#9 山と道同期と近所の緑地でサクッとピクニッキング
#9 山と道同期と近所の緑地でサクッとピクニッキング
鎌倉の山と道社員食堂で毎日独創的なお昼ご飯を作るスタッフの寒川奏。イラストレーターとしても活動する彼女がとにかくおいしいものを、気持ちの良い場所で、大好きな人と食べること……つまりピクニックをすることについて綴るこの連載。今回は酸いも甘いも共に経験してきた同期たちをピクニッキングへと誘い出します。
しかし、初っ端のスケジュール調整から難航する寒川。忙しいメンバーの仕事の合間を縫って、なんとか会社近くの緑地へ出かけるも、まさかのタイムリミット付き⁉︎ 一緒にいるだけで楽しい同期たちとの笑いあり感動あり(?)のピクニッキングの幕開けです。
ピクニッキングとは?
まずはピクニッキングが何かをご紹介。
ピクニッキングとはピクニックとハイキングを掛け合わせた造語である。なぜ私がいまピクニッキングマスターを目指しているかは第1回を読んでもらいたいが、ピクニッキングとは、以下のようなものだと私は考えている。
- 最低1時間のハイクをする(しかし一緒に行く人の体調や体に合わせて、全員が楽しめるハイクにする)。
- 食べることを主眼においたデイハイク。何人かでそれぞれ食べ物や飲み物を持ち寄り、それをシェアして食べる。
- ハイキングの行程はあくまでどこで食べるかが主眼。
- 参加者それぞれがピクニッキングに向けて食料を準備する(なるべく手作りする)ことも非常に重要。
つまり、誰かの家でやる持ち寄りパーティを屋外で、ハイキングを絡めてやるのがピクニッキング?
これはあくまでも私の定義であって、もっと違ってもいいと思う。読者の皆様にも自分のピクニッキングを見つけて欲しい。
みんなでランチ
ピクニッキングも今回で9回目。だんだんと会社の仲間たちにも「寒川さんは社食を作る以外でもこんなことしてるんだ〜」と認知してきてもらえてきた今日この頃。
山と道ではランチをみんなで一緒に食べる。特に席順などは決まっておらず、みんな適当な場所でその日に一緒のテーブルについた人とワイワイ話しながら食べるのだ。もちろんランチを作っている私も例外ではない。
普段の社食の様子。しもちゃん(下山)とおでんくん(横井)が談笑中。
天気の良い日には外のデッキで食べることもある。
社食は自分の好きな量を盛っていくスタイル。この日のメニューは肉骨茶(バクテー)。 山と道材木座の店長前原の様子を見るハイカーズデポの土屋さん。
その日、私はたまたま同期メンバーのうち4人(下山、モス、前原、寒川)と一緒の席についた。
下山「さんちゃん(寒川)のピクニッキングの記事読んだよ。あれ僕も行きたい。」
モス「俺たちで行ったら最高に楽しいじゃん。」
寒川「確かに。なんで今まで君たちを誘わなかったのか不思議なくらい、楽しいしか想像できないね。」
前原「えっ! 行くっしょ。」
こうして爆速で決まった同期で行く仲良しピクニッキング。しかし彼らは多忙ボーイズ。この後、予定を合わせるのに大苦戦することになる。
下山 悠未(しもちゃん)
山と道のウェブ制作スタッフ。北海道の留萌出身のいつもお菓子ぽりぽりボーイ。トマトをそのまま食べることが苦手。起きている時間の大半は仕事をしており、いないなと思ったら大抵トイレにいる。
モス スティーブン(モス)
山と道の英語関連担当&ショップスタッフ。みんなと仲良しなコミュニケーションおばけ。以前ほぼ毎日一緒に飲みに行っていたら、お互いとんでもなく太ったので最近は控えている。
前原 秀則(ヒデちゃん)
山と道材木座店長。北海道出身の獣のような男。彼からは動物としての生きる力を人一倍感じる。おおらかだが意外に繊細で、子煩悩なヒデちゃん。こんなに気持ちの良い人には出会ったことがない。
ねえ、ほんとに行きたいのかい?
後日改めて日程決め。忙しい大人4人の予定は果たして合わせることができるのか?
寒川「今は6月だから、なるべく7月中に行きたいんだけどみんなの予定はどうかな? 2週目の金曜日とかは?」
前原「いや〜、展示会とOMMの出店が入ってる。結構7月はパツパツだ。」
寒川「うーん、じゃあ3週目の金曜日は?」
下山「僕が初めて取る有給がその日程だ。ごめん。」
寒川「それは絶対取ろう。うーん、どうしようかなあ。」
モス「俺は合わせるよ。OMMも展示会もあるけど。」
寒川「いや、それ合わせられてないから。じゃあ7月最終週の木曜日のランチ後に、近場でピクニッキングしよう。そうしたら午前中は仕事できて、みんな行きやすいでしょう。」
全員行きたいという割に全く予定が合わないが、なんとかすり合わせる形でスケジューリングしてみた。
ピクニッキングの前日、ヒデちゃん(前原)から連絡が入った。
前原「ごめん、子供の体調が悪くなっちゃって。明日無理そう…。」
下山「しかも明日天気やばくない?」
寒川「リスケで‼︎」
このようなやりとりが2回ほどあり、ヒデちゃん抜きで8月頭に行くことに決定。ヒデちゃんはまたいつか一緒に行こうな。
ピクニッキングの前日、今度は下山から連絡が入った。
下山「ごめん、14時までミーティングが入っちゃった…。」
モス「俺は17時からミーティングが入ってる。」
なんなんだお前ら。こういうことがないように事前に予定を立てたんじゃないか。予定が入ってる日に他の予定入れるなよ。
寒川「もう行こう。3時間で収まるかは知らんけど、行こう。」
ということで、もはや強行にも近い形でピクニッキング当日を迎えた。
リミット3時間のピクニッキング
当日14時、きちんと山と道大仏研究所に全員集合できた。今回は我々の職場である山と道大仏研究所からクルマで約10分の「広町緑地」という、ちょっとしたトレイルがあるちょうど良い緑地に行くことにした。私もたまに走りに行くトレイルで、1時間弱で1周走れるのでとてもちょうど良い。今回はあまり時間がないので、サクッと行けるピクニッキングであることが重要なのだ。
入り口がいくつかある広町緑地。景色が眺望できる場所など寄り道しながら歩くと1周に1〜2時間ほどかかる。畑や田んぼもあるので歩いていて楽しい。
今回は室ヶ谷入り口からピクニッキングスタート!
まずは入り口まで住宅街を歩く。とんでもなく暑いので早く緑地に入りたい。
住宅街を抜け、室ヶ谷入り口から広町緑地に入っていく。
室ヶ谷入り口はあまり人気のない入り口なので植物たちで鬱蒼としている。朝イチで来るとよく蜘蛛の巣に引っかかる。
寒川「なんか4年も一緒に働いてるけど、みんなで一緒にハイキングに行ったことなくない?」
下山「確かに。1回みんなでキャンプに行ったよね。」
寒川「そんなこともあったね〜。だいぶ変わったよ、この4年間で。みんな今はそれぞれ違うパートナーも見つけてね…。」
モス「俺はシングルになってね〜。」
下山「夏だし、海で選び放題じゃない?」
寒川「モスの好みはモデル級の美人だったよね。」
モス「あくまでも俺調べなんだけど、美人ってちょっとクセのある子が多いじゃん? 俺が頼れる感じに見えるのか、そういう子になぜかモテるんだよねー。」
下山「満更でもないんだね。」
寒川「なんかよくわかんないけど、モスはモテるしな。」
モス「まあ、忙しくさせていただいてます。」
我々は仲が良い。下品なことで大笑いして周りがドン引きして黙ってしまうほどに仲が良い。お互いかなり気兼ねなくなんでも話せる。さすが苦楽を共にしてきた同期である。
基本的にここには書けないくらい下品な話ばかりしていた。
下山「なんか良いね、この緑地。めちゃくちゃちょうど良い。最近毎日35℃超えだから、そんな中歩いたら死んじゃうんじゃないかなと思ったけど、意外と涼しい。」
森の中なので日陰で涼しいし、程よくアップダウンもあって軽めのハイクにはもってこいの場所なのだ。出入り口もいくつかあるので、とても便利。
モスの汗がすごい。インナーを忘れたらしい。
モス「公園くらいの規模かなと思ってたけど、ちゃんとトレイルだから満足感高いね。」
寒川「PCT(パシフィック・クレスト・トレイルの略称。アメリカにおける三大長距離自然歩道のひとつ)を歩いた人にそう言ってもらえると嬉しいよ。でもモスはあんまり『PCT踏破!』みたいな感じに言わないし、雰囲気にも出さないよね。なんか理由があんの?」
モス「ん〜。ビギナーに寄り添いたいからかなあ。PCTを歩き切るのって確かにすごいけど、その話を持ち出したところで、共感とか理解って得難いから、あまり表に出していないんだと思う。」
寒川・下山「かっこいい〜!」
いつも下品な話ばかりしているので、こういう話は新鮮だ。
寒川「次はどこに行きたいとかあるん?」
モス「ハイキングを始めたのはPCTを歩くためだから、実はそこまで日本のトレイルは歩いていないんだよね。北海道の山や南アルプスはよく行ってたけど。今は鎌倉からアクセスしやすいトレイルを模索したい! ショップでお客様にも国内のトレイルをお勧めできるようになりたいし。」
下山「良いね〜! 海外を歩いたからこそ、そう思う部分もあるのかもね。」
木からのパワーを全身に受け止めようとするモスと、虫に刺されているしもちゃん。
撮れ高を心配するしもちゃんが紫陽花の蕾と一緒に写真に映ってくれた。
寒川「なんだかんだ1時間くらい歩いてきたわけなんだけど、もうすぐこの緑地の管理棟に着くよ。その前にこの緑地にはあのメタセコイアがあります。」
下山「あの生きている化石として有名な?」
メタセコイヤに全然盛り上がってくれなかったふたり。2002年くらいのインディーズバンドのCDジャケットみたいだ。
御所谷入り口というメインの入り口付近に着いた。この入り口付近にはちょうど良い広場があり、常々ピクニッキングにぴったりだと狙っていた場所だった。
寒川「よし、ここでピクニックしましょう。今16時前くらいだけど、時間は大丈夫?」
モス「ミーティングを18時にずらしたから、もうちょっといける。」
リミットがあるピクニッキングもメリハリがあって良いかもしれない。
時間がない! ピクニックスタート!
ピクニックシートを広げるが、蚊がすごすぎる。蚊の家に来たのかもしれないと思うほどに蚊がいる。まずは対策をしてからピクニックだ。
インドで買った驚くほど蚊が寄ってこない謎のクリーム「ODOMOS」を全身に塗りたくり、ミントのスプレーとドクダミスプレーを全身に振りかける。仕上げに我々のピクニックスポット周りを蚊取り線香で囲み、結界を作る。
ここまでしたのに結果的に私は3箇所刺された。この対策をしなかったら私はどうなっていたんだろう。3箇所で済んでよかった…。
インドの謎の蚊除けクリームODOMOS。きっかり8時間で効果が切れる。
みんなで協力して蚊取り線香に火をつける。
蚊取り結界の完成。
やっとシートの上にみんなが持ってきた食べものを広げる。今回彼らには、夕飯前だからおやつかおつまみ程度のものにしてねと念を押してきた。
モス「さんちゃん(寒川)があそこまでおつまみって言うから俺はオリーブ持ってきた〜。あとマカロン…は潰れちゃってるけど(笑)」
寒川「モスはオリーブが好物だったよね〜。昔一緒にハイクに行ってアヒージョを作ってくれた時もオリーブが入ってた!」
2021年に一緒に歩いた時、アヒージョを作ってくれたモス。この時、モスはポテサラトルティーヤ、私はキウイを食べていた。
モス「今回も本当は作りたかったけど、おつまみとか軽食って人によって量とか種類の定義が変わるからむずいよね。」
寒川「そうだよね。だから私は今回ポリポリ食べれちゃうクラッカーを作ってきたよ。あとはワイン。オリーブもクラッカーもワインにぴったりだね。しもちゃん(下山)は?」
下山「僕はちょっと調理を失礼します。ランチョンミートとカマンベールチーズを持ってきた。」
なぜだか今回は映えない。
別角度からでもやっぱり映えない。次回は映えさせます。
モス「この暑いなか焼くんか。猛者だな〜。」
寒川「もう見てるだけでお腹いっぱいになってきた。この暑いなか、乳製品持ってきたのも猛者だな〜。」
下山「おつまみって言うからさ〜。さ、焼こ。」
このあと下山はいそいそとバーナーを出し、明らかに小さすぎてバランスの悪いチタンマグの蓋で焼こうとして何度も失敗していた。なのに、とても嬉しそうだった。
モス、よくみたら「やるぞやるぞ」の顔をしてる。
何度やっても失敗するしもちゃん。
笑いが止まらない。
寒川「もう良いよ…。早く乾杯しよ。お疲れ〜!」
下山「えっ! おいしい! ワインがキンキンに冷えてる。すごい!」
寒川「ふふふ。実は保冷剤としてスイカを凍らせたものを一緒に入れてきたのだよ。着く頃にはスイカは半解凍されててワインも冷えてて最高じゃない?」
モス「天才じゃん。このスイカなんだろうな〜って思ってたんだよね。」
凍らせたフルーツやペットボトル水をお酒と一緒に入れていくと、とても良い! 凍らせたものはいい具合に溶けるし、お酒もキンキンに冷えるし、一石二鳥で最高〜!
激動の3年、これからの私たち
寒川「山と道で働き始めてからの3年間は本当にあっという間だったね。」
下山「ね。オフィスの場所も引っ越したり、モスはPCTに行って帰ってきたり。」
モス「さんちゃんなんて職種も変わってるもんね。最初はカスタマーサポートをやってたもんね。」
寒川「それな〜。今の料理という仕事が合ってるよ。でもスタッフもどんどん増えて、作る量も増えてきたなって感じ。」
下山「どんどん会社も様変わりしてくね。僕たちは今後どうなっていくんだろう。」
寒川「来年自分たちがどうなってるかなんて全く想像ができないよ。いつか移住とかして、自分たちの暮らしを作っていきたいな。絵を描いたり、ご飯作ったりして暮らしていきたいなあ。」
モス「俺はニセコに住んでみたいな。2年連続で冬季のスキー場の仕事に行ってて、大好きな場所。」
下山「将来遊びに行く場所がたくさんあって良いな。良い同期だよほんと。」
時計を見ると17時をすぎていた。急いで戻らないとモスがミーティングに間に合わない。一瞬で片付けを終わらせた。
寒川「さて行こうか。てかモス汗すごぉ。ミントのスプレーあるけどかける?」
モス「あ、じゃあケツにいいすか?」
全員ノリノリ。
寒川「ケツだけと言わず全部かけてあげるよ。」
甘んじて受け入れるモス。
モス「いてえ‼︎ なんかこれすげえ‼︎」
全員「ぎゃはははははは‼︎」
すごいスースーするそう。
笑いすぎて、すれ違うハイキングのおばさまたちが我々を凝視していく。ああ、短い時間だったけど同期ピクニッキング楽しかったな。
スースーはするけど汗は増すばかりのモス。
下山「次はヒデちゃんも来れたら良いね。」
モス「みんなでまた山とかキャンプも行こうよ。」
寒川「良いね。仕事が忙しいけどもっとみんなで遊ぼうぜ。今日はありがとね。」
真顔のしもちゃん。
こうしてまたそれぞれの仕事に戻っていった。モスも無事ミーティングに間に合ったらしい。
彼らとは、それぞれの人生が違うステージになっても一緒に遊びたいなあ。そう思える人たちと出会えて関われていることがとても嬉しい。こんな変な奴らと出会えたことは、山と道に入って良かったと思うことのひとつ。そう思えたピクニッキングだった。
これを読んでくれているあなたも、仲の良い同僚を誘ってぜひピクニッキングに行ってみてほしい。きっと相手の存在の大きさや大切さを再確認できる機会になるはず。休日を使ってわざわざ行くなんてことはしなくていい。時間を共有することに意味があるから、サクッと仕事の合間や終わりで構わない。気負わず楽しい、ちょうどいい範囲のあなたのピクニッキングを見つけてもらえたら嬉しい。
次回はどんなピクニッキングに行こうかな。きっとまた素敵な時間になるから、今から楽しみでしょうがない。
パーフェクトクラッカーの作り方
「パーフェクトクラッカー」。それは何にでも合う、みんな好き、しかも食物繊維や栄養がたっぷりなまさにパーフェクトなクラッカーの事。今回は私がいつも作っているこのパーフェクトクラッカーを、ハトムギを入れることで日焼けで肌が疲れがちな今の時期にぴったりなレシピにアレンジしました。
『PERFECT CRACKER WHITENING EDITION』
◯ 材料(天板約2枚分)
ひまわりの種 100g
かぼちゃの種 100g
アマニ 100g
ゴマ 100g
スーパー大麦のフレーク(オートミールでも可) 50g
ハトムギフレーク 50g
小麦粉(全粒粉でも可) 200g
ハトムギ粉 100g
ベーキングパウダー 小さじ1
ニュートリションイースト 50g
オリーブオイル 90ml
水 200ml
塩 10g
オーブンは200℃に予熱。
次回のピクニッキングも乞うご期待!