THE BACKPACK TEST 2023

現行ULバックパック10種類を背負ってみた(前編)

構成/文:三田正明
写真:大竹ヒカル
2023.06.08
THE BACKPACK TEST 2023

現行ULバックパック10種類を背負ってみた(前編)

構成/文:三田正明
写真:大竹ヒカル
2023.06.08

日夜、新製品の開発を進めている山と道。その中で、当然ながら参考のため他社の製品を手にとって勉強させてもらう機会も多くあります。気がつくと、そんなふうにして集まった他社のバックパックが海外メーカーを中心に10種類以上にもなっており、これだけUL系バックパックが一同に会することも滅多にない機会! 後学のためにも、スタッフ同士で同じ条件で背負い比べ、あーだこーだと議論してみることにしました。

2023年現在のULバックパックの動向を探るため、条件としては自重1kg以下に絞ってリストアップしてみましたが、現在の最新トレンドともいえるFKTスタイルのバックパックから、フレーム搭載の大型モデルまでバラエティに富んだ全10種が揃いました。

背負い比べたとはいえ、実際にトレイルで長時間使ったわけではなく、ここに紹介させてもらった製品の是非をこれだけで問うことはもちろんできません。ですが、実際にテストを行った実感として、あらためて同条件で背負い比べてみることで見えてくることもたくさんあり、非常に有意義な経験となりました(ただ、意見は各スタッフのものであり、株式会社山と道のものでないことご了承ください!)。

ともあれ、話し始めたら止まらない。4時間近くに及んだテストの模様を前後編に分けてお届けします。2023年のULバックパックの、明日はどっちだ!

前編で背負うバックパック

PA’LANTE Joey

ATELIER LONGUE DISTANCE
Hybride EPL Ultra 200

YAR GEAR 28L Mountain Drifter

LITEWAY Gramless Pack DCF

GOSSAMER GEAR Fast Kumo

背負ってみた人々

左から
前原秀則:日々、多くのお客さまのバックパック購入の接客をさせていただく山と道材木座店長。元理学療法士で身体についての専門知識があり、ニュージーランドを縦断するロングトレイル「テアラロア」のスルーハイク経験あり。最近はもっぱらエクストリームな軽量化に傾倒中の体力自慢のガッチリ体型。(身長178cm 体重75kg)

渡部隆宏:山と道製品の開発やリサーチに携わる山と道ラボ研究員。本人はもっぱらランに傾倒し、誰もいない夜の山を走り回ったり、日本海から太平洋まで一気に駆け抜けたりと、エクストリームな山行に傾倒する山と道きっての「変態」。痩せ型だがスタミナあり。(身長175cm 体重65kg)

三田正明:アウトドアライターとしても長年の経験がある当山と道JOURNALS編集長。JOURNALSでは過去『THE BACKPACK TEST 2018』も執筆。自身は普通のULハイキング好きで、中肉中背のノーマルタイプ。(身長175cm 体重67kg)

本稿のバックパック各部の名称については下記に基づいています

はじめにMINIを背負ってみる

三田 今回は、10種類のザックに24Lまでを36Lまでに普段山と道の直営店の店頭でMINIに入れているのと同じ5kgのウェイトと、38Lから60LまでにTHREEに入れている8kgのウェイト、それぞれを入れて同一条件で背負い比べていってみたいと思います。でも、まずは他社さんのザックを背負う前に、評価の基準としてMINIを背負ってみましょうか。

MINI 2023 Gray
容量:30L/32L
重量:380g/398g
メイン素材:70D HT PC コーテドリップストップナイロン/ブラックウープファイングリッド

三田 (MINIを背負ってみて)これはもう、我々としては当たり前すぎて、特に意見がないくらいだね(笑)。

前原 (背負ってみて)確かに背負い慣れ過ぎていてなんと言えばいいかわからない(笑)。自分にとってはもはや「バックパックてこういうもの」という感じなので。とはいえ上半身と肩で背負いつつも荷重が腰にあたる背負い心地はやはり良いですよね。

渡部 (背負ってみて)たしかに背負っても何も感想がない(笑)。自分にとってのザックのスタンダードになっているので、何か他の人なら感じる不具合があるとしても慣れすぎて判別できなくなっている。

三田 たしかに肩荷重で背負うULザックとしてMINIは日本ではすでにスタンダードともいえる存在だよね。あとポケットなんかの使い勝手も良くて、バンジーコードもいっぱいあって拡張性も高くて、使っててストレスがあまりない。強いて言えばもっと小さいポケットとかもあったら便利かなと個人的には思ったりするけど。でもMINIも登場から10年くらい経っているので、これが最近の新しいザックと比べるとどう見えるのかは気になるね。では早速見ていきましょう。

テストの共通ウェイトに使用した山と道直営店でバックパック展示用に使っているあんこ。5kgのものと8kgのものがある。

① PA'LANTE - Joey

現代のFKTザックを代表する存在


容量:28L
重量:395g
メイン素材:210D HDPEナイロングリッドストップ
構造:フレームレス

https://palantepacks.jp/products/joey

三田 まず見ていくのはパランテのジョーイ。ハイカーズデポのサイトで土屋智哉さんが書かれている『ULハイキングの変遷』 にもあるように、現代のULザックの最新トレンドは、FKT(=Fastest Known Time)と呼ばれるロングトレイルの最速踏破記録を目指すようなスタイルに向けたものになってきているよね。要は長い距離を、最小の荷物で、ほとんど休まずに歩き続けるのがFKTで、ザックもそれに合わせて小型で、立ち止まらずに荷物を取り出せるようなアクセスの良いポケットがたくさんつけたものが増えている。中でも2015年創業のパランテは現代のFKTザックに先鞭をつけたイメージがある。

渡部 パランテは創業者自身がFKTハイカーなんですよね。

前原 (背負ってみて)これは俺にはサイズがちっちゃい気が。ストラップを全部ゆるめても圧迫感がやばいです(笑)。でもこのザックは1サイズ展開だから、だとしたらめちゃめちゃタイトですよね。今回みたいに6kgくらいのパックウェイトだとちょっと苦しくなるかも。

渡部 (背負ってみて)先にショルダーの形をつくって、気室を後でつけたような感じですね。私でも若干小さいかも。このウェイト(6kg弱)だと、若干息が苦しくなる。胸のスターナムストラップが1本か2本かの違いもあると思うんですけど。2〜3本あるザックって、重くなると面で圧迫されるんですよ。結構余裕がないときつい。


胸のスターナムストラップは2本閉め。身長175cm、体重67kgのモデルが背負ってもストラップの遊びがほとんどないほどタイト目な作り。ショルダーハーネスにはウルトラストレッチ製のポケットx2がそれぞれあり。ショルダーストラップのボトム側基部はリングから2箇所に伸びる独特な設計。

三田 このジョーイはパランテの中でも24Lといちばん小さいモデルで、ショルダーが3Dメッシュ製で付け根が面になっている。肩のこの作りはトレランザックとかランニングベストに多い?

渡部 これはランに振った形ですね。

前原 パランテは、もっとショルダーが普通のザックのような形もありますよね?

三田 代表モデルのV2は普通のショルダーストラップみたいだね。このジョーイは容量28Lでパランテでも小さいサイズなので、よりランに寄せてるんだね。

渡部 背負い心地はタイトですね。揺れないけど遊びがなさ過ぎる。欧米とかのでかいランナーはこれだと背負えない気がしますね。3kgくらいが適正で、今日みたいに5kg背負うようなザックじゃないのかも。

三田 (背負ってみて)確かにこれでストラップ全開? 自分は身長175cmで67kgだけど、小さいね。俺より胸板ある人なんていくらでもいそうだけど。胸のスターナムストラップを2本つけると確かに圧迫される。上の1本だけでもいいかも。(ストラップを1本外してみて)うん、こうすると自然。でもこのショルダーの構造は、より肩に沿って面で支えられている感じはあるね。ブレないし、俺はこのくらい小さいサイズ(28L)のザック選ぶならこれでもいいかもって思う。


ショルダーストラップは基部が面構成になったトレランパック的なデザイン。素材はメッシュ生地+芯材。

前原 でもこれだったら荷物をもっと軽くしたいな。5kg以下だといいなーって感じ。

三田 メインの荷室も小さいし、外付けもあまりできないし、荷物は自ずと切り詰める感じになるよね。

渡部 ボトムポケットは両方あけて貫通してくれたらいいのになって思います。そしたら山とMinimalist Padとか挟めるのに。


新たなスタンダードデザインとなった感のあるボトムポケット。

三田 でもボトムポケットはやっぱりみんなが便利だと思うから、ここまで広がっているんだよね。俺は使ったことないからわからないんだけど。 

前原 やっぱりサイドポケットより荷物の取り出しがラクなんでしょうね。サイドは腕が窮屈だけど、下だったらズバっといけるんで。

渡部 確かに最近は肩にボトルホルダーついてるのが多いし、サイドポケットにはドリンク入れなくなりましたね。重量物がサイドの下の方にあるのって荷重バランス的に明らかに良くないんで。

前原 でも自分は肩に荷重乗るのは嫌だけどなあ。

三田 俺も好きじゃない。

渡部 このメッシュはウルトラストレッチっていうダイニーマ糸が入った頑丈な伸縮素材ですね。

前原 これもいまの人気素材ですよね。ウルトラストレッチを見るようになったのもパランテからだった印象があります。この素材だからボトムにストレッチ素材のポケットをつけられたのかも。

三田 普通に考えたら、この位置にポケットあったら岩場とかに置いたらすぐに穴開きそうだもんね。

渡部 この素材は摩擦に強いんで、ボトムとか固いものと触れ合う箇所に使っても穴が開きにくいんです。


フロント/サイド/ボトムのポケットがすべてウルトラストレッチのみで構成され、補強されていないことからも強度への自信が伺える。

三田 コンパクトで軽量な袋にベスト形のショルダーストラップがついてるのってファストパッキング用ザックとも似てると思うんだけど、こうしたFKTザックはそれとは似て非なるものなのかな?

渡部 もっとタフな作りですね。トレランスタイルだとここまで高耐久な素材はいらないですから。

三田 ファストパッキングよりもっと長い期間、これで補給しつつ何週間も何ヶ月も歩くようなハイキングを想定してるのかもね。あとファストパッキング用ザックだとまず走ることに焦点を置いてるけど、FKTザックは早歩きくらいに特化している感じなのかな。でもこのジョーイに限らず総じてパランテは興味深いブランドだな。こういうザックのひとつの形を作ったし、影響も大きいということが今回集まった他のザックを見てもわかる。

前原 道具がこれだけ軽く小さくなったから出てきたザックみたいに思いますね。

② ATELIER LONGUE DISTANCE - Hybride EPL Ultra 200

バックパックとランニングバッグを融合したフランス製ULザック


容量:25L
重量:375g
メイン素材:ウルトラ200
構造:フレームレス

https://shop.aifa.co.jp/shopdetail/000000000160/

三田 次は「アトリエロングディスタンス」って読むのか、「アトリエローングディスタンセ」って読むのかな? フランスのメーカー。本国サイトを見るとカスタムオーダーがメインで、詳しいことはわからないけど、このモデルは日本の代理店がカスタム品から形を指定して輸入してるのかも。これは素材が最近はやりのウルトラ200で、軽くて対摩擦性と防水性に優れているけど値段が高いという、DCFと似たような構造と特徴の生地だね。このザックの特徴はショルダーが厚手のメッシュ素材のみでできていて、中に芯も入っていないこと。

前原 (背負ってみて)ショルダーストラップに芯が入っていないのは全然気にならないな。総メッシュなんで、通気性は良さそうですね。パランテより柔らかい気がする。この脇腹の構造がいいのかな? 普通は両肩と腰の3箇所で支えられているのが上半身で全体的に支えられているというか、後ろから抱っこされてる感じ。でも荷重バランスが肩甲骨より下にある気がして、MINIよりも下な印象。下からも支えている構造なんで、荷重バランスが下からの印象になっちゃうのかも。


サイズ調整できないオールメッシュ生地のショルダーストラップ。ザック側の基部が面構造になっており、脇腹にポケットもついている。

渡部 私はそこが違和感あったんですよね。このハーネスだとアンサー4のフォーカスみたいにボトムを小さくして荷物が入らないようにしないといけないと思うんですよ。

前原 そんな感じがします。

三田 見た目は良い位置で背負えているように見えるけどね。

前原 あとショルダーポケットにボトルを入れると肩に当たる。ここは嫌かも。

渡部 (背負ってみて)自分の体型でもショルダーポケットが低過ぎる気がします。でも、いま背負っている6kg弱くらいならこのまま長時間行けそうな気もしますね。でも、やっぱ脇腹の感じが気になるかな。ここのバランスが人を選びそう。

前原 そこに荷物入れても荷重バランスが変わりそうですしね。

渡部 もっとペラペラだったらいいのかも。やたら存在感があるんですよね。

三田 (渡部から受け取り背負ってみて)あ、ショルダーストラップの調整が無いんだ。そうかこの形は決まっているんだね。でも、なんか自分の体格にはあってないかな。もうちょいショルダーストラップを引きたい感じがする。

渡部 そうですね。もっと上の方にあげたい。

前原 サイズ調整できないって使う人選びますよね。

三田 でも本国ならカスタムオーダーだから、そのへんの調整は注文時にできるってことなのかも。


シンプルだが細部までセンスを感じる仕上げ。

三田 さすがフランス製というか、このバンジーコードの色とか、デザインは細かい部分まで気がきいてるよね。見た目はすごぶる良いと思う。でも残念ながら体に合わなかったな〜。

前原 自分は5kgの重さなら大丈夫でした。

渡部 私もパランテよりこちらの方が好印象でしたね。

③ YAR GEAR - 28L Mountain Drifter

シンプルな現代アメリカンULザック


容量:28L
重量:417g(実測)
メイン素材:ウルトラ200
構造:フレームレス

https://www.yargear.com/products/28l-mountain-drifter

三田 次はヤーギアの28Lマウンテンドリフターというザック。ここは元スルーハイカーが1人でハンドメイドで作ってる「ザ・アメリカのザ・ガレージブランド」って感じのメーカー。これも素材はウルトラ200で、昔からのレイウェイ的なULザックに最新素材を載せて、ショルダーとボトムにパランテ以降って感じのポケットつけましたみたいなデザインだね。28Lって言ってるけどもっと入りそう。

渡部 これはガレージグロウンギアで見つけたんですけど、レビューがめちゃくちゃ高評価だったんですよ。”Best Backpack Ever! “みたいな。

三田 へ〜。何がそんなにいいんだろ? 背面はフレームもパッドもない所謂ULザックって感じだけど。でもサイドポケットはかなり大きい。フロントとボトムポケットはライクラ素材なんで、特にボトムは破れが気になるな。


フロント/ボトムポケットはライクラ素材。ヒップベルトは取り外し可能。

前原 (背負ってみて)なんか背負い慣れた感じだな。MINIやMINI2に近い感じ。荷重バランスも近い感じ。

渡部 (背負ってみて)ほんとだ。お尻の上に荷重が乗る感じがMINIっぽい。悪くないですね。


ショルダーストラップにはライクラのポケットつきだがボトルを入れると腕に当たってしまう。ヒップベルトも位置が高い。

三田 (背負ってみて)確かにMINIだね(笑)。背面にパッドが入っていない分、MINIより柔らかい背負い心地。でもショルダーのポケットはこれもボトル入れると腕に当たってこすれちゃうね。ここはもうちょい考えて欲しいかも。あとヒップベルトの位置が、背面長が長い方の19インチのモデルでもちょっと上過ぎでお腹の上に来ちゃう。ヒップベルト取り外し式だから、基本的に外して使うことになりそう。でもハンドメイドで作られていることもあって好感は持てるザックだね。何かの縁でこれを使うことになっても、大切に愛着をもって使えるんじゃないかな。

④ LITEWAY - Gramless Pack DCF

ウクライナ発。現代的なディティールのULザック


容量:35L
重量:390g
メイン素材:DCF
構造:フレームレス

https://liteway.equipment/packs/gramless-dcf

三田 次はライトウェイのグラムレスパックDCF。ウクライナのブランドです。早く戦争終わってほしいね。これは素材がDCFのモデルだけど、現在は後継のウルトラ200素材のモデルに変わっているみたい。こんなとこも数年前まで大人気素材だったDCFからエコ対応のウルトラ200にバックパック素材の覇権が移ってきているのを感じるね。でも、このザックはサイズが適応身長150cm~175cmの「S/M」なんで178cmの前原くんには小さいかもしれない。

前原 これはパッドが柔らかいな。しかも裏面のメッシュの上にもライクラを貼ってて芸が細かい。(背負ってみて)ああ、なんだろう…ショルダーストラップが身体の外側に寄り過ぎている感じがします。あと肩荷重させたいのに腰荷重になっているというか、身体にフィットさせようとすると、上半身全体で背負うのではなく腰に突き刺さってくる感じ。ヒップベルトもつけてみよう。これも2箇所で止まってる独特な形状だけど、サイズが小さいせいか腰でなく腹の上に来ちゃうな。こうしてみるとヤーギアはめちゃくちゃバランス良かったかも。ちょっと背負ってみてください。


ヒップベルトは基部が2本になっている独特な形状で取り外し可能。

渡部 (背負ってみて)私は荷重が腰に乗ってくる感じはしないけど、ショルダーストラップ同士の幅が狭いな。

三田 測ってみるとショルダー感の幅6cm。ちなみに山と道のMINIは7cm。でも、これのザックはサイズが「S/M」なんで「M/L」だったらもっと幅が広い可能性もあるけど。 (背負ってみて)確かにずっと背負ってると肩が痛くなりそう。自分は身長175cmだけど、やっぱりサイズが小さいのかな?、あとヒップベルトもサイズのせいかこれも腰に乗らないでお腹の上に来るんで、これならなくてもいい。


柔らかめのショルダーストラップはメッシュの裏地の上にライクラが貼られた凝った作り。フロントポケットと同じウルトラメッシュ素材のポケット付きだが、これもボトルを入れると腕に干渉してしまった。背面にはパッド/フレームなし。

渡部 背中から荷物が離れる感じで、一体感がないんですよね。荷重に応じて背面が変形してくれなくて、どうしても変な形になってしまう。

前原 ザックが真ん中あたりで折れ曲がってくの字になってるみたいな印象なんですよね。MINIは自分には少しサイズの小さいMサイズでも背負い心地は悪くないんだけどな。

三田 サイズのせいかもしれないけれど、ちょっとちゃんとした評価ができなかったな。機会があったらM/Lサイズも背負ってみたい。

⑤ Gossamer Gear - Fast Kumo

FKTザックに生まれ変わったクモ


容量:36L
重量:470g
メイン素材:70Dロビックリップストップナイロン
構造:フレームレス

https://shop.aifa.co.jp/shopdetail/000000000165/

三田 お次はファストクモ。アメリカのULブランドの草分けであるゴッサマーギアのクモをFKTザック的にモデファイしたモデルです。ショルダーストラップがベスト型になって、背面長もクモより短くなっているとか。

前原 (背負ってみて)ショルダーだけでもめちゃくちゃしっくりくる。これはヒップベルトしなくても良いレベル。背面長が短いから、ヒップベルトもヒップというか肋骨の上に来てる感じだし。 取り外し式だから、俺はない方がいいな。あ、ヒップベルトは位置を下げられますね。(下げてみて)うん、これで腰骨のトップに乗ってる感じです。これだったらあった方がいいかな。とにかくショルダーはめちゃいい。全然ブレないです。


ベスト型ショルダーストラップには複雑な構造のポケットが。こちらはボトルを入れても腕に当たらなかった。取り付け位置を変えられるヒップベルトにもポケットつき。

渡部(背負ってみて)全然違和感ない。どこかに変に荷重がかかることなく、上荷重でも下荷重でもなく、面で支えられている感じ。

三田 ショルダーストラップのポケットも2つずつあって、凝った作りだね。

渡部 デザイン的にはゴテゴテした感じがありますが、すごい考えられていて、こなれている感じがします。あとショルダー自体の作り込みもすごい。分厚いパッドと肉抜きした部分とメッシュがあって。こんなの縫うの大変そう。


メッシュやパッドや芯材が複雑に組み合わされたショルダーストラップ。形状や厚みも非常に好印象。

三田 (背負ってみて)確かにショルダーストラップの形が良いね。S字だし、付け根の細いとこから太くなっていくのがより肩に添う感を出している気がする。ショルダーストラップをゆるめた状態でもフィット感が良い。形状も厚みもいい。

渡部 背負ってる姿は上荷重に見えないで、下がっている感じがするんですけどね。


それほどザック位置は高くないが、非常に良い位置に収まっている感覚。背面にはゴッサマーギアの共通ディティールである取り外し可能な専用パッド入り。メッシュのサイドポケットは横からも出し入れできる仕様。

三田 でもちゃんと良い場所で荷重されているよね。ただ背面長は、MINIとかの背負い心地に慣れているので、もう少し長くてもいいかな。実は少し背面の長い通常のクモの方が好きだったりして。ゴッサマーって勝手なイメージで新しいことにガンガン挑戦していくようなブランドとはちょっと違う気がしてたけど、ちゃんと進化してるんだね。でもディティールを見ていくと、もはやガレージ感ゼロだね。マスプロメーカーみたいな完成度。

渡部 ちゃんとしてますよね。

三田 若いブランドより、一段上のちゃんとしてる感がある。470gでちょっと重いけど。

渡部 私は100gくらいの重みがプラスされたとしてもここまでフィット感が良いなら気にならないな。

三田 クラシカルなルックスに最新の背負い心地って感じのザックだね。でも、ここまでやるなら袋のデザインもクモと変えても良かったのかもと思っちゃう(笑)。でもそのくらいの完成度だし、意欲作だと思ったね。

【後編に続く】

三田 正明

三田 正明

フォトグラファーとしてカルチャー誌や音楽誌で活動する傍、旅に傾倒。 多くの国を放浪するなかで自然の雄大さに惹かれ、自然と触れ合う方法として山に登り始める。 気がつけばアウトドア誌で仕事をするようになり、ライター仕事も増え、現在では本業がわからない状態に。 アウトドア・ライターとしてはULハイキングをライフワークとして追い続けている。 取材活動のなかで出会った山と道・夏目彰氏と何度も山に行ったり、インタビュー取材を行ったり、酒を酌み交わしたりするうちに、いつの間にかこのようなポジションに。 山と道JOURNALSを通じて日本のハイキング・カルチャーの発展に微力ながら貢献したいと考えている。