ULハイキングを楽しむ中で、その歩みをさらに長く、激しく、色濃くしていきたいと湧き上がる思い。2023年を締めくくり、新年を迎える2ヶ月間にわたって、お届けする山と道月間特集は「ロングトレイル」をテーマに、長い道のりを歩くことの意味やそこから得られる価値について共有していきます。
DIRECTOR’S NOTE
半年前に出発したスタッフの中村がアメリカの3大トレイルのひとつ、コンチネンタルディバイドトレイル(CDT)から帰ってきた。去年はスタッフのモスが同じく3大トレイルのパシフィッククレストトレイル(PCT)を歩き切った。去年PCTを、今年CDTから帰ってきた伊東くん、通称ダイちゃんはこれから山と道京都で働くことになる予定だ。長いハイキングは人生に忘れがたい経験となり、これからも長いトレイルを歩くスタッフは増えるだろう。
この特集『ロングトレイル』をスタッフと話し合う中、そもそもロングトレイルの定義は何かという疑問が湧いた。アメリカの4000km以上の長大なトレイルをロングトレイルとする人もいれば、ハイキングを始めたばかりの人にとっては、3泊4日で歩いた50kmのトレイルもロングトレイルと感じるかもしれない。
三鷹のハイカーズデポでは、一度街に降りて補給を伴うハイキングをロングトレイルと定義しているとも聞いた。果たしてロングトレイルという言葉を定義することは可能だろうか? 私たちスタッフの中でも全員が納得する答えは見つからなかった。
個人的には、答えは自由でいいと思っている。その人がロングトレイルと思うトレイルやハイキングは、すべてロングトレイルであると考える。短いロングトレイルも、長大なロングトレイルも、存在していいのだ。
そして何よりも、私たちはすでに人生というロングトレイルを歩んでいることを忘れてはならない。ロングトレイルを歩いても、人によってはつまらなく感じることもあるだろうし、それなのに何故か終わった後にまた行きたくなるという人もいる。人生を終えて天国で振り返るのもいいが、できれば人生やハイキング中にも最高だと感じられることがいちばんだと思う。どうしたらもっと楽しくなるのだろう? ウルトラライトの思考がその答えの道筋を作るかもしれない….。
うだうだしているとすぐに時間は経過してしまう。さあ、行こう。まずは計画を立て、新しい地図を手に入れよう!
STORES
山と道の直営店はULハイキングにまつわるヒト・モノ・コトを発信していく拠点として、山と道の製品や、ハイカー仲間と出会い、カルチャーを育んでいく場として展開しています。
今月は、今年6月からコンチネンタル・ディバイド・トレイル(CDT)を歩き始めて、つい先日に踏破した山と道スタッフ中村純貴の報告会を開催します。
山と道 材木座 / 京都
スタッフJKのコンチネンタル・ディバイド・トレイル報告会
今年アメリカ大陸の3大ロングトレイルのひとつであるコンチネンタル・ディバイド・トレイル(CDT)を踏破した山と道スタッフJKこと中村純貴の報告会を行います。
5月にCDTを歩くための準備について語った『JKとONEとCDT』を、山と道材木座と山と道京都で行い、参加者と共に盛大に送り出しましたが、その結果報告となる今回は、全5,000kmを147日間歩いて感じたことや心情の変化など、踏破して間もないフレッシュな状態で赤裸々に語ってもらいます。
CDTをはじめ、ロングトレイルに興味がある方は、ぜひご参加ください。
報告会終了後には、交流の時間を設けていますので、各自食べたい物や飲みたい物を持ち寄って楽しみましょう。
JKからのメッセージ
「カナダとの国境を6月21日に出発し、147日目となる11月14日についにメキシコの国境に到着し、5,000kmのロングトレイル『CDT』を歩き終えました。5年ぶりのロングトレイルにワクワクドキドキの気持ちで歩きはじめるも、水不足や照りつく日差しに嫌気がさすこともあったり、乾燥や食事の変化で肌がボロボロになったり、ハイカー同士のトラブルに巻き込まれ、歩く気持ちを失いかけたときもありました。けれど、これぞロングトレイル。旅の中で『生活』をするということは非日常が日常になります。果てしない景色、出会い、そして自分自身との対話。これらが、厳しい瞬間も含めて、貴重な経験となりました。ぜひ歩き終えて間もないこの瞬間にお立ち合いください。お待ちしております。」
山と道 コミュニケーションスタッフ。
2018年28歳、メキシコからカナダまでアメリカを縦断する「パシフィック・クレスト・トレイル(PCT)」4,250kmを踏破。歩いたことで「足るを知る」という考え方に気づき、ULの重要性を知る。同年山と道に入社。以降、山と道HLCを通してU.L.ハイキングを学び、実践を通しUL的思考に磨きをかけ、深めてきた。
そして今年2023年、コンチネンタル・ディバイド・トレイル(CDT)を歩く。
HLC関西 スタッフJKのコンチネンタル・ディバイド・トレイル報告会
会場:山と道 京都(京都府下京区)
開催日:12月10日(日)
開始時間:15:30 ※15:00開場
終了時間:17:00
定員:20名 ※最少催行人数:10名
参加費:1,000円
募集締切:12月9日(土)
※12/9現在、キャンセル待ちです。
※終了後にプログラムの参加者との『懇親会』を予定しています。
懇親会
会場:山と道 京都
開始:17:00
終了:18:30
※食べ物やドリンクが必要であれば、各自持ち寄りでお願いします。
※製品の購入はできません。
HLC鎌倉 スタッフJKのコンチネンタル・ディバイド・トレイル報告会
会場:山と道 材木座(神奈川県鎌倉市)
開催日:12月17日(日)
開始時間:15:30 ※15:00開場
終了時間:17:00
定員:20名 ※最少催行人数:10名
参加費:1,000円
募集締切:12月16日(土)
※12/9現在、キャンセル待ちです。
※終了後にプログラムの参加者との『懇親会』を予定しています。
懇親会
会場:山と道 材木座
開始:17:00
終了:18:30
※食べ物やドリンクが必要であれば、各自持ち寄りでお願いします。
※製品の購入はできません。
JOURNALS
山と道JOURNALSでは、世界と日本のロングトレイルを紹介する記事を公開。きっとあなたの知らないトレイルも見つかるはずなので、ぜひ旅のプラニングにお役立てください。また、過去のコンテンツからも「JOURNALSでロングトレイルといえばこのふたり!」な河戸良佑さん、清田勝さんの記事をピックアップ。他にもJOURNALSにはロングトレイルにまつわる記事がたくさんありますので、ぜひ掘り起こしてください。さらにさらに、現在ロングトレイルを歩いているスタッフのトレイルログや河戸さん、清田さんらの新着記事も待機中。ロングトレイルまみれな年末年始になりそうです。
山頂を目指すだけがハイキングではありません。垂直方向だけでなく水平方向に歩いたっていい。長い距離を歩いているうちに景色は移り変わり、歴史を垣間見るような史跡に触れ、人々と出会い、歩く旅のなかに「物語」が生まれていきます。
そんな風に、歩く旅の醍醐味を味わえるロングトレイル。「トレイル」とはいうものの、必ずしもすべてが未舗装路でなくたっていい。風光明媚な景観を味わうだけでなく、舗装路で集落や古い町並みを繋ぎ、その地域の歴史、文化、生活に触れることで旅情を楽しむこともできるのが魅力です。巡礼の道、修験道、生活古道など日本ならではの道も含めて、日本全国にあるロングトレイルを紹介します。
今年2023年、スタッフJKも歩いたカナダ国境からメキシコ国境まで、アメリカ中部の分水嶺に沿って5,000kmにも渡って続くコンチネンタル・ディバイド・トレイル(CDT)。そんなCDTのスルーハイキングを、現在連載中の『尻まで焦げるアリゾナトレイル』や2020年から22年まで連載した『暑くて臭くて底抜けに笑うアパラチアントレイル』でもお馴染みの河戸良佑さんが全12回に渡って綴った放浪記です。
2018年〜19年の作品とあってまだ初々しさも残る「スケッチ(河戸さんのトレイルネーム)」の筆致とJOURNALSの構成ですが、やはり彼にしか書けない彼なりのロングトレイルの真実が刻まれたこの連載。5,000kmの旅の終わりにスケッチが辿り着いた境地とは?
青森県八戸市から福島県相馬市までの太平洋沿岸に沿って、東北の里や海、森や山を繋いで1000kmに渡って延びる「みちのく潮風トレイル(MCT)」を2020年、アメリカの3大ロングトレイルをすべて踏破したトリプルクラウンハイカー、清田勝さんが歩いた記録を前後編で綴ってくれました。
「ロングトレイルの道中は特別なことは何も起こらない」と言う清田さん。なのに、どうにも惹き付けられ、魅了されてしまうと。その答えを探すように、たくさんの景色や人々と出会いながら歩みを進めるハイキングは、いつしか自分自身を見つめる旅になっていきます。
結果、ロングトレイルを歩くハイカーにしか見えないことや感じられないことが書かれたジャーナルが完成しました。ロングトレイルに憧れの気持ちを持つ人、かつて歩いた経験のある人にぜひ読んでもらいたいです。
USE CASE
ULハイキングの理解は山と道スタッフにとって必須条件といえるもの。山と道ではスタッフが自らテーマをかかげ、1週間前後のULハイキングを体験することで、山と道の製品や考え方、ひいてはULハイキングの理解を深めることを目的としたULハイキング研修という制度を設けています。今回のUSE CASEではそのULハイキング研修を利用して、「ふくしま浜街道トレイル」を歩いてきた材木座スタッフ、角田のギアリストを紹介。国内のロングトレイルを歩く際のスタイリングの参考にもなるはずです。
今回のトレイルは街を通過することが多く、補給しやすい状況になると予想されたため、クッキングシステムを極力減らし、山では必ず持っていく着替えも靴下のみとし、自分なりに思い切って削ってみました。別のロングトレイルを歩いた際に泊まったキャンプ場で非自立式のフロアレステントを張るのが大変だったため、今回は自立式のツェルトを選択。これによりウェイトが増えてしまいましたが、ベースウェイトは約3kgになりました。食事や飲み水も歩きながらの補給をすることで、パックウェイトも約4kg程度で抑えることができました。結果的には2日間寒波が入り、持っていたスリーピングシステムでは弱く、テント泊から宿泊へ切り替えることもありましたが、そういうことが簡単に選択できるのも、街をつなぐロングトレイルの魅力だと思います。(山と道 材木座スタッフ 角田裕子)
Yuko Tsunoda
山と道 材木座スタッフ。
神奈川県小田原市出身。アウトドアとは無縁だった20代から一転、同僚に誘われるがままに山を登りはじめる。初めて登った北アルプスの景色に魅了され、ここで生活をしたいという気持ちが強くなり、山小屋で働きはじめる。その後、登山道具を扱う専門店での勤務を経て山と道のスタッフに。エベレスト街道とカミーノを歩き、ロングトレイルの楽しさの一片を知ったことで、より長く自然の中を歩きたいと思うようになる。夢は日本のどこかでトレイルエンジェルをしつつ、永遠のバックパッカーを自称する夫と世界中を旅をしながら歩くこと。
INSPIRATIONS
ロングトレイルを題材にした様々な作品から、今回は山と道 材木座の店長、前原がJMTを歩く様子を描いたドキュメンタリー映画をピックアップ。
『Mile… Mile & a Half』
(2013年、監督Jason Fitzpatrick, Ric Serena)
5年働いた理学療法士を退職後、妻と一緒に働いていた山小屋で「次は世界一周でも行こうか」なんて話していた時に、妻から「ロングトレイルを歩くのはどう?」と言われました。
「なるほど、歩いて旅をするスタイルもあるのか。なんなら自分たちの好きな自然に長いこと滞在できるなあ」と、当時の自分には聞き慣れない「ロングトレイル」と言うワードと、自然の中を歩いて移動するスタイルに強く惹かれ、無我夢中で調べていて最初に見つけた映画が『Mile… Mile & a Half』でした。
25日間219マイルにも及ぶジョン・ミューア・トレイル(JMT)を仲間達と歩くドキュメンタリー映画なのですが、当時、穂高の山々の絶景を毎日観ていた僕らでも心揺さぶられるほどのJMTの自然の雄大さを感じることができる美しい映像が印象的でした。にもかかわらず、歩き始めてすぐに1人リタイアしたり、ハイカーたちのむしろネガティブ寄りの感情が漏き出ていたり、途中に出会った音楽団が作る音で最後はハッピーになったりと人間の感情の振れ幅なのか、美しい自然とのギャップなのか、「ロングトレイルには人間社会が濃縮されている…!」と、衝撃を受けました。
最後のクレジットで映った日本人ハイカーを見てなぜかハッとし、「ロングトレイルに自分たちも行かないと…」という衝動的な思いからニュージランドに旅立ち、「テ・アラロア」を歩いたのはもう4年も前のこと。
このレビューを書くにあたって改めて見返しても変わらぬJMTの美しさと、歩いたからこそ共感できるハイカー達の感情の波に揺られ、ふらっと長い距離を歩きに行きたくなったのはここだけの話です。
『Mile… Mile & a Half』を観て、非日常のようで日常を深く感じられる「ロングトレイル」の世界へ皆さんもダイブしてみてはいかがでしょうか? (山と道 材木座店長 前原)
PLAYLIST
店舗やオフィスでスタッフが聴いているプレイリストをお届けします。曲のセレクターは、山と道のモデルとしても活躍している豊嶋きよらさんです。
今回の選曲のイメージは『A Long Long Trail』。長く壮大なトレイル 膨大な距離と時間を歩くうち、また季節は移る。登山というより、旅という言葉が似合いそうな楽曲を集めてみました。私自身はそんなに長い日数をかけてトレイルを歩いたことがないので、今回はJOURNALSの河戸さんの記事を改めて読みつつ、ロングトレイルを想像し、勝手に感情移入しながら選曲してみました(なのでアメリカンな楽曲がやや多めです)。ぜひお気に入りの曲を見つけてください。
公式インスタグラム@yamatomichiでも12月の特集について発信中。
CREDIT
STORES
Hidenori Maehara
Junki Nakamura
JOURNALS
Masaaki Mita
Emma Nakajima
INSPIRATIONS
Hidenori Maehara
PLAYLIST
Kiyora Toyoshima
Planning & Editorial
Editorial : Tomohiro Kobayashi
Mail Magazine : Yukari Fujita
Photography : Masaaki Mita, Hikaru Otake
Produce : Kazuhiro Hasumi, Yuma Shimoyama
Art Direction : Yosuke Abe
Supervision : Akira Natsume