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山と道スタッフの推し道具

HLCアンバサダー編2024②:中川裕司・山本陸

北関東アンバサダー廻谷・四国アンバサダー菅野の「推し」は?
写真/文:三田正明
協力/李生美
2024.11.01
山と道スタッフの推し道具

HLCアンバサダー編2024②:中川裕司・山本陸

北関東アンバサダー廻谷・四国アンバサダー菅野の「推し」は?
写真/文:三田正明
協力/李生美
2024.11.01

みんな大好き山道具! というわけで、昨年(2023年)も行った『スタッフの推し道具』が帰ってきた。今年2024年は、それぞれアウトドアショップの店主やスタッフも務めている山と道HLCアンバサダー編と、山と道の本部である鎌倉の大仏研究所スタッフ編の2本立てでお届け。

アンバサダー編後編となる今回は、HLC関西アンバサダーで『山道具谷ノ木舎』店主の中川裕司と、HLC北陸アンバサダーで『THE GATE SPORTING CLUB』店長を務める山本陸の2024の「推し」な道具を、前回に引き続き編集長三田が根掘り葉掘り聞いてみた。

いずれも人気ショップの店主や店長でもあるHLCアンバサダーの「推し」だけに、今回も注目アイテムが勢揃い。ぜひ最後までお付き合いを。

【連載を読む】

中川裕司(山と道HLC関西アンバサダー/『山道具谷ノ木舎』店主)

中川裕司 『山道具谷ノ木舎』店主。カメラを片手に放浪中、チベットやカラコルム、ラダック等の山岳民族の生活文化や、その圧倒的な風景に魅せられて、アウトドアカルチャーにハマっていく。旅の経験からアジアや中東各地の手仕事と結びついたアパレルメーカーを経営しつつ、2020年4月に山道具屋、『山道具 谷ノ木舎』をオープン。持ち前の機動力を活かして、ウルトラライトスタイルで野山を駆けめぐり、ハードリカーを飲みながら野営するのがいちばんの大好物。ニックネームは『きんにくん』。

ーーまずひとつめの推し道具を教えてください。

ひとつめはめぐりん(HLC北関東アンバサダーの廻谷)のLUNNETESがやっているオリジナルブランド、シェルトのボトルホルダーです。

中川の推し道具① Shelt|Head Light Belt

ーーボトルホルダーも数ありますけど、その中でもこれが「推し」なポイントは?

バンジーコードがトップからボトムまで繋がっているんで、キュッとすることで全体的にコンプレッションしてくれるからどういう動きをしてもグラつかない。キャップもバンジーコードで引っ掛けられるし、良い感じに固定できます。かなり賢い。メッシュの部分がミソなんやろな。

大きいボトルでも出し入れがスムーズ。

バンジーコードでキャップ部分を抑えられるのでボトルが動かない。

ーーボトルが濡れててもメッシュだったら気にならないですしね。

僕のは生地がエコパックなんですけど、ハリがあるというか、基本的に潰れないとこも良いですね。スリップクリップとベルトの2箇所でとめるんだけど、山と道のMINIともすげえ相性が良い。なんで、うちの店やと鉄板ですね。バックパックを買うごとに買い増す人もいます。

ーー1個付けると全部付けたくなっちゃう。

取り外すのが面倒くさいみたい。ただパチンと挟むだけやねんけどね。

ーーで、ふたつ目はカトラリーですか。

はい。ホバーライトのホバーライトスポークです。

中川の推し道具② Hoverlight | Hoverlightspork

エバニューとかを請け負ってる新潟県燕市の金属加工の会社が作ったブランドのアルミ製品です。この手に吸い付くような丸みのデザインが絶妙な強度も生んでるんやね。

ーーすっごく薄いけど丈夫なんだ。軽さはどれくらいですか?

7gなので、相当軽い。これはとにかく値段が安くて、本体のみで1,980円で、DCF製のケース付きのセットやと3,300円。

カラーは写真のブラックの他、グレイ、シルバーの3色がある。

ーーほんと形がきれいですね。(ホーバーライトのサイトを見ながら)「シドニー・オペラハウスにも採用されているシェル構造(曲面板構造)をカトラリーに応用することで、驚くべき軽さと実用的な強度を併せ持つプロダクトを生み出しました」だって。

最近、HLCの『ULハイキング入門』で皆さんのギアリストを見させてもらっていても使ってる人、増えてますね。みんなアンテナ張りすぎ(笑)。

ーーで、お次はミトンですか?

ハンズオングリップのアダプトです。これはミトンでなく、フィンガーグローブに収納式のミトンのフードを被せることができるんですよ。

中川の推し道具③ Handson Grip|Adapt

ーーこれは面白い! 雪山用だったらこういうのもあった気がするけど、スリーシーズン用でこういうのは見たことない。

グリップ力がすごく良くて。沢登りのときは指先が大事なんですけど、岩肌とかぬめってるところでも結構グリップするんで、使いやすいですね。僕、手汗かきなんですけど、トレッキングポールともすごい相性良くて。夏のアルプス縦走中もスピード出して歩くタイプなんで、持ち手がスポンジっぽいコルクでもニュルニュルしてくるんですけど、これをつけてると汗かいてても持ち手が滑らないから、だいぶ調子が良い。

ーー夏もつけるんだ。これは防水ではない?

ですね。一応ウインドシェル素材のフードを上から被せれます。ハーフフィンガーグローブの方はメッシュでめちゃくちゃ抜けの良い生地。

手の甲のポケットにフード部を収納できる。

ーー自転車にも良さそうですね。冬に自転車乗ってる途中でスマホをいじりたいときとか良いかも。これだと1年中使えそうだし。

ハンズオンクリップに勤めてる子が友達なんですけど、これを企画するときから話を聞いていて「こんなのが良いんじゃない?」みたいな話をしてたんで、余計愛着があります。

ーー手の甲にミトン部分が入ってるのは暑く感じないですか?

別にそういうことはないかな。

ーーじゃあ最後の「推し」の紹介をお願いします。

はい。これは道具でなくて食料なんですが、マウンテングルメラボです。

中川の推し道具④ Mountain Gourmet Lab.

ーーこれは初めて見た。クッカーに水と一緒に入れて沸騰させてから蒸らす系のやつですか?

そうです。味はすごく良いっす。巷ではスモールツイストが流行ってますけどね。

ーーこれは最近出てきたんですか?

去年ぐらいじゃないかな。

ーー最近またこの業界が熱いのかな。スモールツイスト以降、増えてきてるのかもしれないですね。

そうかもしれないっすね。でもビバークレーションから、一応そういう動きはあったんやと思います。

ーーそうだった! 確かにビバークレーションが元祖だよね。忘れちゃいけない。

そう、忘れちゃいけない(笑)。やっぱビバークレーションのおかげですよね。おいしくないと駄目っていうのがわかった。当たり前や(笑)。

ーーこれは他にもいろんな種類があるんですか?

いまのところ7種類あって。簡単においしいご飯が食べられるのは嬉しいですよね。

今回持ってきてくれたのは、「トマトと炸醤の合体麻婆飯」と「山椒七味香る豚汁雑」。250mlの水と一緒に火にかけて沸騰したら15分蒸らして完成。

ーーこれ1食で量は充分ですか?

食いしん坊の山メシとしては足りひんかもしんないっすね。でもアテとお酒を飲んだ後にこれでシメるとかだと全然いけるかな。

ーー重さも軽い。谷ノ木舎でも売れてますか? 

いや、新規で扱おうかなっていうところです。

ーーじゃあまだお試しなんだ。最近の山メシ業界はどうですか? 

ちゃんとおいしいご飯を山の上で食えるように、昔よりもメーカーが頑張ってくれてるんで、良い感じに盛り上がってきてると思いますよ。体にも良いし、栄養もずいぶん考えられてると思いますね。

ーーこれもいろんな食材が入ってますしね。きんにくん(中川)らしいセレクト、ありがとうございました!

山本陸(山と道HLC北陸アンバサダー/『THE GATE MOUNTAIN』店長)

山本陸 『THE GATE MOUNTAIN』店長。20代前半、職場の同僚にたまたま誘われたトレイルランニングをきっかけに山とアウトドアの世界に没頭。2017年に日本一周山旅の最中に、HLCツアーで北海道に来ていた山と道チームと出会い、ULカルチャーとそのコミュニティに触れて感銘を受ける。旅を終えてからは『THE GATE』と『THE GATE SPORTING CLUB』(現『THE GATE MOUNTAIN』)の立ち上げに携わり、ショップスタッフとして山の楽しさを発信している。福井・北陸のフィールドを中心に、春夏秋はハイキングとトレイルランニング、冬はテレマークスキーを楽しんでいる。

ーーまずひとつめの推し道具を教えてください。

はい。これはフロートのリゲル・グリーンレンズフラッシュミラーです。

山本の推し道具① Float × Sunday Mountain|Rigel Green Lens Flash Mirror

山に行くときは常に持って行くし、かつ通勤でクルマに乗ってるときにも使ってる偏光サングラスです。レンズの色がグリーンレンズで、表面にフラッシュミラーっていう薄いミラー加工をしてるタイプ。フロートのサングラスはうちのお店でもメインで取り扱ってるのと、フロートの会社が福井の鯖江にあって、僕も地元が鯖江なので、作ってる人たちとも仲良いんです。7年間くらいずっと愛用していて、これは4本目です。このモデルのこだわりは、一般的なミラーレンズと違ってあんまりミラーがきつくないところです。

ーー完全なミラーじゃないんだ。

ギラつきすぎないのがいいんです。ミラー加工をしてると、内部反射して内側が逆に眩しくなっちゃうデメリットもあるんですけど、そういうのが起こらないし威圧感も与えない。「薄いミラー加工したものを作れないですかね?」というのを伝えて反映してもらったモデルです。その後、他のカラーにも展開してもらってるんですけど。アイディアを提供したような、一緒に開発したようなアイテムです。

薄いミラー加工なので程よくレンズが透けるのがポイント。

ーーこんなに薄い加工のミラーレンズは他にない?

これまではあんまりなかった。やっぱり偏光レンズでもミラー加工もあるとより遮光性が上がって、雪山とか雨あがりの路面が見えやすくなります。よりアウトドアユースで調子が良いなと。

ーーフロートの中でもフラッシュミラーレンズがおすすめということで。では次は?

ふたつ目はトレッキングポールで、マウンテンキングのトレイルブレイズです。

山本の推し道具② Mountain King |Trail Blaze

これが登場する前まで、Z形のポール自体がそんなになかったですよね。ブラックダイヤモンドが出してるぐらいで。それでもこんなに細くはなくて。これは元々トレランメインで使うために買って、それからハイクも半々ぐらいでやるようになって、どっちでも万能に使えるなっていうアイテムです。

ーーこの色が良いね。

一応アルミ製のブラックモデルなんですけど、色褪せてきてます(笑)。

ーー本当はブラックなんだ。紫に見える(笑)。重さはどれくらいですか?

重さは150cmのモデル1本142gかな。アルミのポールの中では最軽量級です。

使い込んで色が褪せて若干紫がかった山本の私物。

ーーハイキングには絶対持っていく?

絶対ですね。タープとかテントを建てるときにポール代わりでも使うし。

ーー歩く時も結構使います?

はい。山に行って、これを組み立てたときに山に来たなって感じがするのが好き。

ーーシャキーンってやって「行くぞ!」って気合い入れる、みたいなね。カーボンじゃなくてアルミっていうのも良いの?

もう7年ぐらい使ってるんですが細さの割りにかなり丈夫です。他のカーボンのポールを使って折れた経験は多いんですけど。

ーーアルミだと気にせず使えて良いなみたいな?

そうですね。若干曲がってるんですけど、遜色なく使える。全体重をかけるような感じで転んだときもあったけど、弓状にしなってくれて、折れることはなかったので信頼してます。

ーーもう欠かせない道具ですね。

体の一部ですね。

ーーお次はパンツですか。

はい。フーディニのペースライトパンツです。

山本の推し道具③ Houdini|Pace Light Pants

フーディ二のペースシリーズはトレイルランニングのカテゴリーで、これも立ち位置としてはウインドシェルパンツなんですけど、履き心地が良いのとシルエットがウインドパンツっぽくないというか。結構ピタッとするのはスポーティーになり過ぎる感じがあるんですけど。

ーー素材もそんなにシャカシャカしてないんだ。

風よけパンツとして使えるし、下山した後に履いたまま温泉にも行けます。

ランニングカテゴリーのパンツだが、スポーティ過ぎないルックス。

ーーこれはすごく軽そう。

軽いです。

ーー山と道のLight 5-Pocket Pantsのライバルみたいな製品だね。

125gなのでLight 5-Pocket Pantsよりも軽いです。ポケットもシンプル。

ポケットは両サイドのみでジッパー付き。

意外と強度も強くて、比較するならLight 5-Pocket Pantsなんですけど、去年買ったLight 5-Pocket Pantsと、去年買ったペースライトパンツの2年目の具合を比べると、ペースライトパンツの方が耐久性は高そうやなって感じてます。

ーーシルエットも良いし、ちょっとストレッチがあるよね。

若干の横ストレッチが入ってます。

ーーこれは調子が良さそう。最後の「推し」は手ぬぐいですか。

はい。チャオラスのスポーツてぬぐいです。

山本の推し道具④ Chaoras|スポーツてぬぐい

ーーこれは普通の手ぬぐいとどう違うの?

一般的な手ぬぐいは90cmなんですけど、これは110cmと20cm長いんですよ。90cmだと首に巻いたときに短くてちょっと汗を拭きづらいけど、110cmだと額まで届く長さになってちょうど良い。

首に巻いた状態でも額までしっかり汗を拭ける。

ーー素材は?

レーヨンとコットンのハーフハーフです。大体の手ぬぐいはコットン100%の薄手ですけど、レーヨンが入ってるんで吸水性が高いのと、ソフトな触り心地がすごく気持ちが良い。

ーー消臭効果もあるんですか?

消臭はそこまで。あんまり気にならないんですけど。普通の手ぬぐいと同様ですかね。

ーー手ぬぐいって、端が切りっぱなしでかがってないから乾きが速いって聞いたんだけど、これはかがられてるんだね。

これは折り返さずにロックミシンの糸でほつれを止めてるから速乾性は普通のてぬぐいと変わらないです。これももう4年目なんですけど、元々はお店(The Gate)をオープンした時に、店のロゴの等高線をモチーフにして作ったオリジナルを、京都の藍染め作家の西村尚門さんのワークショップで染めました。これからも長く作っていきたいなと思って。

ロックミシンの糸のみでほつれを止めているため、乾き具合はあまり変わらないそう。

ーーじゃあこういう藍の色のものは製品にはないわけね。藍染は生地を強くする効果や抗菌作用があるから、手ぬぐいと相性が良いかもね。

そうですね。あとは虫が寄ってきにくくなる防虫効果もあるみたいですね。

ーー短いのもあるの?

チャオラスから短いのも出てますけど、スポーツてぬぐいって商品名のものが110cmと長めです。タオルとしても使えるっていう。

ーーそれくらい長いと使い勝手は良さそう。

日除けにもなるし、数ある手ぬぐいの中でいちばん良いです。手ぬぐいってやっぱり無限に増えるじゃないですか。その中でも4年目なんで。

ーーちゃんと道具として使うならやっぱこれだなってことだね。ありがとう勉強になりました!

【大仏研究所スタッフ編に続く】

三田 正明

三田 正明

フォトグラファーとしてカルチャー誌や音楽誌で活動する傍、旅に傾倒。 多くの国を放浪するなかで自然の雄大さに惹かれ、自然と触れ合う方法として山に登り始める。 気がつけばアウトドア誌で仕事をするようになり、ライター仕事も増え、現在では本業がわからない状態に。 アウトドア・ライターとしてはULハイキングをライフワークとして追い続けている。 取材活動のなかで出会った山と道・夏目彰氏と何度も山に行ったり、インタビュー取材を行ったり、酒を酌み交わしたりするうちに、いつの間にかこのようなポジションに。 山と道JOURNALSを通じて日本のハイキング・カルチャーの発展に微力ながら貢献したいと考えている。

連載「山と道スタッフの推し道具」