Hiker's Classics

#11 菅野哲(山と道HLC四国アンバサダー/T-mountain)

文/写真提供:菅野哲
2019.08.23
Hiker's Classics

#11 菅野哲(山と道HLC四国アンバサダー/T-mountain)

文/写真提供:菅野哲
2019.08.23

誰にでもある、思い出の道具やどうしても捨てられない道具、ずっと使い続けている道具。

この『HIKERS’ CLASSICS』は、山と道がいつも刺激を受けているハイカーやランナー、アスリートの方々に、それぞれの「クラシック(古典・名作)」と呼べる山道具を語っていただくリレー連載ですが、数回に渡って『山と道HLC』のアンバサダーを勤めていただいている方々のCLASSICSを紹介していきます。

第11回目となる今回の寄稿者は、幼い頃から四国の大自然の中で遊び、就職したアウトドアショップで山、川、海とアクティビティーの幅は広げ、現在は四国松山のアウトドアショップ『T-mountain』代表として、地元に根付いたお店を作りながら、四国の山の魅力を発信し続ける、菅野哲さんです。

愛着のある道具はお守りのような感覚になっているという菅野さんのCLASSICSとは?

NOTE

海、山、川、全部好き

小学生の頃から、カヌーで四万十川を海までキャンプしながら下るような家庭で育ったので、山登りを始めたのも自然な流れでした。

近所の友達ファミリーとわいわいグループ登山もしてましたし、18歳の頃に白馬のロッジに居候したこともいい思い出です。アウトドアショップに就職してからはますますアクティビティーの幅が広がり、いまは海の遊び、山の遊び、川の遊び、全部好きです。

勤務中、担当は雪山登山やクライミングや海外登山で、お客様と4~5日間の縦走登山をよく企画してました。松山にT-mountainを開店してからは地元の山の良さを改めて認識し、いまはその魅力の発信にも努めています。

ネパール/エベレスト街道にてタムセルクをバックに、同い年のラクパシェルパと。

愛着のある道具、お守りのような道具

地元、西日本最高峰・石鎚山/北壁の冬季登攀。

おっさんなので登山歴がそこそこ長く、いろんな山でいろいろ遊んできました。「シリセード」中に肛門に何かが刺さって病院に行ったり、霊峰・石鎚山の土砂降りの山頂で修験者の方に「若いもんがカッパなんか着るな!」って怒られたり、初めての沢登りで残置ロープが切れて谷底まで落ちたが背負っていたザックのおかげで助かったり、山の師匠に「山男ならピッケル1本でも雪洞が掘れんといかん」って教えられていたおかげで、ブリザードのスイスアルプスで助かったり、山での面白いエピソードには事欠きません。

地元、西日本最高峰・石鎚山 / 『T-mountain』のイベント、雪山登山講習にて。

山の道具もあれこれ使い、処分したものも多いですが、捨てられない一品や、これからも一生大切に使っていきたいものも多くあります。近年、軽量化も進んでいますが、やっぱり愛着があるものは多少重くても選んでしまいますし、自分の山の歴史とともに、お守りのような感覚になっている道具もあります。たとえば、山で美味しいコーヒーを飲むために、グラインダーは譲れません(笑)。

最軽量にこだわるのではなく、自分のスタイルの中で使いやすい軽量化を好んでいます。

Tetsu Kanno’s CLASSICS

Hungarotex Wool Glove

未脱脂のウールグローブほどボクを暖かく包み込んでくれる女性はこの世にはいないだろう。あちこちの雪山でハンガロテックスは活躍してくれた。テントや山小屋で吊るして乾かせるように赤い細引きをつけた長年のパートナーは今もなお、特に寒がりで末端冷え性のボクには手放すことができない。入手困難になってから確か一度だけダンロップスポーツが復刻盤を扱ってくれたが、それっきりだ。今すぐにでも買い足したい。山行のたびにほつれて穴が開いていく指先を、テキトーに毛糸で繕うのも毎冬の楽しみになっているかもしれない。

Charlet Moser Ice Axe

ビレイデバイスがたくさん溜まっていくように、ピッケルもまた山屋なら何本も手元にあるのではないだろうか。もちろん釣竿のように用途に応じて使い分けるのだが、「コレが一番のお気に入り!」ってものがあるはずだ。軽量化モデルや、先鋭的かつ効率化された形状、毎年のようにニューモデルは登場する。しかし、ボクはコイツが大好きだ。ペツルとの統合よりはるか昔の古き良きデザインと重量バランス、そして何よりヘッドのシェイプと質感がたまらない。美しすぎるヘッドデザインは、地形図とともに酒のツマミにすらなることができるのだ。

Black Diamond Sabretooth Crampon

アイゼンでもクランポンでも呼び方はどっちでもいいけど、BDのニューモデルに若い頃飛びついた。12本爪がよく見ると14本爪だったのだ。爪が増えて自分がちょっぴり強くなったようなカンチガイをしたのだが、あながち間違いでもなかった、その分かれた形状の2番目の爪は岩場でのグリップを増したり、不安定な足場でも安定感を与えてくれ、信頼できるパートナーとなった。しかも、シンプルながら頑丈な薄い金属製のヒールベイルがとても使いやすくて、その後買い換えたステンレスのモデルにも次々と移植して愛用したほど。

Mountain Safety Research Dragon Fly Stove

当時ご縁のあった冒険家・河野兵市さんから「世界中で一番活躍するストーブは、MSRだよ。メンテナンスしながら一生使えるで。」と言われ、タイミングよくリリースされたドラゴンフライをゲット。液体燃料ストーブで初めてトロ火が使えるモデルは、本当に山川海で大活躍した。まるでジェットエンジンのような凄まじい音を立てる火力は、テントの中ではうるさいとよく言われた。軽量化することが増えた最近は出番も減り、もっぱら冬の宴会用だが、河野さんを想いながら一生使い続けたいと思う。

Karrimor Eurotrekker

年配の写真家からいただいた背負子。周りで見かけるのはエバニューのものがほとんどだった。これをいただいた時はめちゃ嬉しかったのを覚えている。すでに年代物でクラシカルなデザインと細めのアルミフレーム、超軽量だったのも気に入って歩荷や作業にはよく使った。地元の山小屋の改修工事にはセメント袋40kgを心配しながら担いだが、予想よりも頑丈だった。クッションパッドを付け足し、今も現役で稼働中。

Porlex Coffee Grinder

山道具と言っていいのかどうか。でも、コーヒーが大好きなのでいいとしよう。ご存知の通り、山で飲むコーヒーは格別だ! ボクは深煎り豆のハンドドリップが好物で、ポーレックスのミルはダッチオーブン同様、かれこれ20年近く家でも毎日使っているので、1万回以上仕事してくれているかもしれない。少々重くてかさばるが、長年の相棒なので山にもコイツを持って行く。2年ほど前からハンドルの差し込み部分がガタついて使いにくいが、愛着があるのでまだ使っている。一時消え、その後復活したジャパン・ポーレックス。底面をよく見ると現行品にはない刻印があり、”FOR OUTDOOR USE”と書かれていた。

Patagonia Retro-X

18歳の時、親父と一緒に行ったアウトドアショップで初めての、そして念願のパタゴニアのフリースを買った。夜な夜なカタログを熟読してすっかりパタゴニアの虜になっていたのだ。当時でも3万円近くしたと思う。フワフワでモコモコな初体験、もちろん毎日着用した。裏地には防風性の高いネオプレンが採用され、オートバイツーリングや白馬のスキー場での居候にも大活躍した。しかし、まさか購入したその店で店長までやることになるとは夢にも思っていなかったが、10年は着られるだろうと気合いで購入し、どんどん汚れながらも愛着は増し、とうとう20数年経過した今、いわゆる雪無しロゴのパタゴニアはテレビドラマ人気によって高校生の娘のクローゼットへ引っ越しした。

山と道 5-Pocket Pants

3年ほどヘビロテで履いているだろうか。ナイロン生地がサラッと心地よく、やや太めでかわいいシルエットはハイクやバイクでの足上げも快適だ。履けばわかる履き心地の抜群の良さに、オーナーのほとんどが同じパンツの色違いやショーツまで追加で購入してしまう魔法にかかっているのではないだろうか。ポリエステル系のストレッチパンツなどは、使用に伴いそれなりにピリングや傷など痛んでくるのだが、このパンツは背丈を越える笹刈り作業や藪漕ぎでもへっちゃらでほとんど外傷がない。先日、山と道の夏目さんと5ポケット談義をした。流石、サイズも形状も配置もとてもよくできていると思う。ただ、ボクはスマホを左に入れたいんです(笑)。

Titanium Chopsticks

確か、ホリエ製だったかな。チタンで一体成型の箸、しかも中空。もちろん軽くて丈夫で無味無臭。昔、マイ箸が流行った頃は出張にも旅にも持ち歩いた。モンベルの野点セットと共にエベレスト街道にも連れて行った。今でも登山やキャンプにはいつも一緒。嵩張るし、スポークがあれば事足りるのだが、料理が一味も二味も美味しくなる気がするのだ。分割式の箸もあるのだが、やっぱり愛着の一品だ。

Hungarotex Wool Glove

未脱脂のウールグローブほどボクを暖かく包み込んでくれる女性はこの世にはいないだろう。あちこちの雪山でハンガロテックスは活躍してくれた。テントや山小屋で吊るして乾かせるように赤い細引きをつけた長年のパートナーは今もなお、特に寒がりで末端冷え性のボクには手放すことができない。入手困難になってから確か一度だけダンロップスポーツが復刻盤を扱ってくれたが、それっきりだ。今すぐにでも買い足したい。山行のたびにほつれて穴が開いていく指先を、テキトーに毛糸で繕うのも毎冬の楽しみになっているかもしれない。

Charlet Moser Ice Axe

ビレイデバイスがたくさん溜まっていくように、ピッケルもまた山屋なら何本も手元にあるのではないだろうか。もちろん釣竿のように用途に応じて使い分けるのだが、「コレが一番のお気に入り!」ってものがあるはずだ。軽量化モデルや、先鋭的かつ効率化された形状、毎年のようにニューモデルは登場する。しかし、ボクはコイツが大好きだ。ペツルとの統合よりはるか昔の古き良きデザインと重量バランス、そして何よりヘッドのシェイプと質感がたまらない。美しすぎるヘッドデザインは、地形図とともに酒のツマミにすらなることができるのだ。

Black Diamond Sabretooth Crampon

アイゼンでもクランポンでも呼び方はどっちでもいいけど、BDのニューモデルに若い頃飛びついた。12本爪がよく見ると14本爪だったのだ。爪が増えて自分がちょっぴり強くなったようなカンチガイをしたのだが、あながち間違いでもなかった、その分かれた形状の2番目の爪は岩場でのグリップを増したり、不安定な足場でも安定感を与えてくれ、信頼できるパートナーとなった。しかも、シンプルながら頑丈な薄い金属製のヒールベイルがとても使いやすくて、その後買い換えたステンレスのモデルにも次々と移植して愛用したほど。

Mountain Safety Research Dragon Fly Stove

当時ご縁のあった冒険家・河野兵市さんから「世界中で一番活躍するストーブは、MSRだよ。メンテナンスしながら一生使えるで。」と言われ、タイミングよくリリースされたドラゴンフライをゲット。液体燃料ストーブで初めてトロ火が使えるモデルは、本当に山川海で大活躍した。まるでジェットエンジンのような凄まじい音を立てる火力は、テントの中ではうるさいとよく言われた。軽量化することが増えた最近は出番も減り、もっぱら冬の宴会用だが、河野さんを想いながら一生使い続けたいと思う。

Karrimor Eurotrekker

年配の写真家からいただいた背負子。周りで見かけるのはエバニューのものがほとんどだった。これをいただいた時はめちゃ嬉しかったのを覚えている。すでに年代物でクラシカルなデザインと細めのアルミフレーム、超軽量だったのも気に入って歩荷や作業にはよく使った。地元の山小屋の改修工事にはセメント袋40kgを心配しながら担いだが、予想よりも頑丈だった。クッションパッドを付け足し、今も現役で稼働中。

Porlex Coffee Grinder

山道具と言っていいのかどうか。でも、コーヒーが大好きなのでいいとしよう。ご存知の通り、山で飲むコーヒーは格別だ! ボクは深煎り豆のハンドドリップが好物で、ポーレックスのミルはダッチオーブン同様、かれこれ20年近く家でも毎日使っているので、1万回以上仕事してくれているかもしれない。少々重くてかさばるが、長年の相棒なので山にもコイツを持って行く。2年ほど前からハンドルの差し込み部分がガタついて使いにくいが、愛着があるのでまだ使っている。一時消え、その後復活したジャパン・ポーレックス。底面をよく見ると現行品にはない刻印があり、”FOR OUTDOOR USE”と書かれていた。

Patagonia Retro-X

18歳の時、親父と一緒に行ったアウトドアショップで初めての、そして念願のパタゴニアのフリースを買った。夜な夜なカタログを熟読してすっかりパタゴニアの虜になっていたのだ。当時でも3万円近くしたと思う。フワフワでモコモコな初体験、もちろん毎日着用した。裏地には防風性の高いネオプレンが採用され、オートバイツーリングや白馬のスキー場での居候にも大活躍した。しかし、まさか購入したその店で店長までやることになるとは夢にも思っていなかったが、10年は着られるだろうと気合いで購入し、どんどん汚れながらも愛着は増し、とうとう20数年経過した今、いわゆる雪無しロゴのパタゴニアはテレビドラマ人気によって高校生の娘のクローゼットへ引っ越しした。

山と道 5-Pocket Pants

3年ほどヘビロテで履いているだろうか。ナイロン生地がサラッと心地よく、やや太めでかわいいシルエットはハイクやバイクでの足上げも快適だ。履けばわかる履き心地の抜群の良さに、オーナーのほとんどが同じパンツの色違いやショーツまで追加で購入してしまう魔法にかかっているのではないだろうか。ポリエステル系のストレッチパンツなどは、使用に伴いそれなりにピリングや傷など痛んでくるのだが、このパンツは背丈を越える笹刈り作業や藪漕ぎでもへっちゃらでほとんど外傷がない。先日、山と道の夏目さんと5ポケット談義をした。流石、サイズも形状も配置もとてもよくできていると思う。ただ、ボクはスマホを左に入れたいんです(笑)。

Titanium Chopsticks

確か、ホリエ製だったかな。チタンで一体成型の箸、しかも中空。もちろん軽くて丈夫で無味無臭。昔、マイ箸が流行った頃は出張にも旅にも持ち歩いた。モンベルの野点セットと共にエベレスト街道にも連れて行った。今でも登山やキャンプにはいつも一緒。嵩張るし、スポークがあれば事足りるのだが、料理が一味も二味も美味しくなる気がするのだ。分割式の箸もあるのだが、やっぱり愛着の一品だ。

菅野哲

菅野哲

山と道HLCアンバサダー/『T-mountain』代表。 四国・松山城の麓で山道具屋『T-mountain』を営む。 山は歩く、走る、攀じる、滑る、どれも好き。 20代から日本の主要な山はもちろん、海外の山へも出かけてきた。 近年は、自分の生活に密着した里山や決して特別ではない近くにある山々の魅力に深く心をくすぐられている。 四国の素晴らしい自然を世界へ発信するため、日々あちこちでソトアソビ実践中。 三人の愛娘といつまでラブラブできるか悩み中。