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始まりがあれば終わりもある。山食音の終わりと山と道京都の始まりについて。

新しい店舗ができるまでのストーリー。
文:夏目彰
写真:大竹ヒカル、小寺晴雄
2023.05.31

始まりがあれば終わりもある。山食音の終わりと山と道京都の始まりについて。

新しい店舗ができるまでのストーリー。
文:夏目彰
写真:大竹ヒカル、小寺晴雄
2023.05.31

2016年から山と道の京都直営店として営業を続けてきた山食音が2023年4月16日に幕を閉じ、その直後の4月29日、山と道は京都・五条に新たな直営店「山と道 京都」をオープンしました。

これまでの場所を閉じ、新しい場を開く。この決断に至るまでにはどんないきさつと思いがあったのか。山食音をつくったこれまでを振り返りながら、新しい店舗をどのような仲間とともに作り上げたのかを紹介します。

「電気くん」こと東岳志さんとふたりで立ち上げた京都の山食音はいったん終わりを迎えました。山食音の思い出は深く、僕が京都を好きになるきっかけを作ってくれた電気くんには感謝している。

「大阪ではなく、どうして京都にお店を作ったんですか?」と聞かれることがたまにある。「東の古都鎌倉でスタートしたから、西でやるなら京都がいいかな」とかなんとか答えたりしているけど、電気くんがいる京都だから始めたというのが真実だ。結果、山に囲まれて素晴らしい文化がある場所でスタートできたことは良かった。

どうして別れることになったのかをここで伝えるのは野暮というものだけど、僕は電気くんの本業といえる音をつくる仕事が大成していった結果であると思っている。昨年、京都で開催されたアンビエント・ミュージックの大家ブライアン・イーノの展覧会で電気くんが大きく関わったことは広くは伝わってはいない。けれども、僕はその展覧会で体験した音の気持ち良さに、その空間を作ることに貢献した電気くんをあらためて尊敬した。

始まりがあれば、終わりもある。お互いに成長していくなかで、山と道 京都を作ると決めたことがひとつの分岐点となった。山食音の屋号は電気くんが引き継いでいく。このあとも電気くんらしい道を進んでいくんだろう。

山と道 京都の始まりは、山と道にも何かと関わっていただいているイェンス・イェンセンさんが、京都に別荘を作っていると知ったところからだった。イェンスさんはどこでも自分の居場所を作れる人で、別荘を作りながら、京都での自分のコミュニティを熟成させていた。

そのコミュニティの中で「おもしろいところに土地を所有している人がいるよ」と教えてもらった場所が京都店となった。まずは実際に見てみようと、昼まで「村屋」*で飲み続けた足で向かったそこは、高瀬川と鴨川に挟まれた奥まった場所にあって、唱歌にでてきそうなほど美しくて閑静で、僕は一目見てぐっときた。しかも「サウナの梅湯」の裏じゃないか!

*村屋 京都の出町柳にある居酒屋という体裁のカオス空間。酒で世界を異次元に変えようとしている。電気くんに紹介いただき、はまり、村屋の近くに山食音を作りました。

高瀬川

鴨川

縁があって鏡広告も

週末は朝サウナもやってる

建物の前には五条モールという呑処もあるインディペンデント・スペースもあり、聴き込み調査をすると、元ヤクザさんの事務所跡ということを知った。京都育ちの人は口を揃えて、その辺りには絶対行かないと言う人もいるような立地だった。実際のところ工事前は暗くてボロボロで、空間の印象は最悪と言ってもいい。でも、同時に、その場所に光を灯せたら、暗い森の中で光の当たる陽だまりのような場所を作り出せるかもしれないと直感した。昼まで飲んでいた酔っ払いは、酔っ払ったまま、その場所を借りる契約を申し出た。2022年5月のことだった。

勢いにまかせて契約したものの、暗くてボロボロのその場所が本当に陽だまりのような空間になるのか心配でしかたなかった。それでも転がり続けていったら、いろいろな縁と縁とが結びついていって、思い描いていた陽だまりのような空間が必然のようにできあがっていった。そして僕の自慢の場所となった。

4月29日、山と道 京都のオープン日の内覧会ではこの場所を作り上げてくれた仲間たちが集まった。この感動を共有するとともに、みんなのことを自慢したく、お酒が進む中でもらった言葉とともに紹介したい。

暗い中に光をともした人々

長坂純明
ひとともり株式会社代表。「生活のデザイン」を掲げ、奈良にて設計事務所+宿+カフェを運営している。
https://hitotomori.net/

工事前の物件

田所千絵
ひとともり株式会社 設計チーフ。ひとともり創業時より会社を支える頼れるスタッフ。レントゲン技師でもある。

お客様の荷物置き場、スマートフォンの充電設備もあるカウンター

山と道スタッフのイエンスさんを中心に山と道京都店を進めていくことにした。そこでイエンスさんから紹介いただいたのが、建築設計事務所ひとともりの長坂純明さんだった。すぐに鎌倉に来ていただいて、お酒を酌み交わしたらモノコトが進み始めた。奈良出身の僕の古い友だちで、グラフィックデザイナーの山野くんも旧知の仲らしく「長坂さんだったら最高だよ」と背中を押してくれたのもうれしかった。素晴らしい空間を作り上げていただきありがとうございました。

「この建物はもともとは京町屋の古い建物で中は真っ暗だったんです。 そのためトップライトで吹抜けに自然光を取り入れ、部屋の奥の天井をガラス天井にすれば明るさのコントラストが生まれてネガをポジに転換できると思いました。そしてそれはまさに京町屋が持つ明るさの特徴でもあります。この場所ならではの独自性のある空間になったと思います。かかわってくれたコラボレーター(照明、スピーカー、タイル、什器、そして工務店)は僕達の地元奈良や関西でいつも一緒にやっている仲間です。ひとつの思いを形にするための意思疎通も取りやすく、山と道さんの思いを共有しながら、おのおのの解釈で個性を発揮して好き勝手にやっていく。そういうやり方が好きだし、山と道さんに合ってるなと思い、気持ちよく進めていきました」(長坂純明さん)

「私は普段、意匠設計担当ですが、今回は設計を担当しました。これまでキッチンの設計をしたことはあったのですが、什器の設計にしっかりと取り組んだのは初めて。すごく勉強になりました。スマートフォンの充電器やグラスの洗浄機といったようなギミックを夏目さんやスタッフの中村さんが提案してくださって、それに応えるのが楽しかったです」(田所千絵さん)

NEW LIGHT POTTERY 
永冨裕幸と奈良千寿が2015年に設立した照明デザインスタジオ。店舗などの照明計画を手がけ、その経験を生かしたオリジナル照明をデザイン。奈良を拠点に活動する。

http://www.newlightpottery.com/

オリジナルデザインの行灯

山と道大仏研究所の照明計画をお願いしたのが始まりで、今回あらためてご参加いただけたのがうれしかった。奈良のスナックでみんなでカラオケをしたのは忘れられない思い出だ。

「特注照明をふたつ、玄関の行灯とトイレのブラケットライトを作りました。行灯は初めてのチャレンジだったので、自分にとって新しいことができたのも良かった。
僕はその行灯を作る時に、普段使うファブリックではなくて山と道が使っているような、新しい素材を使いました。できるだけ軽く作りたかったけれども、風に飛ばされないよう、軽さと重さを両立しないといけない。難しかったのですが、チャレンジできて良かったです」(永冨裕幸さん)

「 特注照明とともに、店内の照明プランもやりました。夏目さんの商品の見え方へのこだわりを、打ち合わせのときに感じました。京都店のようなラフ空間で、商品の見せ方をどのようにバランスをとるか。今までにはない雰囲気をつくるのが難しかったです」(奈良千寿さん)

機能的な心地良さをつくった人々

Atelier tuareg 岡崎裕司
大阪府箕面市にある金属の加工を中心としたアトリエ。プロダクトから建築物の構造まで、幅広く金物の設計と加工、製作を行う。真鍮と銅、錫など特殊な金属を掛け合わせた加工も行っている。
tuareg.jp

無垢のアルミニウムでできた迫力の回転什器

オープン一ヶ月前にメインの什器を変えようという話になった。ショーウィンドーで製品を見せるだけの飾りをつくるのではなく「実際に製品を取り出して触れるような機能性を形にした回転什器にしよう」というアイデアが出てきたんです。それに向けて、あっという間に紙製のプロトタイプを作ってくれたひとともりの田所さんに感動していたら、その二週間後には無垢のアルミで造られた重厚感のある什器のプロトタイプができあがっていた。

それは山と道のことを好きでいてくれた岡崎さんがいなければ成立しなかった。初めて試作品を見に行ったときには山と道が好きというそぶりをまったく見せていなかったけれど、できあがった作品には出まくっていて、破格の値段で、破格以上の表現をしてくれた。本当にむちゃくちゃかっこいいものができた。

「普通の什器やったら、コスト的な面もあって薄い板で作るのが一般的なんですけれど、今回は、8ミリのアルミの板を豪華に使って、どっしりとした感じで回るように仕上げました。

基本的に曲げ板で作るほうが、強度が担保されていいんですけど、今回は小口にタップを切ったり、ややこしいことしてます。すっきり見えるように、こだわりました。あとは、前面からのショーウインドーとしての見え方と、裏からお客さんが取る動作を含めた展示台ということなので、実際に触っても大丈夫な強度を担保できるように構造を考えました」(岡崎裕司さん)

listude 鶴林万平
2007年鶴林安奈とsonihouse(現listude)を立ち上げ、「音と空間、聴き手の中に豊かな循環を生む」をコンセプトに活動する。空間における響きの再現について考え抜いた12面体スピーカー”scenery”をはじめ、能動的な「聴く」からはじまる、もの・こと・感覚などを通し、様々な提案を試みる。
https://www.listude.jp/

vision
新多面体 同軸・無指向性スピーカー

奈良にある工房の美しい空間に、寄り添うように響く音を作り出しているlistude(リスチュード)のスピーカー。そのlistudeの立ち上げメンバーであり、鶴林万平さんの奥さん安奈さんが、電気くんの小学校の同級生だったという事実に驚いた。今回参加いただいたのはいろんな意味で必然だったと思う。

「奈良で多面体スピーカーを作っています。私たちのスピーカーは無指向性で、方向性を持たず、すべての方向に音が出る特徴があります。自然な音を再現できるよう、山と道 京都店に採用していただけたのだと思います。

スピーカーは天井から下がっているため、近すぎず遠すぎず、より自然に虫の音などを再現できます。スピーカーから鳴っている感じがあまりしないため、よりリアルな形で自然の音が聞こえる位置に設置しています」(鶴林万平さん)

東岳志(aka 電気くん)
サウンドエンジニア、山食音。ULハイキングやフィールドレコーディングから得た発想でサウンドインスタレーション、舞台や音楽の音響を製作している。京都ではブライアンイーノ展の空間音響やKYOTOPHONIEの音響、録音ディレクターを担当。

どこのお店にいっても音楽が流れていることが多い。音楽か無音しか選択肢は無いのか? 僕は第3の選択肢を電気くんに作ってもらおう、山を感じられる空間を音で表現してもらおうと考えた。目に見えないからこそ、深く広がる自然を感じられるのではないだろうか。外が晴れていても、店内では雨の音が鳴っていたり、外が悪天候でも、店内では山の気持ち良い晴れ間を感じられるよう、擬似的に山の自然環境を再現するサウンドインスタレーションを作ってほしいとお願いをした。

電気くんに頼んだのは、お互いが違う道に進んでも、新しい出会いの道を引き寄せたいという思いもあった。結果、僕が思うに世界で初めて、自然環境を表現する音響環境を形にした店舗空間ができあがった。このサウンドインスタレーションは本当にすごくて、鳥や蛙の鳴き声や水の音など、今そこにあるように自然を感じることができる。これからの電気くんが世界に貢献できる、求められる仕事の役割は大きいと思う。

「山と道は自然の中に入っていくハイキングのブランドなので、店内を歩き回った時に自然の中にいるような感覚が無意識に残るように、多くのスピーカーを使って、あちこちに自然があるように音を配置しました。音源は同期することなく、各自が好きに生きているように配置されていますが、雨や風の気象のもとでは、人間も動物も同じような反応をする点で関連づけられています。

サウンドインスタレーションに使用された音は、京都の北山、鴨川源流付近へ通って録った音がベースになり、沖縄や四国、ラダック、ネパール、イタリアなど、世界のいろいろな場所で収集した自然音も配置されています。季節に応じて、サウンドインスタレーションの音を変えていく予定です」(東岳志さん)

大きな目線で細部を仕上げた人々

イェンス・イェンセン Jens Jensen
環境開発/英訳監修担当。デンマーク生まれ、2002年より日本在住。鎌倉は2013年より4年ほど手をかけてDIYでリノベーションした家に住む。山と道では、オフィス・ショップの環境開発や英語のコミュニケーションを監修。他には、イギリスの『Wallpaper*』誌のジャパン・エディターや国内外のメディアに執筆も行う。愛犬のBUDDYと鎌倉の裏山やビーチで散歩するのが好き。

当初は山と道の海外ブランディングの相談からはじまったのにも関わらず、今では山と道の大仏研究所や京都店の場所探しから完成までを、一部大工仕事も行いながら完成までマネジメントしてくれる頼もしい仲間だ。今後山と道でどんな環境を作り上げていくのか楽しみだ。

「今回のプロジェクトのプロジェクトマネジャー的な役割をさせていただきました。最初、建築設計事務所ひとともりの長坂さんに声をかけたのは、長坂さん作品をよく知っていたから。長坂さんの家や事務所、宿泊施設、あとは近くにあるめちゃ素敵な中華のレストランとか、彼が作った作品を見てきて、いつか一緒に仕事がしたいなぁと思っていたんです。

個人でプロジェクトをやるのであれば、自分が設計をして、自分で大工までするけれど、これは山と道 京都店のプロジェクトだから、個人ではなかなかできないことをやってみたいと思って声をかけました。彼らの活動拠点の奈良も近いし。
いやー、結果は、なかなかいいんじゃないですか」(イェンス・イェンセン)

岡田工務店 岡田直樹
中卒で建築業界へ。鳶・土工・解体を経て、大工に転身。2018年に建築士の妻と大家業を始め、次は、貸別荘業を模索中。冬はスノーボード、春〜秋はSUPとキャンプに傾倒しながら、自然豊かな場所に訪れた人がリトリートできる空間を創るべく、日々、己の腕と感性を磨く。

カウンター周辺の什器を施工中

いつ現場視察に行っても気持ちよく対応してくれる岡田さん。信頼できる大工さんに出会えたのは本当に良かったです。この一言インタビューを企画した際に、設計の長坂さんも「工務店の木村さんや大工の岡田さんにも一言もらおう」と言ってくれたのでうれしくなりました。「こんなにいい空間ができたのは大工さんによるところが大きい」という長坂さんの意見に全面的に賛同します。

「京町屋ということで、強度をもたせながら施工や加工をしていくために、現場で臨機応変に作っていくのが一番大変で難しかった。とはいえ、攻めた設計やかっこいいデザインって僕も好きなので、シャープでかっこよくする意識をもって進めていきました」(岡田直樹さん)

NOTA&design 加藤駿介
1984年、滋賀県信楽町生まれ。京都精華大学在学中にIDEE experienceにてアルバイト勤務後、ロンドンにデザインを学ぶために留学。帰国後は映像制作、グラフィックデザインを現在のパートナーと開始。東京の広告制作会社に勤務後、地元である信楽に戻り、家業である「ヤマタツ陶業」にて陶器のデザイン、制作に従事。2015年、独立して、陶器を軸にしたライフスタイル全般のデザイン、制作販売業務を行なう「NOTA&design」を設立。2017年7月、信楽の工芸作家の作品、骨董品などを取り扱う「 NOTA_SHOP」を工房敷地内にオープン。https://nota-and.com/

山と道 京都のオリジナルタイル

NOTA & designのショップと工房に伺ったときは驚いた。山奥と形容してもおかしくない一本道を進んだ先にあったその場所は、圧倒的にデザイン感度に優れた空間だった。今回制作いただいたタイルは設置場所が少し薄暗い場所で、色が見えにくいのが残念ですが、自然光で見ると、高山にある岩のような雰囲気を感じる力作です! 少しタイルも余っているから自然光を感じる場所にも使いたい。

「滋賀県の信楽で焼き物の制作をやっています。
最初、この話があったとき、山と道のホームページを見て、自然の中で扱うギアとテーマカラーの青に着目しました。釉薬を焼き直しする手法を使ったので、自然なムラが出るような釉薬を選びました。夏目さんに来てもらったときに、山やコケの写真を見せてもらったことで、かなり派手な明るい緑、黄緑を散らしたタイルとなりました。遠くから見たときと近寄って見たときで見え方が違うというのが今回のテーマのひとつです。自然ってそういうものですよね」(加藤駿介さん)

(左)木村さん(右)パートナーで同じく嵩倉建設の林さん

嵩倉建設 木村晃子
建築学科を卒業するも才能の無さを思い知り、デザイナーは断念。大手内装会社に就職し、そこで施工会社の役割の重要性に気づくと同時に、面白さも知る。夫と共に嵩倉建設を創業。尊敬できる建築家やデザイナーの図面を見るだけで、至福。小学生3人の母でもある。家事はためてもストレスはためないのがモットー。
https://www.takakuraken.com/

入り口周辺は吹き抜けになっており、天窓から柔らかな光がはいる

木村さんの人柄のおかげでとても気持ちよく仕事を進めることができました。長坂さん同様、仕事を引き受ける検討段階で真っ先に鎌倉の店舗を訪問いただいたこともうれしかったです。結果「神回」の現場が形になったことをうれしく思います。ありがとうございました。

「一発勝負の仕事ばかりなので、同じ現場ってひとつとしてないのですが、この現場はすごい『神回』でした。 まず山と道スタッフの方々のキャラクターが濃い。イエンセンさん、夏目さんもそうですし、電気君とか、JK(山と道スタッフの中村)とか、くったくなく個性が強い人たちが次から次へと登場するんです。店をつくるときって、運営の仕方とか、ブランドの方向性とか、いろいろ考えながら、それを空間に落とし込もうと思うと、その使い方によってデザインや予算などバランスのいい落とし所を、手探りで見つけていかないといけない。個性豊かなみなさんの思いを最後までウェルカムで受け止めようとがんばりました。たいへんでした(笑)」(嵩倉建設の木村晃子さん)

VANAVASA 井伊乃士
2017年に株式会社サントレーディングジャパンを立ち上げ、輸入ディストリビューターとして活動をしつつ、2019年にアートギャラリーを併設した角打ちのできる酒屋『VANAVASA BEER+GALLERY』を鎌倉に開店。
https://www.instagram.com/vanavasa_kamakura/

京都店のカウンターで乾杯

お店の方向性を決める段階で、一晩で9軒以上を一緒に回り、京都のビール事情を視察したのはいい思い出です。当初キッチンを併設して料理も出そうと考えていたけれど、京都には素晴らしいお店が多いから、シンプルにボトルショップにしたのも、乃士くんのアドバイスが大きかったです。メインで取り扱わせてもらうビールは、鎌倉で繋がりの深いヨロッコビールと茅ヶ崎のパシフィックブリューイングです。

「鎌倉で「バナバサ」というボトルショップをやっています。アウトドアショップとボトルショップが一緒になっている店ってなかなかないと思いますし、京都でも初めてだと思います。そんな場所でお手伝いができて、本当にうれしいです。
このビールが山と道 京都の発展に貢献してくれたらうれしいです。夏目さんがプロダクトを愛して作られてきたように、このビールも愛されて作られたものだから、山と道のプロダクトを好きな人たちは、この山と道 京都店セレクトのビールが好きになると思います」(井伊乃士さん)

「山の帰りにサウナの梅湯にいってビールで乾杯。」山と道京都店でこれから様々な縁が産まれ、新しいハイカーの憩いの場になることを願います。

この場所も様々な縁が繋がって産まれてきたことをここで皆様と共有できました。こんどはみなさまが山と道 京都で新しい縁を繋いでください。

最後にオープニング日の内覧会に東京から駆けつけてくれたハイカーズデポの土屋さんや、名古屋のサークルズの田中さんに木村さん、モンジャ。そして多くの仲間たちやお世話になった方々。みなさんと乾杯ができて、最高の笑顔で始まりを迎えることができたことを光栄に思います。ありがとうございました!(山と道 代表夏目彰)

夏目 彰

夏目 彰

世界最軽量クラスの山道具を作る小さなアウトドアメーカー「山と道」を夫婦で営む。30代半ばまでアートや出版の世界で活動する傍ら、00年代から山とウルトラライト・ハイキングの世界に深く傾倒、2011年に「山と道」を始める。自分が歩いて感じた最高と思える軽量の道具をつくり、ウルトラライト・ハイキングを伝えていくことを「山と道」の目的にしている。