台北に直営店samplusを構え、HLC台灣の活動も行うなど、山と道にとって最も親しい隣人である台湾。その繋がりは10年を越え、現在ではsamplusにも個性豊かな仲間たちが集まり、台湾のハイキングカルチャーのひとつの拠点になっています。
そんな山と道の台湾での活動や、台湾のハイキングカルチャーについて、そしてsamplusの仲間たちのことをもっと台湾や日本や世界中のハイカーたちに伝えたい。そんな思いで、新たにこの『台湾通信』をスタートすることにしました。
記念すべき第1回となる今回は、samplusのヘクターにこの2年のHLC台灣の歩みと、スタッフのヨウホウに台湾ハイカーが絶対聞かれる質問、「玉山に登ったことがあるか?」にどう向き合ったのかを綴ってもらいました。台湾や日本や世界のハイカーの交流が、もっともっと進みますように!
①ヘクターのHLC台灣レポート
HLC台灣の2年間を振り返って
『台灣通信』最初のコンテンツは、台北にある山と道直営店/HLCプレイス「samplus」のヘクターに、今年で活動3年目を迎えるHLC台灣の、これまでの活動を振り返ってもらいます。ではヘクター、よろしく!
文:ヘクター・ホーム(samplus)

皆さんこんにちは。台湾出身のヘクターです。
僕と山と道のパートナーシップは2014年頃から始まって、もう長い付き合いになります。僕たちは現代に合ったULハイキングをもっと広めたいと思っていて、台湾でsamplusとCOW Recordsというお店を運営しながら、山と道やHLC台灣を全力でサポートしています。
HLC台灣は2022年に正式にスタートして、samplusが拠点のHLCプレイスになりました。ここでは、山と道製品やULハイキングの道具を提案したり、時々、山と道HLCのプログラムを開催したりしています。ULハイキングに興味があるハイカーのみんなが、軽量化について詳しく知って、山と道HLCに参加するきっかけになったらいいなと思っています。

HLC台灣の多加屯山1泊2日ワークショップでの僕とアンバサダーのリンさん。
アンバサダーのリンさんってどんな人?
HLC台灣のアンバサダーは、専門知識と経験が豊富な林政翰さん(以下、リンさん)が担当しています。
彼の理念、経験、ライフスタイルは本当にユニークです。活動の中で、リンさんが色々な環境で育った参加者と交流して、ULハイキング、自然、生態系、野外救急について一緒に学んでいる姿を見るのは、本当に素晴らしいです。
彼は普段、山小屋の管理もしている関係で通信環境があまり良くないことが多いので、samplusのスタッフがプログラムの企画の相談から、講座やハイキングの現場まで、HLC台灣の活動をいろいろ手伝っています。

まるでハンターのように獣道を観察するリンさん。
HLC台灣がこれまでに行ってきたプログラム
HLC台灣では、定期的に『ULハイキング入門講座』を開催しています。またゲスト講師を招き、多様なテーマの講座も開催しています。特に羊毛フェルトを使ったウールウェアの修復講座は大好評でした。
また台湾各地のトレイルにも赴き、これまでも様々なハイキングプログラムを開催してきました。
HLC台灣の過去のプログラム開催地:
- 屏風山:1泊2日ULハイキングワークショップ
- 大鹿林道:1泊2日ULバイクパッキング
- 轆轆温泉:2泊3日ULハイキング
- 畢祿山:1泊2日ULハイキングワークショップ
- 草嶺古道:ローカルスタディハイキング
- 北坑駐在所:1泊2日ULハイキングワークショップ

毎回のHLC台灣の活動では、「samplus」のスタッフがサポートと協力を提供している。

多加屯山:1泊2日ULハイキングワークショップ 天候に恵まれた1泊2日のハイキング。突然の高巻きルートが現れ、最高だった。

草嶺古道:ローカルスタディハイキング 草嶺古道は日本の「宮城オルレ」の気仙沼・唐桑ルートの姉妹トレイル。

轆轆温泉:2泊3日ULハイキング 寒い天気でも強い日差しの下で野湯に浸かるときは、やはり日焼け対策が必要。
HLC台灣が目指していること
HLCは”Hiking” ”Life” “Community”という3つの言葉から成っています。そしてこの3つを通して、人と人をつなげていけたらいいなって思っています。それがきっかけで、ハイキングや旅が好きになったり、いろんな文化や自然、それに、いろんな考え方や個性がある人たちを大事に思えるようになったりしたら、最高です。
もちろん、これは僕の個人的な願いでもありますが、この活動を通して、少しでも何かを変えられたらって期待しています。少なくとも、「無痕山林(Leave No Trace)」の大切さに気づいてもらって、ゴミのポイ捨てとかが減ってくれたら嬉しいです。
僕にとって、HLC台灣は大切なつながりを作る場所。台湾は小さな国だけど、HLC台灣の活動や考えを通して、台湾の人たちがもっと自分たちを知り、受け入れ、もっと自信が持てるようになったらいいなって思っています。そして、みんながつながりながら、少しずつでも良い方向に進んでいけたらと願ってます。
最後に、これを読んでいる日本の皆さん、ぜひ台湾にも遊びに来てくださいね!

台北『samplus』『COW RECORDS』オーナー。
Patagonia TAIWANでの10年間の勤務を経て独立。台北のセレクトショップ『COW RECORDS』を通じて山と道をはじめとした日本のインディペンデント・メーカーの製品を台湾に紹介している。2018年4月に山と道、実弟・洪 寶弟の『RAYING STUDIO』と共にアウトドアショップ『samplus』をオープン。
② samplusトレイルログ
玉山に登ったことはあるか?
続いてのコンテンツは、samplusスタッフのトレイルログ(山行記)をお届け。今回はsamplusセールススタッフのヨウホが、台湾のハイカーが絶対に聞かれる質問、「(台湾最高峰の)玉山に登ったことがあるか?」にどう向き合ったのか、その顛末について書いてくれました。ではヨウホウ、よろしく!
文:ヨウホウ(samplus)

台湾は面積が3万平方kmしかないのに、標高3000mを超える山が284座もあって、それらは「百岳」って呼ばれてる。その中でもいちばん高いのが、標高3952メートルの「玉山(ユーシャン)」だ。
台湾で「登山とかハイキングが好き」って言うと絶対聞かれるのが、「玉山登ったことある?」という質問。ほぼ絶対に聞かれる!
私はこれからどこ行くかとか、どの山登るかとかは、いつも気の向くまま縁に任せという感じで、即興で決めることが多い。でも、「玉山に登りたい」という気持ちは、いろんな人に何度も聞かれるうちに、いつの間にか心の中にひっそりと刻まれていた。実際に登ったのは、山を始めてから5年も経ってからだったけど。
玉山ってどんな山?
玉山山脈は台湾の五大山脈のひとつであり、台湾五嶽の頂点で、「百岳の王」と呼ばれてる。さまざまな気候帯があることから多様な生態系を持ち、外国人観光客にも人気で、台湾に来る外国人の多くが玉山に登る。
玉山山脈には、玉山主峰、前峰、東峰、西峰、南峰、北峰、北北峰、鹿山、東小南山、小南山、南玉山という11座の山々が連なっていて、このうち北北峰と小南山以外は、すべて台湾の百岳名山に含まれている。

玉山に登るには、まず「運」が必要
でも、玉山に登頂するのはそう簡単ではない……なぜなら、まずは「抽選に当たる運」が必要だから!
登山申請を提出すると出発の1ヶ月前に抽選が行われ、当選したチームだけが正式な入山許可を受けることができる。でも私はたぶん数年分の運を蓄えていたおかげで、1年のうちに2回も当選の連絡を受け取ることができた。
出発が確定した後、私は仲間たちと相談し、1泊2日のゆったりとした行程を計画した。初日は玉山登山口から排雲山荘まで移動して一泊し、翌日に主峰を目指すというスケジュールだ。

いよいよ玉山登山開始!

美しい景色に囲まれ、仲間たちと笑いながらおしゃべりをしているうちに、気がつけば宿泊先の山小屋「排雲山荘」に到着していた。

12月の玉山で初雪に出会う。

玉山の頂上

標高3952mの山頂からは、他の百岳名山を一望することができた。
これまでもたくさんの百岳の山頂を踏破してきたけど、玉山主峰から群峰を見下ろすその圧巻の景色には、やはり心が震えた。
山頂で休憩し、たっぷりと太陽の光を浴びた後、私と同じように満足そうな仲間たちの姿を見ていると、この大地に見守られ、癒されていると実感し、幸せと感謝の気持ちが湧き上がってきた。
玉山でのハイキングは、今回も素晴らしい体験を与えてくれた。そのことに感謝しながら、私はいつもこう言ってから山から下りる。
「またね!」

samplusセールススタッフ
スポーツトレーナーとして学んだ体育大学が山の近くにあったこともあり、友人たちと頻繁に山へ足を運ぶようになり、それが今でも続いている。低山のハイキングから高山登山まで、どの旅も心から楽しんでいる。SNSを通じて山々の壮大な美しさを多くの人と共有することが好き。これからも一歩一歩大地を踏みしめながら、より多くの人が自然と触れ合える機会が増えることを願っている。
③YouTube
山と道のYouTubeチャンネルから、ヘクターやヨウホウを始めとするsamplusのスタッフを紹介する動画をご紹介。みんなの人となりがより伝わるので、ぜひ見てみてください!