湾や韓国ではアメリカのULよりも日本のULの方が人気があるくらいだけど、海外から見たらやっぱり面白いシーンに映るんじゃないかな。

ーー面白いでしょうね。三田さんありがとうございました!

【大仏研究所スタッフ編2024②に続く】

三田 正明

三田 正明

フォトグラファーとしてカルチャー誌や音楽誌で活動する傍、旅に傾倒。 多くの国を放浪するなかで自然の雄大さに惹かれ、自然と触れ合う方法として山に登り始める。 気がつけばアウトドア誌で仕事をするようになり、ライター仕事も増え、現在では本業がわからない状態に。 アウトドア・ライターとしてはULハイキングをライフワークとして追い続けている。 取材活動のなかで出会った山と道・夏目彰氏と何度も山に行ったり、インタビュー取材を行ったり、酒を酌み交わしたりするうちに、いつの間にかこのようなポジションに。 山と道JOURNALSを通じて日本のハイキング・カルチャーの発展に微力ながら貢献したいと考えている。