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短い休暇でも充分に楽しめるJMTセクションハイクガイド

文/写真:石田巧
2018.08.03

短い休暇でも充分に楽しめるJMTセクションハイクガイド

文/写真:石田巧
2018.08.03

いつか行きたいJMT。
でもなかなか行けないJMT。

カリフォルニア州シェラネヴァダ山脈に340km渡って伸びるジョン・ミューア・トレイル(JMT)は、ハイカーの聖地であり、トレイルのなかのトレイルです。そんなJMTについては、山と道JOURNALSでも山と道スタッフ黒澤がスルーハイキングをした記録をお伝えしましたが、ともあれ多くの労働者にはスルーハイクに2週間〜3週間、前後の行程を入れると3週間から4週間の休みを取ることは、なかなか難しいことであることも現実です。

でも、スルーハイクではなくセクションハイクを繋ぎ合わせれば、長期休暇を取れなくても全行程を歩き通すことが可能なのでは?

今回はそんなアイデアを実行中で、過去4年間の夏休みを利用してJMTのセクションハイクをご夫婦で続けられている石田巧さん(『Make Your Own Hike』の投稿募集にご応募いただきました)に、10日前後で行くJMTセクションハイクの超実践的ガイド&TIPSをまとめていただきました。

「いつか」は、適切な知識と情報と、ちょっとした決断があれば、「いま」になるかもしれませんよ。

はじめに

2014年から夏はジョン・ミューア・トレイル、冬はニュージーランドのトレイルを妻と歩いている。これはもう、間違いなく山と道の夏目さんご夫妻の影響だ。ただ、サラリーマンである自分が取れる休暇は現実的に考えると10日前後。 ロングトレイルだと、必然的に一部区間のセクションハイクに限られてしまう。本当は夏目さんや山と道スタッフの黒澤さんのように長期間歩きたいけれど、そんなに休めない……なんて、自分と同じように思っている人は案外多いと思う。

そんな方にお勧めなのがセクションハイクだ。数日間のハイクでも十分楽しめるし、交通の便やサイドトレイルを考える必要はあるけれど、セクションハイクを繋ぎ合わせてJMTの全行程を歩き通すことだって可能だ。

今回縁あって、限られた日程の中でJMTを楽しむためのTips(コツ・豆知識)について寄稿することになった。正直、まだJMTをすべて歩き終えてもいないのにTipsを語るのは多少おこがましい気持ちもあるけれど、「いつか歩いてみたい」と思っている方の参考になればと思い、幾度の失敗を経て学んだ自分なりのTipsをまとめてみた。

①スケジュール

【2015年】

【2017】

2015年と2017年のセクションハイクのスケジュール。フライト時間を含めて8泊9日or9泊10日が自分たち夫婦の基本パターンだ。

このスケジュールだと実際にトレイルを歩ける日数は5日程度 (JMTに合流するサイドトレイルの行程も含む)で、どちらのケースも到着したら翌日からトレイルインしているし、ハイク後の観光を特別多くとっているわけではないので、 これが5日間歩く際の最低限の必要日数だと思っている。

ポイントはロスアンゼルスに到着したその日中にトレイルヘッド(多々ある) のある最寄りの町まで移動しておくこと。そうすれば翌朝パーミット(トレイルを歩く為の許可証)を取得した後でガス缶などを購入し、登山口まで移動したとしても昼前から歩き出すことができる。もちろん日程に余裕があれば、体力と時差ボケを回復させつつ山旅の準備を万全にするため、ロサンゼルスに一泊するのもありだ。

いずれにしても、スケジュールを組む段階から確実に旅は始まっている。あーでもない、こーでもないと悩む時間は面倒くさくも楽しい作業だ(と、自分に言い聞かせている)。

今年(2018年)、自分はセクションハイクのルートの都合もあるが、ハイクを4日間にして、そのぶん、ヨセミテとロサンゼルス観光に充てる予定。自転車をレンタルしてヨセミテを回ったり、LAを拠点にするエンゼルスの大谷翔平選手の試合を観戦したり、そんな楽しみ方を交えても楽しいと思う。

②交通手段

【飛行機】

山に囲まれたマンモスレイク空港

JMTまでは、まず日本からサンフランシスコかロスアンゼルスに飛ぶのが一般的だけど、自分の場合は直行便が多い、航空会社の選択肢が多い等、経済的な理由でロスアンゼルス一択。

さらにロスの空港からはJMTの拠点となるマンモス・レイクまでの便(アラスカ航空)も一日一便就航している。この便は夕方発なのでロスアンゼルスには昼過ぎに到着(日本は同日夜発)しておけば充分だ(あまり早く到着しても暇を持て余してしまうので要注意)。

自分たちはチケット手配は毎回“トラベルコ”というサイトを活用している。航空券の最安値が一目で分かる上、「ロスアンゼルスからマンモスレイク」といった海外の空港をつなぐ便も簡単にWEB上で手配できる。

また、アメリカに渡航する際はESTA(電子渡航認証システム)の取得が必須。この認証を受けないと飛行機の搭乗が出来ないので、事前にオンライン申請を忘れずに。

トラベルコ(旅行比較格安サイト) https://www.tour.ne.jp/w_travel/

【バス】

ランカスターからローンパインへ運行するバス

ロスアンゼルス北部にあるランカスターという街からシエラネバダを南北に走るバスは、ローンパインやビショップ、マンモスレイクなど、JMTのトレイルヘッドとなる町を繋いでいる。

ネックなのはランカスターまでの移動手段で、ロスアンゼルスのユニオン駅から電車で向かうか、空港から乗合バスに乗るのが一般的だが、飛行機の到着時間にもよるが乗継ぎはあまり良くない。また、バスの運行する曜日が限られるため、事前確認と予約が必要不可欠だが、バスチケットはウェブ上で手配と決済が可能だ。ローカルではレッズメドゥやサウスレイクなどの登山口を往復するバスもあり。ただ、交通機関は時期によって変更する場合があるため、要事前確認。

バス:Eastern Sierra Transit https://www.estransit.com

【電車】

ロスアンゼルスからランカスターへ行く主な手段はメトロリンクという電車で、ダウンタウンに位置するユニオン駅から発着している。1日に何本も運行しているが、注意点はランカスター発のバスへの乗継ぎ時間だ。バスは14時に出発するため、それまでに到着しておかなければならない。ロスアンゼルス空港着が早朝もしくは市内に一泊してランカスターへ向かう人にとっては、安価で確実な手段だと思う。

空港からユニオン駅までは直行バス(FLY AWAY BUS)もある。

METRO LINK https://www.metrolinktrains.com   
FLY AWAY BUS https://flylax.com/en/flyaway-bus

【レンタカー】

一番確実だが、ハイク中も借りておくとなると、それなりに費用がかかる。片道で返却できればベスト。その点、Uber(自動車配車アプリ)は魅力的に思えるが確実性で今ひとつ。

【タクシー】

JMTは南下するにつれて交通が不便になる。トレイルヘッドの町にバスなど公共交通機関があれば問題ないが、無い場合はトレイルヘッドまで事前にハイカータクシーをネット予約しておく、帰りはヒッチハイクも前向きに選択肢に入れる等の対策が必要になる。

アメリカの田舎町にはいわゆる流しのタクシーは存在しないので、ハイカー専用のタクシー会社に事前に予約する。電話かメールでの手配が一般的で、自分は毎回拙い英文メールを作成して予約している。日付、出発地、目的地、人数などを伝えれば、手配の可否、料金を知らせる返信がちゃんと来る。区間と料金の目安はホームページにも記載されているので参考になる。もちろん料金はそれなりにかかるが、例えばパーミットを受け取った場所で待ち合わせしてそのままトレイルヘッドまで行ってもらうことも可能だ。

余談だが、ロサンゼルスの空港からマンモスレイクまで流しのタクシーで行くと約6時間、10万円以上かかる(飛行機欠航時に使用した過去あり…泣)。

ハイカータクシー:
East Side Sierra Shuttle www.eastsidesierrashuttle.com
MAMMOTH TAXI(WEB決済可) http://www.mammoth-taxi.com

【ヒッチハイク】

日本でやる人は少ないけど、アメリカでは珍しい光景ではない。 コツは行き先が分かる目印とスマイルあるのみ!

③ルート

上は今まで歩いたセクションと、今年2018年と来年2019年の予定。

1日にどれだけ歩けるかは個人差によるし、トレイルの状況によっても異なるので一概には言えないが、高低差とサイドトレイル、残雪は必ず考慮すべき。地図上では短くても峠(パス)超えと平坦な道とでは雲泥の差があるので、余裕をもったルート設定が○。また、問題が起きた時にエスケープできるルートを予め設定しておくと心にゆとりができる。

実際、2015年のハイク時は予定していたバーミリオンバレーリゾートまで辿り着けず、手前のフローレンスレイクでトレイルアウト。更に2017年の時も「今世紀最大の積雪」により、残雪と渡渉に苦戦。タブースパストレイルというマイナーなルートを使ってエスケープした。 参考までに、自分たちの歩行距離は1日に15~25km程度(標高差や残雪、渡渉の有無によって異なる)。歩く時間は初日と最終日を除くと朝8時~夕方5時位まで。

トレイルの情報はJMTの一部管轄区域になっている「インヨー森林局(Inyo National Forest)」のウェブサイトで確認すると分かりやすい。積雪や道路(雪解けによる水の影響で道路が封鎖されることがある)、森林火災の状況など各種情報を入手できる。

トレイルヘッドによってはゴールしても無人の場合もある。 近くに大きな道路の有無、施設の有無などを確認した方が良い。 最悪、人さえいればなんとかなる(ハズ)。

④パーミット

パーミットとルールが書かれた紙

JMTはパーミット(トレイルを歩くための許可証)がないと歩けない。トレイル上でパーミットをチェックされることは稀だけど、レンジャーに出会うと提示を求められることがあった。

各々のトレイルヘッドによって自然保護の一環で1日の入山人数が限られており、早いもの勝ちで埋まっていくので、パーミットは予め日本で手配しておくのがベスト。キャンセル待ちもできるが不確実だ。

【パーミットの予約方法】

マンモスレイク のウィルダネスセンター

自分たちは毎回 Inyo National Forest(インヨー森林局)のウェブサイトから申し込んでいる。スタートするトレイルヘッドによって管轄する森林局は異なり、他にも
“Yosemite National Forest” “Sierra National Forest” “Kings Canyon National Park” “Sequoia National Park”があるが、自分たちは使ったことがないのでここでは割愛させていただく。

イーストシエラ(JMTのあるシエラネバダの東側)全般のトレイルヘッドの場合、管轄はインヨー森林局となる。

Inyo National Forestのウェブサイトにはパーミットの詳細の説明が記載されているが、ウィルダネス・パーミットの予約はリンクサイト(www.recreation.gov)から行う。リンクサイトを開き、“Inyo national wilderness permits”と入力し、先頭に表示されるPermitsの“Check Availability”をクリックすると予約に入ることができる。手順は以下の通り。

⑴パーミットの種類の選択

“Cross Country” “Overnight” “Overnight visiting Mt. Whitney” など幾つかの選択肢があるが、通常のハイクの場合は“Overnight”を選択する。

⑵トレイルの選択

スタートするトレイルヘッドを選ぶ。アルファベット順になっていて、各トレイルヘッドごとに記号が割り当てられているので希望するトレイルヘッドを選択する。ただし選択肢が無数にあるので、最初は複雑に見えて戸惑うかもしれない。また全てがJMTに繋がっている訳ではないので要注意。

マンモスレイクやビショップからバスなどの公共機関を使ってトレイルインする場合は以下のトレイルヘッドがおすすめだ。

マンモスレイクから
AA10(John Muir Trail North of Devils Postpile) 観光地である“Devils Postpile”からすぐ。
AA15(John Muir Trail South of Devils Postpile) バスの終点“Reds Meadow”からすぐ。

ビショップから
JM21(Bishop Pass-South Lake) バスの終点“South Lake”からすぐ。
 
⑶日付の選択

Entry Dateに希望の日付を入力する。一定期間の選択も可能。

⑷人数の選択

歩く人数を入力する。

予約を進めていくためにはアカウント登録が必要だ。登録を終えたら“Permit Information”のフォーマットを入力していく。宿泊するテン場も予め入力をしなければならないので、手元に予め地図を用意しておくとよい(地図はAMAZONで購入できる)。テン場は必ずしもそこに泊まる必要はないが、一日に歩く距離を踏まえて決める段階で計画に無理があるのかどうかが分かる。

受付で予約した際の書類を提示して「パーミット、プリーズ」で十分通じる。自分はいつも「インヨー森林局」管轄の山域からトレイルインしていて、マンモスレイク、ビショップ、ローンパインなどの町にあるインフォメーションセンターで受け取っている(受け取り場所はネット予約時に指定できる)。 パーミットを受け取る際は以下の諸注意の説明を受け、同意してサイン。

・ベアキャニスター(クマ対策用の食料入れ)を使用すること
・就寝時はそれをテントから30m以上離れた場所に置くこと
・高度10,000フィート以上での焚火の禁止(ルールは都度変更)
・テントを張る際はトレイルから30m以上離れること
・湖からも30m以上離れること
・用を足す場合の掘る穴の深さと場所
・その他諸注意(山火事の注意事項や雪の状況など)

受取り手続きは実質15分程度で終わるが、受付カウンターが多いわけではないので混雑すると待たされる。朝イチ(8時オープン)で行くのがおすすめ。

⑤気候とトレイル

ビショップパスを経てJMTへ

【気候】

標高2,000m〜4,000m台を歩くため、夏場(6~9月)でも朝晩は冷える。朝日がなかなか当たらない谷間では明け方は氷点下まで下がることも。一方、日中は25°C前後まで上がる。気温以上に日差しも紫外線も日本より格段に強烈なので肌が気になる方は紫外線対策が必要。ただし、湿度が低くカラッとしているため、木陰に入ると日中でもクールダウンできる。「シエラ晴れ」という言葉があるほど晴れの日が多いが、雨も降る。時には雹交じりの雨もあり、天候は日本同様の対策が必要。

マリーレイク沿いのトレイル

【トレイル】

JMTの最大の魅力はウィルダネスの景観美だと思う。トレイルは基本的にパス(峠)を越えては下りを繰り返し、ひたすら進んでいく一歩道。途中、大小多くの湖があり、 どれも美しい。日本の山と比べると「ザ・登山!」という感じではなく、比較的緩やかに登り下りする。スイッチバック (つづら折りの道)も日本より多用されている気が。ただし、雪の残っている年は要注意で、標高の高いパス越えの際はトレイルが埋まっているため、雪のトレース跡を進むことになり、なかなかハードなルートになる場合も。

道標はところどころにあるが、数自体は多くはないので 原則、地図を見ながら現在地を確認することになる。

⑥装備

上は2017年のパッキングリスト。 歩くたびにコッチの方がイイな、コレはダメだなと発見がある。4回歩いてもそのアップデートはいまだに続いているので、正直、正解は分からない。

ひとつ言えるのは「荷物は軽いに越したことがない」ということ。慣れない土地、時差、気候で知らないうちに気を張っている中、体に余計な負荷をかけたくないのは自然な発想だと思う。

ただ、自分はストイックに軽量化を目指すワケではなく、テントであれば妻と共用できる二人用を選んだり、衣類もバックパックに引っかけて乾かしながら歩くことで着替えの枚数を減らしたり、ベアキャニスターをひとつにまとめたり極力効率化を図って、無理せず無駄をなくすようにした。最終的に自分は13kg、妻は8kgの重量に収まった。

シューズに関しては、実は最近まで革製の軽登山靴を使用していた。ガレ場でも安心して歩けるので重宝していたが、3回目に歩いた際に渡渉が多く、しかも連続するため、脱ぎ履きに時間を要してしまった。さらに停滞していると蚊の大群に襲われることも多く、その横をトレランシューズを履いたままザブザブ渡っていくハイカーを見て「それが正解だ!」と確信した。渡渉の多いセクションでは圧倒的に非防水のシューズが有利だし、晴れていれば2~3時間も歩けば自然と乾く。

⑦食料

JMTでは熊対策として、食品を中心に匂いを発するモノはベアキャニスターに入れ就寝時はテントから30m以上離さなければならないのがルール。このベアキャニスター、ポリカーボネート製で容量は11.5L、重量は1,155gもある。かなり嵩張るため、自分は妻と2人分の食料をひとつにまとめて使っている。

要領よく詰め込めば4泊5日のふたり分のハイクであればギリギリ収めることが可能。厳密には1日目の食料はどうせ食べてしまうのでベアキャニスターには入れてない。就寝時の段階で残りの日程分が収まればOKと考えていた。食事の優先順位は人それぞれなので、もっと食料を増やしたい場合にはもうひとつキャニスター(ハーフサイズもあり)を用意した方がよいと思う。

メーカーやサイズは幾つかあるが、こちらの青の半透明のボディのモノが一般的。同じモノを使用しているハイカーが多いので、混同しないようシールを目印代わりに貼っている。

食料は「アルファー米+レトルト」「パスタ(短時間で茹でることのできる)+粉末状の具) 「日清のぶっかけメシ(ちなみにカレーメシは匂いが強烈な為、オススメしない)」「フリーズドライのシチューや親子丼+アルファー米」「ビバークレーション」など比較的コンパクトになるものがメイン。自分たちの場合、ベアキャニスターに収めることを第一に考えていたので、美味しいのは当然だけど「どうやって効率的に入れるか」に注力していた為、必然的に日本の食料がメインになってしまった。

ただし、フリーズドライやインスタント食品は現地のスーパーやアウトドアショップに行けば豊富に取り扱っているので、調達に困ることはまずない。食料は好みやスタイルに合わせて自由にセレクトすれば良いと思う。

昼は行動食(カロリーメイトや一口羊羹、塩飴、自作のトレイルミックスなど)を歩きながら適宜食べるスタイルで、種類が豊富なアメリカの行動食もオススメ。意外と重宝したのはインスタントコーヒー(カフェオレ)で、軽いしコンパクト。 朝と夜は必ずといって良いほど飲んでいた。他のハイカーにあげても喜ばれると思う。

ガス缶は現地で調達する必要があるが、250gの中型サイズひとつあれば2人ぶんの4泊5日の行程はカバーできる。

⑧リスク

山を歩いていれば数多くのリスクがあるのはハイカーなら周知の事実。それでも事前に想定できれば対策できる場合もある。

【渡渉】

雪解け時期の渡渉(2017年)

残雪期や大雨時は要注意。 流れが急で底が見えない場合はより慎重に。雪の状況は日本を発つ前に情報収集がベター。

【高山病】

残雪期のグレンパス

標高2,000~4,000m台を歩くため、日本の山と同じように気をつける必要がある。自分は時差ボケであまり寝れていないと発症する傾向がある。スルーハイカーであれば自然に高度順応できるが、セクションハイカーは急激に環境が変わるので軽視できない。深呼吸と水分補給を忘れずに。

【道迷い】

踏み跡のないサイドトレイル

残雪の影響でトレースを見失う場合がある。 とくに通行の少ないサイドトレイルは要注意。

【熊】

「この先に熊がいる」と書かれたメモ

画像はレンジャーの置手紙。 「この先に熊がいる。熊は死んだミュール(鹿)を食べている。ここからトレイルをショートカットして下に進んだ方がよい」 熊は遠目では見たいけど・・・。

【山火事】

シエラの山火事状況(2015年)

乾燥と熱波が続くと発生する山火事。状況によっては登山口が閉鎖されることもあるので、パーミットを発行しているウィルダネスセンターで情報収集を。離れていても煙の影響は侮れない。

【爪はがれ】

サンダルで渡渉したところ躓いて負傷。シューズのまま川に入るのがベスト。

【日焼け】

5日間の日焼け跡

紫外線と日差しが強烈なため、日焼け止めは必需品。特にセクションハイカーは免疫ができていないので肌の弱い方は要注意。

⑨便利道具

【浄水器】

浄水器はSAWYER mini

湖や小川の水は生で飲むと腹を下す場合があるため、浄水器が必須。 最初の内はセイシェル(右上画像奥)を使っていたけど、ここ数年はよりコンパクトなソーヤーミニを愛用。キャップ代わりにプラティパス等に取り付けた状態で使用している。

【ゴミ袋】

ゴミ袋は万能アイテム

大型のバックパックは機内持ち込みできないため、90Lサイズのゴミ袋で覆って預けている(バックパックの内側にはハーフサイズのロールマットを丸めて緩衝剤代わりに)。ハイク中は雨対策のパックライナーとして活用。 地味だけどこれはマスト! 行きと帰り用に2枚持参している。

【虫よけネット】

蚊対策の必需品

時期によって水辺に大量発生する蚊は、ハイク中に出会うと鬱陶しいことこの上ない。 そんな時はこのネットカバーの出番で、見た目はイマイチだけど効果あり。 蚊は人間の体温に反応して集まってくるので戦ってもキリがない。無視が正解。 軽いし、高価なものではないので、お守り代わりに毎回必ず持っていく。 蚊は雪解けが進む6~7月にかけて特に多いような気がする。逆に乾燥する時期が続くと一匹もいない場合もある。

【リップクリーム】

普段は使わないが、乾燥しているJMTでは唇の潤い対策に効果絶大。

【ちょっとしたお礼】

ヒッチハイクで乗せたもらったとき、何か親切にされたとき、お金だと生々しい。だけどお礼だけだと物足りない。そんなときは扇子を渡すようにしている。 柄が豊富だし(自分は鳥獣戯画の絵柄が好き)、軽くてコンパクトで日本的。100円均一の店でも売っているのでコストパフォーマンスは高いんじゃないかな、と。

馬で荷物を運ぶレンジャー

⑩費用

9月上旬に出発した時の費用(参考例)

・航空券(LA往復・LA⇒マンモスレイク片道)=73,000円
・パーミット=800円
・宿泊費(ハイク以外の3日分:モーテル)=10,000円
・移動費(バス・ハイカータクシー)=20,000円
・食事代(JMTを除く食費)=15,000円


合計=118,800円(ひとり当たり)

上記ケースは登山口が町から離れていたため、タクシー代が大きかったが、マンモスレイクからレッズメドゥであれば路線バスを使えば700~800円程度でトレイルインできるので安上がりだ。一番大きいのは間違いなく航空券!

おわりに

カフェオレとサウザンアイランドレイク

一丁前にツラツラと書いてきたけれど、妻と自分は人並み外れた体力があるワケでもないし、毎回何らかの失敗をしている。

興味本位で2014年に初めて訪れたJMTは、実際に歩いてみると女性のソロハイカー、犬連れの老婦人、若いカップル、 楽器を持った陽気なパーティー、PCTハイカーなど、国籍・人種関係なく様々な人が歩いていて、「日本の常識=世界の常識ではない!」といつも痛感させられる。そして、歩いているハイカーの誰もが「人生楽しんだもの勝ち」みたいな雰囲気を醸し出していて、ウィルダネスなのに自由でハッピーな雰囲気にやられてしまった。

自分たちもそうありたいと思い続けて、気づけばもう5年目。 歩いていると時には大変なことも悲しいこともあるけれど、JMTはそれも含めて魅力に溢れたトレイルだと思う。

最初に歩こうと思い立ったとき、こちらの山と道のブログやJUN OSONさんの「EASY HIKING」というブログを参考にしながら情報収集した。この投稿も今後少しでも誰かのキッカケになればイイなぁと思う。どうか良い山旅を!

HAPPY TRAIL!

Instagram : @mountainjohnny_days
Blog: https://mtjohnny.exblog.jp

石田 巧

石田 巧

2014年、John Muir Trailを5日間歩いたことを機にウィルダネスの美しさとハイクカルチャーに魅了され、以降、毎年繋いで歩いているJMTセクションハイカー(現在進行形)。愛犬家。日本の低山は犬を連れて歩くことが多い。いつかはJMTスルーハイク、PCT(Pacific Crest Trail)、NZのTe Araroaなど、ロングトレイルハイキングを目論んでいる。