誰にでもある、思い出の道具やどうしても捨てられない道具、ずっと使い続けている道具。
この『HIKERS’ CLASSICS』は、山と道がいつも刺激を受けているハイカーやランナー、アスリートの方々に、それぞれの「クラシック(古典・名作)」と呼べる山道具を語っていただくリレー連載ですが、今回からは、数回に渡って『山と道HLC』のアンバサダーを勤めていただいている方々のCLASSICSを紹介していきます
山と道HLCアンバサダー第1弾となる今回の寄稿者は、チベットやカラコルム、ラダック等の山での生活文化や風景に魅せられてアウトドアにハマり、旅の経験からアジアや中東各地の手仕事と結びついたアパレルメーカーを経営しつつ、HLCアンバサダーとしても、ハイキングにまつわるイベントを企画、発信している、中川裕司さんです。
ウルトラライトスタイルで野山を駆けめぐり、ハードリカーを飲みながら旅するように山で遊ぶ、愛称「きんにくん」のCLASSICSとは?
NOTE
山あいの暮らしとUL
20代半ば、カメラをぶら下げて、長い時間をかけて海外を放浪し、その多くをチベット文化圏やインドの山奥、北パキスタンなどで過ごしました。興味があった文化圏の生活は、山あいだったせいか、どこでもシンプルだったし、合理的でした。
帰国して、アウトドアフィールドへのアプローチは間もなくでしたが、ことULカルチャーに足を踏み入れるまでは長くかかりました。性格から、今で言うインフルエンサーのブログ(SNSは当時ほぼない)などもチェックしていなかったですし、メディアにも疎かったのも原因だったと思います。ギアに対しても、運よく出会った人たちの見聞を鵜呑みしている部分が強かったです。
その運よく出会った人の中に、その後、大いに関わることになる豊嶋秀樹さん(山と道HLCディレクター)がいました。豊嶋さんとの出会いから、山と道代表の夏目彰さんとの出会いもありました。そこから急速にULへの意識が変わっていったように思います。
より軽く、より遠く、身軽に歩き、走るという手段以上に、生活に落とし込んだ、いわばライフスタイルとしてのULが、自分の中で腑に落ちた気がしました。冒頭で述べた、旅で出会ったシンプルで合理的な、山あいの丁寧な暮らしとも結びついた気がしました。
旅するように山をいく
山を旅するような感覚が好きで、歩いたり走ったりしながら、煮炊きし、大好きなハードリカーと焚火をやりながら、野と寝る。長く自然に身を置きたいと思うし、それを仲間と共有するのもまた格別だと思います。さらに目標やテーマ、ゴールを決めておくと、なお楽しい。もちろんうまくいかないこともあるけれど、次回の課題や楽しみが増えます(笑)。
例えば、前厄だった去年、大峯奥駈道という修験道のロングトレイルを厄祓いで熊野本宮大社までファストハイキングで縦走しました。本厄となる今年は、高野山から熊野本宮大社までを繋ぐ小辺路をランで抜け、そのまま那智の滝(熊野那智大社)を経て、勝浦の海までと思っていましたが、雨の影響と、同行者の体調不良もあって熊野本宮大社でDNFとしました。諦めるに至るその過程や、その後の楽しみ方も含めて、トラブルにどう対処しマネージメントするかが、旅の醍醐味だと思っています。
長く使える道具を選ぶ
ギアを選ぶ際に、軽さや、使い勝手と同じく大事だと思っていることは、長くつきあえるかどうかです。アウトドアでは大切に使えど、手荒になるのは必至なので、修理が可能な道具かどうかも大きな基準にしています。愛着がある道具が増えるのは幸せだと思います。限られたお金は、道具を買うよりもフィールドに赴くことに使いたいのです。