ハイキングカルチャーを育むコミュニティー作りを各地域で行っている「山と道HLC」の活動を、参加者の皆さんやスタッフのインスタグラム投稿を通じて振り返ります。
すっかり秋が深まり、各地の高山はすでに雪化粧をまとう季節になりました。登山口から標高を上げていくに従い、燃えるような赤や黄に彩られた山肌の息を飲むような美しさに圧倒されます。
同時に、秋はハイカーにとってややトリッキーな季節でもあります。Tシャツでも汗ばむような陽気の中での登りの後、稜線に出た途端に吹きすさぶ風に身を震わすこともありますね。さらには、冷たい雨が次第にみぞれ混じりになるなんてことも。テント場で過ごす夜の気温は氷点下まで下がり、翌朝、目を覚ますとテントの内側は結露が凍りついてバリバリになっています。日の出とともに歩き出すと、気温はぐんぐん上がり…、といった具合にめまぐるしい気温の変化に翻弄される季節です。
そんな10月ですが、山と道HLCでは、HLC北関東の『尾瀬1泊2日ULハイキング』とHLC四国の『石鎚ロングトレイル2泊3日ULハイキング』、HLC関西の『高野参詣道1泊2日ローカルスタディハイキング』の3つのプラグラムが開催されました。それぞれのエリアで、参加者の皆さんは深まる秋を愛でながらのプログラムを堪能されたことと思います。
気温が低い中でのUL(ウルトラライト)ハイキングは、装備の面でも工夫のしどころがたくさんあります。参加者の皆さんは、不安と軽量化の天秤にしばし時間を取られたかもしれませんが、それもまたULハイキングの楽しみのひとつなのでしょう。
山と道HLCプロジェクトディレクター 豊嶋秀樹
スマートフォンでは各投稿のキャプションが一部表示されないことがありますが、リロードを繰り返すことで正常に表示されます。また、各画像をタップすることでインスタグラムの投稿に直接アクセスできます。
HLC北関東
尾瀬1泊2日ULハイキング
【UL HIKING EVENT】
HLC北関東では、10月17日(土)ー18日(日)の2日間、日本最大の高層湿原が広がる尾瀬を、ULスタイルで1泊2日のハイキングを行いました。
事前の準備として、参加者の皆さんにはギアリストを作成していただき、アンバサダー廻谷朋行からの装備軽量化の提案を元にそれぞれができる最大限のULスタイルで歩き始めました。
初日は御池に集合しバスで沼山峠まで移動。尾瀬沼、白砂峠など経て見晴キャンプ場まで歩きました。キャンプ場では装備のUL化について参加者の皆さんと意見交換をしました。
2日目は早朝から霧が立ち込める尾瀬ヶ原を進みました。霧が晴れ、雪化粧した至仏山に一同感動。当初予定していた至仏山登頂は変更したものの最終的に20kmを歩きました。
「初日、早く到着したキャンプ場ではギアリスト作成の感想や軽量化、皆さんの装備について意見交換ができました。2日目、気合を入れてスタートするも朝靄や白い虹、見事な紅葉にカメラのシャッターを押す指が止まらずなかなか先に進みません。立ち込めていた霧が晴れると雪を被った至仏山が現れました。積雪により当初の予定よりだいぶ距離も時間も短くなりましたが、その分コミュニケーションが増えました。ULハイクはほぼ初めてという参加者の皆さんの帰り際の表情はとても充実して見えました。来年はまた違った形で尾瀬のプログラムを行いたいと思います。」(山と道HLC北関東アンバサダー 廻谷朋行)
2日目は、尾瀬ヶ原を突っ切り至仏山へ登ってぐるっと周回。標準的なコースタイムでは14時間を超えるというルートに張り切ってスタートすると、朝靄が晴れ至仏山が姿をあらわすとなんか白いぞ。昨日降り続いた雨は、山頂付近では雪でしたが、そのおかげで絶景の尾瀬ヶ原からの景色を堪能できました。(豊嶋)
HLC関西
高野参詣道
1泊2日ローカルスタディハイキング
【LOCAL STUDY HIKING】
HLC関西では、10月17日(土)ー18日(日)の2日間、古道の高野参詣道と真言密教の聖地である高野山で、1泊2日のローカルスタディハイキングを行いました。
初日は九度山の慈恵院からスタート。高野山までの表参道として知られる町石道(ちょういしみち)を進み、信仰の中心である奥之院にほど近いゲストハウスKokuuまで歩きました。Kokuuでは僧侶の髙井さんから高野山の歴史についてのお話を伺い、2日目は早朝から奥之院の御廟で朝のおつとめを見学し、その後、女人道を経て高野山ロープウェイで下山しました。
「初日はあいにくの雨でしたが、苔むした古道がより一層良い雰囲気を醸し出していました。同行いただいたゲストハウスKokuuのオーナー高井さんの解説もわかりやすく、参加者の皆さんも目を輝かせていました。何度も歩いた道も歴史を知る事で、違って見えるから不思議なものです(笑)。翌朝は、早朝から奥ノ院でのおつとめを体験し、何とも感慨深い2日間となりました。」(山と道HLC関西アンバサダー 中川裕司)
日本の深い歴史や独自の文化が色濃く残る関西。昔の面影をとどめている道を歴史を感じながら歩く情緒あふれるプログラムになったようです。(木村)
HLC四国
石鎚ロングトレイル
2泊3日ULハイキング
【UL HIKING EVENT】
HLC四国では、10月23日(金)ー25日(日)の3日間、愛媛県と高知県の県境に東西約60kmに連なる石鎚ロングトレイルを、ULスタイルで2泊3日のハイキングを行いました。
事前の準備として、参加者の皆さんにはギアリストを作成していただき、アンバサダー菅野哲からの装備軽量化の提案を元にそれぞれができる最大限のULスタイルで歩き始めました。
初日は筏津からスタート。東赤石山や西赤石山を経て銅山峰でテント泊をしました。
2日目は13時間行動するハードな行程。夜が明ける前から歩きはじめ、笹ヶ峰、桑瀬峠、伊予富士などを経て最終的にキャンプ地の瓶ヶ森まで30km近く歩きました。
3日目は土小屋を経由して霊峰石鎚山を登頂。最後は成就社からロープウェイを使って下山しました。
「石鎚ロングトレイルのメインパートをハイクする贅沢なプログラムでした。20代ー60代まで幅広い年齢層の参加者の皆さんで、渡渉、岩稜、藪漕ぎ、13時間行動などUL装備の恩恵を強く体感できたと思います。四国外からの参加者も多く、四国のポテンシャルを存分に楽しんでいただけたなら嬉しい限りです!」(山と道HLC四国アンバサダー 菅野哲)
今回歩いた60kmの石鎚ロングトレイルでは一緒に歩く仲間の重要性と、ULパッキングの恩恵を同時に感じるハイキングとなりました。岩場や細いヤブ道が続くトレイルでは軽量でコンパクトなバックパックのおかげでスムーズに行動でき、疲れが目立ちはじめた2日目の夕方以降は、先頭で屈強な参加者の方に全体を引っ張っていただいたこともあり、最終日は余裕のあるゴールを迎えることができました。参加者の中には事前にベースウェイトをこれまでより半分に削り、この行程を踏破した66歳のシニアハイカーの方もいらっしゃいました。その体力にも驚きでしたが、ULパッキングの恩恵をまざまざと感じました。(中村)
プログラムに参加してくださった皆さま、素敵な投稿をしてくださった皆さま、本当にありがとうございました。
山と道HLCの活動に興味を持たれた方は、12月のプログラムにぜひ参加ください。