0123456789 ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ abcdefghijklmnopqrstuvwxyz あいうえおかきくけこさしすせそたちつてとなにぬねのはひふへほまみむめもやゆよらりるれろわをん アイウエオカキクケコサシスセソタチツテトナニヌネノハヒフヘホマミムメモヤユヨラリルレロワヲン
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コックさんがわのピクニッキング記

#2 前田川で北島さんとちまきとみそ汁と蒸し卵を

山と道コック寒川と修理部北島が川へピクニックへ。レシピも紹介。
文/イラスト:寒川奏
写真:大竹ヒカル
2023.07.24
コックさんがわのピクニッキング記

#2 前田川で北島さんとちまきとみそ汁と蒸し卵を

山と道コック寒川と修理部北島が川へピクニックへ。レシピも紹介。
文/イラスト:寒川奏
写真:大竹ヒカル
2023.07.24

鎌倉の山と道大仏研究所の社員食堂で毎日独創的なお昼ご飯と3時のおやつを作るスタッフの寒川奏。その腕前は山と道インスタグラムのストーリーズでもお馴染みですが、そんな彼女がとにかくおいしいものを、気持ちの良い場所で、大好きな人と食べること……つまりピクニックをすることについて綴るこの連載。#2となる今回では、山と道きってのナチュラル系男子、修理部の北島市郎を召喚して、横須賀市秋谷の前田川遊歩道へ向かいました。

今回もオリジナルのピクニック料理レシピやMYOGアイテムの紹介まで内容は盛りだくさん。ぜひぜひアイデアを参考にしてくれたら嬉しいです。次の週末天気が良かったら、あなたも誰かとピクニッキングに行きませんか?

ピクニッキングとは?

ピクニッキング。それはピクニックとハイキングを掛け合わせた造語である。

決まり事はないが、どこで、誰と、何を食べるかは大事だ。

そして私のピクニッキングのモットーは「相手と一緒に、美味しくて、楽しくて、学びがあって、また行きたくなる」こと。

第1回目である前回は、筆者である寒川とその両親の3人で思い出の地である横須賀の大楠山でのピクニッキング。家族ならではのリラックスや非日常をエンジョイできた。しかしハイキングの場面が少なかったり、バッグの容量が大きすぎたりと反省点もちらほら。第2回目である今回はその反省を活かして楽しむぞ!

私とピクニッキングに行きませんか?

さて誰と行くか。今回は山と道修理部を牛耳る北島さんをお誘いした。

山と道修理部長の北島市郎さん。

北島さんは人間や植物、動物、全てを同じ生き物として、相手の心を考えられる人だ。そして北島さんと食のお話をするときは北島さんの食への愛、生き物への感謝を感じる。お話ししていると、共感する部分、学ぶ部分がとても多くて「もっと北島さんと仲良くなりたい!」と今回声をかけさせてもらった。

寒川「北島さん、私とピクニッキングに行きませんか?」

北島「え〜記事にもするんだよね? 緊張するからちょっと…」

寒川「うちの犬も連れていくのでぜひお願いします‼︎」

北島「え〜、ヤン様(寒川の飼い犬)も来るの? じゃあ、行こうかな‼︎」

よく噛む犬、ヤン

北島さんが動物好きで良かった。北島さんはニワトリ2羽と猫2匹を飼っている。

北島「そうだ! うちのニワトリの卵、ピクニッキングで使う?」

北島さんとコッコちゃんたち。

何を食べるかは話し合いの結果、北島さんが主食、寒川が汁物と副菜を持ってこようと約束し、前日には北島さんのニワトリの貴重な卵をなんと4つも渡してくれた。

そして場所は北島さんが葉山在住ということもあり、前回行った大楠山の登山道にも繋がっている前田川遊歩道に行くことにした。

前田川は私が小学生から慣れ親しんでいる川で、ピクニッキングスポットがあることも知っている。小1時間ほどのハイキングが楽しめる川沿いの遊歩道は暑くなってきたこの季節にぴったりの涼しさだ。

近くに野菜の無人販売所やおいしいしらす屋さんがあるので周辺を歩くのも楽しい。

前日準備

前日、北島さんの卵を使った料理とみそ汁用のみそ袋の準備に取り掛かる。

以前飲食店を営んでる知り合いとトレイルフードの話をした際に、みそ玉はとてもいいという話になった。みそだからある程度常温で持ち歩けて、そのまま舐めても塩分補給ができる。なるほど確かにとなっていたのだが、正直、みそを丸めるだけなので特に作る機会もなかった。今回はとてもいい機会なので、私のみそ玉を作ってみることにした。ゴミが出るのが嫌、食べれるもので包みたい。日本にはぴったりの袋があるじゃないか! 油揚げ! みそを丸めなくても材料をそのまま全部、油揚げの中に入れておいなりさんみたいにしてしまえばいい。どんなに不器用でもできる、ズボラな私にぴったりのレシピが完成した。

卵は蒸しあげる。なぜかというと、我が家のフライパンだと何度も油をしかなくていけないので、せっかくの卵の風味を邪魔してしまう気がしたからだ(元はテフロン加工されたいいフライパンを購入翌日に兄が金タワシで洗ったため、スカスカに乾いたフライパンになった。もったいなくて捨てれなくて今も使っている)。
味をシンプルに仕上げたかったら、調理法もシンプルにすればいい。

北島さんのニワトリの卵は大きくて、殻が薄かった。実は有精卵だったらどうしようとドキドキしながら割る。大きな黄身が出てきた。自分と繋がりのある卵を調理するのも食べるのも初めてで感動する。スーパーで何の気なしに食材を買っていた自分が恥ずかしい。生き物からいただいているんだと、実感させてもらえた。

料理は同時進行が基本。今回のみそ袋と蒸し卵は同時進行でやると15分もかからない。ついでに洗い物も同時進行でやると、モテます。

みそ袋の作り方

分量(2人分)
*油揚げ 1枚(半分に切る)
*茄子 3cm角×4
*みそ 12g
*出汁粉 2g
*とろろ昆布 好きなだけ
*茄子の揚げ焼き用の油 好きなだけ

茄子を3cm角くらいに切って、揚げ焼いて冷ましておく。沸騰したお湯の中に油揚げを入れて1分ほど油抜き、お湯を切って冷ます。この時のお湯は取っておくと卵を蒸す時に使える。冷ましてる間にみそと出汁粉ととろろ昆布を練る。冷めた油揚げはよく水を切り、中にみそと揚げ焼きしておいた茄子を入れて完成。ジップ袋に入れて冷凍しておく。

蒸し卵の作り方

分量(2人分、卵贅沢バージョン)
*卵×4
*塩麹 大さじ1(お好みで増減してください。)
*蒸す用の水 フライパンやお鍋から溢れない程度

卵は血を補ったり、精神を安定させてくれるタンパク質豊富な食べ物。塩麹で旨味アップ。
卵が膨らんで溢れ出てしまう可能性があるので、蒸し上がるまでちゃんと側で見ておくこと。溢れそうになったら火を弱める。できたてもぷるんとしていておいしい、冷めても味がぎゅっと凝縮していておいしい。

天気はいまいち、でも川だったらどうせ濡れるし関係ない!

前田川近くの海辺の駐車場にクルマを停め、まずは海岸を歩く。少し雨が降っているけれど、日差しが強くなくてちょうどいい。海にも海岸にも人がいなくて、ゴミが落ちてなくて、きれいだけど少し物悲しい感じ、とても懐かしい。

ヒッピーふたりと1匹

そんなエモーションに浸っていたら、前田川遊歩道の入り口に到着した。

前田川遊歩道入り口には簡単な地図が設置されている。

北島、寒川「そうだそうだ、こんな感じだったね〜。」

整備されているが、少し鬱蒼としている遊歩道。あまり人が来ないのだろう。

寒川「ヤンはまだ7ヶ月で、川に連れてきたのは初めてです。」

北島「えー! そんな貴重な初めてを! 嬉しいなあ。」

前にも後ろにも動けなくなったヤン。

初めての川でびしょびしょになり、混乱して歩けなくなったヤン。歩き始めて5分後からは寒川がずっと抱っこをすることになった。

ちなみに柴犬で7ヶ月にして13キロもあるビッグベイビーなヤン。川に入ってないのに汗と濡れた犬のせいで私はびしょびしょだった。

毛で前が見えない。

北島さんと私の記憶の中の前田川遊歩道は、源流の方まで歩くことができた。しかし今はかなり鬱蒼としていて、途中からは通行止めになっていた。苔だらけで、かなり滑りそう。遊歩道から繋がっている大楠山頂上へのトレイルも少し歩いてみたが、このままだと登頂してしまいそうなので、戻って少し開けた、座っていても他の人の邪魔にならなそうな川のほとりを今日のピクニックスポットにすることにした。

ピクニックシートを広げよう

今回も作ってきた1時間のプレイリストを流して、ピクニックの始まりである。自作のナップサックからピクニッキングギアたちを出して、ピクニックシートを広げた。

好評を得られない脳刺激カラーのピクニックシート、北島さんは褒めてくれた。

前回は山と道MINI2でピクニッキングに挑んだが、今回のバッグは自作物!! 俗に言う「MYOG(Make Your Own Gear)」だ。

前回の「山と道MINI2の容量がピクニッキングには大きすぎる」という私の感想を読んだ北島さんが以前MINI2で使われていた生地(スカイライト)の残反を提供して下さったのだ!

ここで今回のピクニッキング装備をご紹介。

前回とそんなに変わらない装備だが、大きく変わったのは

・バッグ
・水筒

のふたつだ。

今回はお湯の入った水筒ではなく、シングルバーナーを持ってきて、川の水を沸かすことで前回よりもずっと軽くできた。ピクニックの定義である「あらかじめ詰めて運んだ食べ物をそこで食べること」からは少し脱線してしまう気もしたが、これは私のピクニッキングだ、私が私の定義を作ろう。

バッグの素材はMINI2にも使われていたスカイライトで超軽量、肩の負担を考えて肩のストラップはひもではなく布テープにした。通常のナップサックの作り方では、肩ひもがバッグの巾着の部分と繋がっているが、テープで同じことをやると分厚すぎてバッグの口がゴワゴワしてしまう気がしたため、巾着の部分はひもで、肩は別の場所にテープをつけることにした。

溢れ出る手作り感。

北島「ナップサック、使い心地はどう?」

寒川「正直、めちゃ悪いです! 肩のストラップを付けた位置が悪かったみたいで、常に羽交い締めにされてるみたいですね。しかもスカイライト(生地)の加水分解がすでに始まってて少し臭くてベタベタします。」

北島「改善の余地しかないねー! いいねー‼︎」

寒川「そう考えるとMINI2ってホントよくできてますよね。でもこれを目指すのはまた違うんだよな〜! もっとカバンの原点に戻っていきたい。」

そんなことを話していたらピクニックの準備が整っていた。

ご飯もハッピーもシェア

さて、歩いたし、ご飯の時間。北島さんは奥様が中身を作り、北島さんが包んだというちまきを持ってきてくださった。

竹製の弁当箱もジャパンて感じ

北島「これは淡竹(はちく)って言って、細くて産毛のない、灰汁も少なめのたけのこの皮で包んであるんだよ。細いから包みづらかったけど頑張りました!」

寒川「ちまき、作ったことないので今度ぜひ教えてください!」

北島「まあ僕は包むとこしかやってないけど、なかなか難しいよ。」

北島さんはクッカーに水を入れて持ってきたシングルバーナーに火を着けた。お湯が沸いてきたらクッカーの上にちまきを入れていた竹製の弁当箱ごと置いた。

シングルバーナーの上でのバランスも大事。

北島「蒸してる風!」

寒川「湯気がすごい出てるけど、隙間から出てるだけでそんなに温まってない!(笑)」

私も持ってきていたシングルバーナーで川の水を汲んで沸かす。

6月でまだ人があまり入っていないから結構きれいな川の水。

家からここに着くまでの3時間ほどでちゃんと解凍されたみそ味噌袋にお湯を注ぎながら少しずつ溶かしていく。

みそ袋の見た目はおいなりさん。

お湯を注ぐ。

北島「あっ!それは例の卵だね。」

寒川「今回は塩麹だけで味付けして蒸してみました。傷まないように少し塩分強めです。」

冷凍するのは怖かったので、蒸し卵だけは常温で持ってきた。

そんなに温まらなかったちまきと、プレシャスエッグ(北島家の鶏卵)の蒸し焼きとおみそ汁でランチプレートのでき上がり!

やっぱりお皿に取り分けるとグッとピクニック感が上がったように思う。

みそ袋のおみそ汁は少しずつお湯を足しつつぐるぐると溶かしながら飲んでいくので、ずっと温かい状態で飲める。麦みそだと最後に残った麦を食べれるので他のみそよりも満足感があると思う。

ぐるぐる。

ここで告白するが、実は私はちまきが苦手。北島さんはこれを読んで初めて知るだろう。ちまきが苦手というよりも、餅や餅米が苦手なのだ。しかし、なんなんだこのちまきは! めちゃめちゃおいしい。最初、餅米だとわからなかった。独特の苦味もなく、次の一口が待ち遠しくなるおいしさ。

じゃーん!

蒸し卵は気温も高くなってきているので少し塩味を強くしてみた。箸休めにとてもいい。出所がわかってる食材ってこんなに愛おしいのか。感謝と愛の味がする!

へへっ、うめえや。

あなたのピクニック

寒川「北島さんにとってピクニックで大事なことってなんですか? ていうかピクニック行きますか?」

北島「ピクニックって言っていいのかわからないけど、奥さんと外で食べるのは好きでよくやるよ。そういう時に絶対なのは食べ物が温かいものであることかな。例えば、おにぎりは握って行っておかずはその場で作るとかね。」

寒川「なるほど、北島さんもピクニックの真ん中には食があるんですね。私もそうなので嬉しいです。以前父に同じ質問をした時に、ハンモックと答えてくれました。人それぞれの優先順位って面白いですよね。」

北島「今回さんちゃんにピクニックとは「あらかじめ詰めて運んだ食べ物をそこで食べること」と伝えられててすごく悩んだよ(笑)」

寒川「そんなに悩ませて申し訳ない。私も囚われすぎてました。気負わない、楽しむことが何より大切なのです! そしてこのちまき、めちゃめちゃおいしい!」

北島「良かった〜! みそ袋のおみそ味噌汁もとろろ昆布も入ってたり盛りだくさんでおいしい! あっ、ヤンが竹の皮食べてる。」

寒川「あっ! いけないよ!」

ヤン「もっとくれ」

お互いが作ってきたものを褒め合いきゃっきゃする。会社で仕事をしている時には絶対にありえない、楽しくてゆっくりとした時間が流れていく。北島さんともっと仲良くなれて嬉しい。そしてヤンは竹の皮を4枚食べた。

北島「(プレイリストを聞いて)あっ、斉藤和義の『ゆっくり帰ろう』だね。」

寒川「『歩いて帰ろう』ですね(笑)そろそろ歩いて帰りましょうか。」

さあ、帰りますか。

こうして北島さんとのピクニッキングはとても楽しく終わった。尊敬している人とこんな時間が持てるなんて、とても贅沢だ。いつもとは違った会話、表情、もっとその人を知れる機会になる。読者の皆様もぜひピクニッキングをやってみていただいて、相手をもっと知る機会にして欲しい。私の場合、今回のピクニッキングで北島さんの印象は「最高」から「やっぱ最高、もっと最高」になった。

今回も楽しかったな、次はどこに行こうかな、誰と行こうかな。

そんなことを考えながら帰り道、クルマを運転していたら隣でヤンが竹の皮を全部吐き出していた。彼は楽しみ過ぎたみたいだった。

【#3に続く】

寒川奏

寒川奏

1994年生まれ。デンマークでデザインを学び、ノルウェーに1年間在住。現在は鎌倉でイラストを描いたり、ワインバーにいたりする。食べることとお酒が大好き。目標は今を精一杯生きること。イラストのお仕事大募集中。インスタグラムアカウント @kanadesangawa_doodle

連載「コックさんがわのピクニッキング記」